2024/11/21 東美濃古刹から西三河四季桜の里へ紅葉狩りツーリング(虎渓山永保寺、川見四季桜の里、旭家食堂、あきん亭、ダートバイクプラス瀬戸)
今年も異常な暑さを更新し続ける夏であったが、立冬を過ぎて小雪にさしかかり急に冬の寒さが訪れた感がある。 暑さ寒さの二極化が進み、穏やかに紅葉が色づく秋を飛び越して訪れる冬、バイク旅に最適な季節に乗り遅れることも多くなった。
今回もなかなか走りだせぬうちに、山間の峠道では冬装備が必要な一桁の気温まで冷え込んできたようである。 それ故に、今さら色あせた紅葉を目当てに標高を稼ぐ気にはなれず、比較的軽い冬装備でも凍えぬ街近くの紅葉をたずねて走り出すことにした。
たどったルートは尾張名古屋から瀬戸へと北上し、東美濃多治見の紅葉が有名な古刹「虎渓山永保寺」を訪れ、土岐の大正時代から続く老舗食堂「旭家食堂」を経由し、西三河旧小原村へと南下して四季桜が混じり咲く紅葉を巡る行程である。
そして旅の起点にしたのは、ダートフリークが営むダートバイクプラス瀬戸店。 前後18インチホイールと細身のバイアスタイヤによる軽快な切り返しを、W800 streetのアップライトなポジションの腰下で操る楽しさにはまった晴れふら親父。 今回は、押さえ込みが効く「引き」を抑えたハンドルを、品揃えが豊富なダートバイク用品店で探してみる算段である。
さてさて、W800 streetのパーツ探しから始まった、走行距離200kmに満たぬショートツーリング。 走り終えてみると、食堂の臨時休業など思惑通りに運ばぬこともあったが、鎌倉時代の古刹を彩る紅葉や四季桜と紅葉のコントラストなど、いつもの峠越えと一味違った紅葉狩りを満喫する旅となった。
国の名勝虎渓山永保寺の紅葉、臥龍池に架かる無際橋の先に国宝「観音堂」
ルート概要
県6(名古屋力石線)→愛・地球博記念公園北口北-県209→陶生病院西-国155→日の出町-市道→ダートバイクプラス瀬戸-市道→上水支所西-県210→上水野町-県207→定光寺町-県205→下半田川-国248→音羽町-国19→十九田-県381→永保寺入り口(永保寺駐車場)-虎渓山永保寺-永保寺入り口(永保寺駐車場)-県381→虎渓山町2-虎渓山公園道路→上山町2-国19→旭家食堂-県385→大富南-県69→曽木町-国363→八王子神社-県20→あきん亭瑞浪本店-県20→八王子神社-国419→川見四季桜の里-国419→中山インター南(猿投グリーンロード)
ツーリングレポート
旅の起点としたダートバイクプラス瀬戸店の開店時間に合わせ、県道6(名古屋力石線)を猿投グリーンロード方面へむけて走り出す。 保温素材の薄手インナーにレザージャケットを羽織っての走り出し、首元からヘルメットに流れ込む風は多少肌寒いが、旧小原村の山間を抜ける帰路でも凍えることは無いだろう。 そして県道6を愛知地球博公園北口まで走り、瀬戸市街を貫ける国道155に分岐して北上すると、いよいよ瀬戸市民公園近くのダートバイクプラス瀬戸店にたどり着いた。
さて、ダートバイクプラスを店舗展開するダートフリークは、かつてダートバイクで林道を駆け回っていた頃に通っていた用品メーカーである。 その頃、尾張旭の住宅街で営業してた小さなダートバイク専門の用品店は、デイトナの傘下に入り自社ブランド商品を展開するメジャー企業になっていた。
久しぶりに訪れてみると、ブレることなくダートバイクに特化した商品は豊富でリーズナブル、そして店内に展示されていたモタード仕様のデモ車両を見つけ、その強力な引力に引き込まれそうになる。 引き出しは多いが並列処理が苦手なバイク親父、オンからオフへと乗り換えの重力圏から何とか脱して、お目当てのハンドル売り場にたどりついた(笑)。
ダートフリーク本社に併設されたダートバイクプラス瀬戸店
さて、二年程前に昭和ノスタルジーを刺激されて衝動買いした相棒のW800 street、その慣性力の強い低速型エンジンと効かないブレーキに慣れるに従い、”オートレーサー乗り”なる手前味噌なライディングスタイルにたどり着いた晴れふら親父である。 結果的には、前後18インチホイールと細身のバイアスタイヤによる軽快な切り返しを、アップライトなポジションの腰下で操る楽しさにはまることとなった。
そのライディングスタイルに合わせて、これまでにバックステップ、リヤサスペンション、そしてタイヤの換装を済ませ、機能的なチューニングはハンドルのフィッティングを残すのみとなっていた。
具体的には、逆ステアによる倒しこみから旋回時の押さえ込みの動作のため、純正ハンドルや市販のトラッカーハンドルに比べて、引きを抑えたダートバイクハンドルを探したのだが...結果的に高さが足りない等々、純正ハンドル以上にシックリくる形状のハンドルと見つけ出すことが出来ずに交換を見送ることにした。
今更ながらではあるが相棒には、電子デバイス制御頼みのハイスペックSSで己の技量を越えた領域に踏み込まなくとも、十分なライディングの満足感を得られることを教えられた。 今回気になっていたハンドルのフィッティングを終え、旅先の峠で操る楽しさを存分に味わうための準備を終えることとなった。
オートレーサー乗りが云々の話になると長くなりそうなので(笑)、そろそろ尾張から東美濃を経由して西三河へとおりかえした、紅葉狩りツーリングのレポートに移りたい。
W800 Streetの純正ハンドル、もう少し引きを抑えたかったのだが...
ダートバイクプラス瀬戸から走り出して住宅街を抜けると、県道207の林間峠道へと駆け上がって行った。 そして定光寺公園への分岐を過ぎて県道205へと走り継ぐと、多治見市街へと続く国道248につきあたり北上を続けた。 尾張瀬戸市街から東濃多治見市街への山間を貫けるこのワインディング、足慣らしにはちょうど良いが日が差さぬ林間区間も多く、真冬の凍結には注意が必要かもしれぬ。
県道207の鬱蒼とした林間ワインディングで多治見市街をめざす
その後、国道418が多治見市街にさしかかると国道19に分岐して、さらに虎渓山に上る県道381に駆け上がり参拝客で賑わう永保寺駐車場にたどり着いた。 そして、駐車場から中央線踏み切りを渡って5分ほど歩くと、土岐川を挟んで土岐市街を見下ろす虎渓山に佇む永保寺境内へとたどり着く。
虎渓山永保寺駐車場に相棒を停めると、中央線踏切をわたり境内に向けて歩き出す
さて、鎌倉時代の1313年に開創された虎渓山永保寺、世界遺産に認定された中国廬山の虎渓の景色に似ていることがその名の由来だと言われている。 そして、鎌倉時代に建立された「観音堂」と「開山堂」は国宝に指定され、アーチ形の無際橋が架かる臥龍池を巡る庭園は国の名勝に指定されている。
その臥龍池を囲むもみじや、2003年の本堂火災で焼損し復活した樹齢約700年の大いちょうが色づくこの季節、大勢の観光客が訪れる紅葉の名所ともなっている。 この日も平日ながら大勢の観光客で賑わう駐車場、その人の流れにのって迷うことなく歩き出すと永保寺へと下る急坂にさしかかり境内を彩る紅葉を見下ろした。
虎渓山永保寺へ下る急坂から、境内を彩る紅葉を見下ろす
境内まで降りてくると、まずは前述の2003年の火災で焼失し2011年に再建された本堂に参拝する。 その火災で本尊の釈迦如来坐像脇侍文殊菩薩も焼失し、現在は聖観世音菩薩の坐像が本尊として国宝「観音堂」に納められている。 それ故現在は、再建されたかつての本堂は方丈と呼ばれているとのことである。 その後寺務所で本尊観世音菩薩の御朱印記帳をお願いすると、引換番号札を手に国の名勝に指定された庭園を散策することにした。
そして、日頃のツーリングでも気忙しく回遊するマグロ親父は、臥龍池にかかる無際橋越しに国宝「観音堂」を眺められるフォトスポットに直行し、橋を渡る中国人観光客がフレームアウトするのを待って手早くスマホカメラの撮影を終える(笑)。
鎌倉末期に建立された唐様建築の国宝「観音堂」、桧皮葺きの屋根の幹反りが色付くもみじに映える景色を目にすると、この庭園が国の名勝に指定されるのもうなずける。 そして、観音堂左手にある梵音巌と呼ばれる崖には、臥龍池に落ちる小さな滝が流れ、900体余りの小さな地藏観音が祀られている。 自然の地形を生かした見事な庭園が、檀家を持たぬ禅寺で修行する雲水の心を和ませてきたのであろう。
臥龍池に架かる無際橋と国宝「観音堂」、左手の崖には900体余りの地蔵菩薩
その後しばらく、色づいた紅葉に縁取られた臥龍池をめぐり散策を終えることにした。 しかし、青葉を残し色づくそばから枯れ始めたもみじや、それに同期できぬ青々とした大いちょうなど、鎌倉時代から続く古刹でも秋とばしの急峻な冷え込みばかりが気になる昭和親父である。 次の世代の日本人がどんな季節の移り変わりを目にするのか...それを想像すると胸が痛くなることも多くなってきた。
虎渓山永保寺の境内を彩る紅葉、十分に色づく間もなく通り過ぎる短い秋
散策を終えて番号札を手に寺務所に立ち寄ると、若い禅僧に手を合わせながら御朱印帳をいただき、境内を後にすることにした。 虎渓山永保寺のようい歴史ある古刹に足を踏み入れると、その神聖な雰囲気のせいか己の雑念を吸いとってもらえるような気がする。 修行僧からいただく達筆な御朱印は、無防備になった頭でトラップだらけの俗世に戻るための守り札のようなものだろうか(笑)。
虎渓山永保寺の御朱印、本尊の観世音菩薩の御朱印をいただいた
虎渓山永保寺の境内から急坂を登り駐車場に戻るころには、神域でしぼんだかに見えた昭和親父の煩悩が再び膨張たのか急に腹が減ってきた(笑)。 そして、いつも乗り手の煩悩に付き合ってくれる相棒のエンジンを回すと、虎渓山公園道路を駆け下りた国道19号で土岐方面へと走り出した。
日頃から昭和の懐かしい風情が漂う食堂を嗜好する親父だが、今回立ち寄る旭屋食堂はそれを遡る大正13年から土岐の街で親しまれてきた食堂である。 国道19が多治見市街を抜けてほどなく土岐市街に差しかかると、国道から一本南側の路地で目指す旭家食堂は直ぐに見つかった...がっ、平日の昼時に地元客で賑わっているはずの老舗食堂は、人の気配も無く静まり返っていた。
また一軒、高齢の店主が営む懐かしい食堂が店じまいしてしまったかと肩を落とすが、入り口に貼られた「週明けからは営業します」の貼り紙を見つけ胸をなでおろす。
せっかくなのでここでは、PCにログが残っていた2013年のレポートをそのまま掲載させていただくことにする。 なんせ大正13年創業の旭家食堂、2024年で100周年を迎えた老舗食堂の味が、バイク親父のご無沙汰期間位で変わることはないだろう(笑)。
土岐市民御用達の旭家食堂、大正13年創業の老舗食堂(2013年5月撮影)
ちょうど昼時、こじんまりとした食堂のテーブルは既に地元のお客さんで埋まっていたが、先客のお年寄り夫婦に誘われての相席となった。
食堂のおばちゃんと気楽に言葉を交わす馴染み客の注文は、殆どが看板メニューのカツ丼と中華そば。 どちらにするか迷うのも面倒なので、カツ丼と中華そば、二つの看板メニューをまとめて注文することにした。
ところで、昨日の夜は夕飯もとらず午前3時までお仕事...むりやりに仕事を一段落させた甲斐もあり、予定通りにGSX-Rのメンテとショートツーリングに漕ぎ着けた次第である。 帰宅して一眠り、起き出して直ぐに相棒の整備にかかったので朝食もとらず、昨晩からの飯抜き状態であった。 こうなったら減量メニューなどクソ食らえ(笑)、ダブル炭水化物の摂取も週末のさ・さ・や・か・な堕落なのである。
しばらく待つと、注文したカツ丼と中華そばが一緒に運ばれてきた。 早速、麺が延びぬうちにと中華そばをすするが...柔らかい麺は延びる云々の心配も無用であった(笑)。 スープも薄味でひたすらやさしいお味なのである。 老若男女の地元客のなかでも、ヘルシーな中華そばはお年寄りに人気のようである。
そしてカツ丼、ご飯の上に敷かれたキャベツの上に載ったカツには、ウスター・ソースとケチャップベースのソースがたっぷり。 脂肪が少なくカリッとあげられたカツに、わずかに酸味が効いた爽やかなソース。 やさしいお味の中華そばと合わせ一気に完食、食べきれるかどうかなど無用な心配であったが、小食の人にはカツ丼と中華そばいずれにも小盛メニューが用意されている。
コッテリ、パンチの効いた御当地グルメに慣れた我々ゆえ、淡白さに物足りなさを感じるかもしれないが、地元の人達にとっては暮らしの一部、故郷とセットのソウル・フードなんでしょう。 でなきゃ昭和を通り越して大正時代から続く食堂なんて存在しないはずである。 九州生まれの愛知県民親父は、今は廃業してしまった故郷の懐かしいラーメン屋を思い出すのであった。
客の半分が注文するカツ丼、ソースとケチャップベースのタレは爽やか(2013年5月撮影)
残り半分の客は中華そばを注文、薄味スープと柔らか麺は年寄り向きかも(2013年5月撮影)
2013年のレポートはここまで、ここからは昼飯の当てが外れて途方に暮れる、2024年のツーリングに話をもどしたい(泣)。
さて、旭家食堂が臨時休業だったことを知り再訪を誓いながら走り出すと、県道69で土岐川の支流肥田川の流れを南へと溯りながら土岐市街を抜けた。 さらに県道69を南下して駄知市街を貫けると川谷渓谷にさしかかり、色づく渓谷を眺めながら肥田川沿いのワインディングを満喫する。
短い区間ながら、肥田川の流れに沿って適度に弧を描く県道69は足慣らしに丁度良く、春の山桜や秋の紅葉など季節毎の彩を見せる渓谷の景色も楽しめるだろう。 また、東美濃を東西に結ぶ国道19、さらに並行するバイパスルート県道66や国道363を南北に繋ぐ県道69は、東美濃方面へのツーリングに欠かせない連絡ルートでもある。
肥田川沿いの川谷渓谷を抜ける県道69、秋の紅葉や春の山桜など季節の彩も楽しめる
当初の予定では、県道69から国道363へと走り継ぎ東美濃を抜けると、そのまま国道419で西三河へと折り返す予定であった。 しかし、旭家食堂で昼食をとる目論見が外れた空腹親父は、以前紹介したことがあるあきん亭瑞浪本店に寄り道して、国道419へとツーリングを折り返すことにした。 老舗食堂でいただくつもりだった中華そばの絵面が頭から消えず、ランチタイムを経て終日営業する中華そばの人気店が頭に浮かんだわけである。
そして、国道363が世界一の美濃焼こま犬が見守る国道419への分岐に差し掛かると、逆方向となる県道20を瑞浪方面へと北上してあきん亭瑞浪本店にたどりついた。
醤油ラーメン あきん亭瑞浪本店、平日の昼飯時を過ぎて客足が絶えぬ人気店
相変わらずの人気店、平日の昼飯時を過ぎても客足が途絶えることなく、数組の席待ち客に続いての入店となった。 そして、調理場が見渡せるカウンター席に案内されると同時に、看板メニューのあきん麺920円也を注文した。
程なく配膳されたあきん麺は、記憶に残る店のコンセプト通り「スッキリとした後味の醤油らーめん」であった。 まずは、香ばしい醤油が香りスッキリした旨味のスープ、モチモチの食感が楽しめる自家製無着色麺、そして白飯が欲しくなるぶ厚く切られたチャーシューへと食を進めると、行列が絶えぬ人気店であり続けることも納得がゆく。
あきん麺930円也、スッキリした後味、自家製無着色麺、ぶ厚いチャーシュー
あきん亭の醤油らーめんを平らげて身支度を整えると県道20に折り返し、国道419に分岐して東美濃から西三河への帰路に着くことにした。 その後、国道419の山間へと駆け上がって程なく、東美濃岐阜県瑞浪市から西三河愛知県豊田市への県市境を越え、小原トンネルを貫けて2005年に豊田市に合併編入された旧小原村にさしかかった。
そして小原トンネルを貫けると直ぐに、国道419沿いの駐車帯に咲く”四季桜”の出迎えを受ける。 小原地区の四季桜は、江戸時代後期の文政年間に藤本玄碩という地元医師が植樹したのが始まりと言われ、昭和53年には地区の木に制定されて植樹保護され、現在地区内には約10,000本の四季桜が植えられている。
四季桜は、マメザクラとエドヒガンの交配種で小さく淡い花を咲かせ、10月下旬~12月上旬の秋から初冬にかけて見頃を迎え、3月中旬~4月上旬の春にも冬を越した花を咲かせてくれる。
国道419が旧小原村にさしかかり、お目当ての四季桜の出迎えを受ける
小原地区の山間を貫ける国道419沿いには、川見四季桜の里をはじめ四季桜に彩られる公園や公共施設が点在し、見頃を迎えたこの季節は多くの観光客で賑わっている。 今回のツーリングでも、混雑する有料駐車場を避けながら幾つかのビューポイントに立ち寄り、四季桜の淡い花ともみじの紅葉のコントラストを眺め旅をしめくくることにした。
四季桜の淡い花ともみじの紅葉のコントラストで旅をしめくくる
その後、国道419で四季桜祭りで賑わう小原地区を貫けて道なりに南下すると、旧小原村と同じく2005年に豊田市に吸収合併された旧藤岡町にさしかかり、中山ICから猿投グリーンロードにのって名古屋方面へと帰路に着くことにした。
さてさて、尾張瀬戸のダートバイク用品店のハンドル探しから始まった、東美濃から西三河へと巡る初冬のショートツーリングを振り返ってみると...
まずは、走り出すきっかけになったハンドル探しに関しては、とりあえず思い描くライディングにフィットするのは純正ハンドルだったという落ちになったが、これからへたれなライディングの試行錯誤ぶりでもお伝えできればと思う。
そして、鎌倉時代に始まる古刹の名勝庭園を彩る紅葉や、四季桜の淡い花と並び色づく紅葉など、いつもの峠道と一味違う観光名所の紅葉狩りを満喫する旅となった。
想定外だったのは、残念ながらお目当ての老舗食堂旭家食堂は休業中で、また一つ昭和な食堂が歴史を閉じてしまったのかと心配する事態となった。 幸い今回は、近く営業を再開する貼り紙に安堵することになったのだが、その心配の背景には地方経済の衰退や人口減少問題が見え隠れ、日本の行く末を暗示していると憂い多き還暦親父なのである...っと、長くなりそうなので旅のレポートはここで終わり、少しばかりややこしい”あとがき”を添えさせていただくことにしたい(笑)。
あとがき
最近は、旅先で訪れた昭和親父の琴線に触れる小さな食堂や商店が、店じまいしてしまう様を目にすることが多くなった気がする。 特に地方で顕著な、人口減少による地域需要の低下や高齢店主の後継者不足などが原因なのかもしれぬ。 場合によってはSNSの普及により都会から予期せぬ客が押しかけ、閉店に拍車をかけるケースがあるのかもしれぬ。
結局のところ、地方の小さな店が時代を越えて続くためには、あきん亭のようにネットの口コミを通じて遠方の客を呼び込み、独立支援制度などを掲げながら労働力を募って行くしかないのかもしれない。 そしてそんな商売を訴求すれば、集客が見込める地域への出店や、ボリュームが見込める客層への商品展開を進めるのが定石であろう。
そして詰まるところ、一握りの大都市への経済と人口の一極集中と、その他多くの地方経済の衰退と人口減少にたどりつく。 しかし、大都市の経済活動だけで国全体を養う限界も見えており、そもそも地方頼みの農林水産業を外国に依存する事態になりかねない、いやもうなっている? そんなことを考えていると、旅先で遭遇する小さな食堂の閉店は、そんな負のループが加速する予兆にしか見えず、後世が引き継ぐ国の行く末を大いに案ずる還暦親父なのである。
地域の暮らしを支える小さな食堂は、群れとなって国の暮らしや経済を支えるマイクロ・インフラといえるだろうう。 地方経済が破綻限界を超えてしまう前に、国を俯瞰した政治や行政からの支援や振興策に期待したいところである。 残念ながら、現在の地方行政の首長や政治家は見栄えのする実績のため、地域住民に負債を強いるハコモノづくりにご執心なのが実情ではなかろうか。
突然だが、以前大手の美容室チェーンから独立開業したベテラン美容師が、「この店はお客さんと一緒に歳を取って行く」と言っていたことを思い出す。 ヘアーカラーさらには訪問美容など、馴染み客のニーズも齢を重ねると変わって行くらしい。 職人気質の店主が地域貢献のMissionを掲げ、具体的なVisionを描き、こだわりのValueを提供し続ける姿勢に大いに共感したことを思い出す。
昭和親父が旅先で出会った懐かしい店に、居心地の良さや共感を覚えるのも同様の理由なのかもしれない。 そんな店が静かに営みを終える様を見るのは残念だが、限られた顧客やエリアセグメントとともに事業寿命を終えるのは仕方のないことかもしれない。 地域の実情にあったマイクロ・インフラ事業が、自力経済で新陳代謝を図って行けぬことが問題なのである。
度々引き合いに出して申し訳ないが、行列が絶えぬあきん亭を久しぶりに訪れたこの日、還暦を越えて己の嗜好が変わったのか、ボリューミーな焼き豚のゆで豚のような食感と匂いが少しばかり気になるようになってしまった。 年寄りが一緒に歳を取って行ける店に出会うのはなかなか難しいのである。
最後になるが、バイク旅でたどり着くのが困難な山間や海辺を旅すると、必ずしも幸せでない負のループの未来を覗き見たような気持になることがある。 身の回りで、馴染みの食堂が閉店しだしらたそれは予兆、いつまでも現在のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が担保されると思うのは妄想なのかもしれぬ。
悲観してばかりはいられないが、バイク乗りの行動力だから見える景色があり、バイク乗りの感受性だから感じるリスクがあり、そして世の中を俯瞰した課題も見えてくる。 やれることは限られるが、少なくともバイク親父が投じる清き一票は違ってくる(笑)。
ツーリング情報
ダートバイクプラス瀬戸店 愛知県瀬戸市中水野町2-30 (電話)0561-86-8295
虎渓山永保寺 岐阜県多治見市虎渓山町1丁目-40 (電話)0572-22-0351
旭家食堂 岐阜県土岐市泉大島町3-16 (電話)0572-55-2873
あきん亭瑞浪本店 岐阜県瑞浪市稲津町小里1266-1 (電話)0572-68-8123
豊田市小原観光協会 豊田市小原町上平441-1 (電話)0565-65-3808
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