【アーカイブ】2006/09/19 ふるさと九州火山めぐり(阿蘇・雲仙・霧島・桜島)
旅の思い出
昨年末に、故郷福岡の医療介護施設に入っていた父親を亡くし、四十九日を過ぎてもなかなか走り出せずにいた。 父を最後に、福岡の両親と長崎の義父母、自分の親を皆失ったことになる。 彼が自分の生き様をどのように振り返ったのか知る術も無いが、8年前に母が亡くなり、4年前にはその悲しみを支えてくれていた娘、私の妹に先立たれた悲しみが消えることは無かったと思う。
コロナ禍に体調を崩した父とは入院治療中の面会も叶わず、さらに私自身のガン治療も重なり妹が亡くなって以来ずっと会えていなかった。 それでも最後の半年は、短時間の面会が可能になり故郷へ通う日々が続いていた。 病院のベッドで久しぶりに再会したその日、私の顔を左右からじっと眺めると「変わってないね、安心した」と言って、それから口数も減り目をとじていることが多くなった。 最後に示す態度価値が、故郷を離れた長男の無事を確認する姿だったと思える。 自分自身が親となり、人生の終えかたを考えるようになるとそう思えるのである。 そう考えると、己の病のことを告げずに済んだのは最低限の親孝行となった。
親や妹を無くして学んだことがある。 それは、自分が支えているつもりだったが、自分が支えられていたことである。 声を聴かせるつもりが声を聴かせてもらっていた、顔を見せるつもりが顔を見せてもらっていた、心配しているつもりが心配してもらっていた...電話できなくなるまで、会いに行けなくなるまで、寂しくなるまで、それに気付けなかった未熟な自分を後悔している。
今回アーカイブする旅は、皆が健在だった2006年に故郷九州を巡ったツーリングである。 当時の愛車ZRX1100で、福岡の父母、長崎の義父母、鹿児島の妹夫婦を訪ね、家族旅行や修学旅行など記憶に残る道中の景色と再会する旅となった。 あれからもう二十年近くの時が流れ、営みをやめてしまった店も多く故郷の景色はさらに様変わりしてしまった。 当時のレポートを読んでみると、世の中だけでなく己の感受性も随分と鈍ってしまったことに気付かされる。
自分が走れるうちに、感受性が残るうちに、遠い故郷を再訪したいものである。 ちなみに、鹿児島の義弟、亡くなった妹の夫は、トップガンカラーのGPZを駆る筋金入りのバイク乗りだが、妹が亡くなって以来走り出せずにいると聞く。 まだ叶えられていなかったが、再訪した折には是非一緒に走りたいものである。 まだまだ、走り続けなければ見れない景色が沢山ある。
父の四十九日を終えた故郷の夕焼け、親と共に思い出に通う理由も失った
はじめに
フェリーを利用してふるさと九州への旅に出た。 帰省の折、新幹線や飛行機でビューンと帰って、ビューンと戻ってくるだけ。 子供のころ家族でドライブした道、友達とツーリングした道を走るのが楽しみである。 フェリーを使えば、北海道や東北、走ったことが無い魅力的なルートにアクセスできるのに、なぜ九州に向かうのか? 自分でも良く分からないが、最近物忘れがひどく感傷的だからなぁ。 ふるさとの道を忘れないよう、心に焼きつけておきたかったのかもしれない。
関西汽船の大阪南港から別府への航路。 2等寝台+バイク(750cc以上)にインターネット割引20%を適用して14,000円也。 時間さえあれば新幹線よりもお安く、のんびりとした船旅を満喫できる。 今回、九州内の移動にもフェリーを利用したが、燃料代の高騰に影響されるのか? 廃止航路も多かった。 出発前に事前の確認が必要である。
大阪南港別府行きフェリー乗り場にて搭乗待ち、宿に到着のような、旅の始まりのような...
ルート概要
(一日目)
大阪南港(さんふらわあこがね18:50発)~別府港(6:20着)-国500-県11(鶴見岳1374.5m、由布岳1583.8m)→湯布院→水分峠→県11(やまなみハイウエイ)→九重連山(久住山1786.8m)→ 阿蘇-県111-阿蘇山公園道路(自二100円)→中岳1592m-県111-国212(大観峰935.9m)→日田-国386→朝倉
(二日目)
長崎自動車道鳥栖I.C.→長崎I.C.-国499→野母崎-県34-国324→長崎市街
(三日目)
長崎市街-国34-国251→小浜-国57→雲仙-仁田峠循環道路(自二250円)(普賢岳1359m、平成新山1486m)-国386-県58-国251→島原港(オーシャンアロウ)~熊本夢咲島新港-県51-国501-国57→九州自動車道松橋I..C.→えびのI.C.-県30(えびのバードライン)→えびの高原(韓国岳1700m)-県1→霧島高原-国223-県50→九州自動車道横川I.C.→鹿児島北I.C
(四日目)
九州自動車道鹿児島北I.C-鹿児島I.C.-指宿スカイライン(自二200円+420円)→池田湖、開聞岳924m-国226→山川港(鹿児島商船)~根占-国269-県68-佐多岬ロードパーク(自二400円)→県74-県68-国448(国220)→志布志港(さんうらわあさつま18:00発)~大阪南港(8:50着)
ツーリングレポート
事前の週間天気予報では、九州地方に大きな被害をもたらした台風13号の影響が懸念された。 しかし台風は速度を上げ、早々に行き過ぎてくれた。 九州を巡った全日程、残暑残る晴天のツーリングレポートである。
(一日目)別府港~朝倉
フェリーの別府港到着は午前6時20分。 フェリーから降りてそのまま早朝の別府の温泉街を走り出す。 あちらこちらから湯気が立ち上る温泉街を流していると、“地獄めぐり”の看板が目に付く。 早朝の温泉街には観光客も無く、コテコテの観光地とは違った印象をうける。 この世あの世にかかわらず、リアルな地獄はごめんだが、違った印象に観光客してみるのも悪くないと思えた。 そんなことを考えながら数分も走ると、目前に鶴見岳1374.5mがそびえ、早速その麓からワインディングが始まった。
日頃のツーリングでは、濃尾平野の延々と続く街並みを抜けるのに四苦八苦しているので、港から数分も走れば気持良いワインディングが始まるこの環境がとても新鮮である。 右手に鶴見岳を見上げながら、県道11号を駆け上がる。 この県道11号は、由布院を抜け水分峠から阿蘇までつづく、「やまなみハイウエイ」となる。 高原の緩やかなカーブ、高原を駆け上がり下るタイトなコーナー。 変化にとんだ爽やかなワインディングが延々と続くのである。 子供の頃家族でよくドライブに出かけた道、友達とツーリングした道。 道の駅全盛の今、子供の頃から知っているド・ラ・イ・ブ・イ・ンがたくましく生き残っていたのが嬉しかった。 昔から変わらず九州人に愛され、多くの人が訪れ続けている道である。
さて、鶴見岳を右手に見ながら林間のワインディングを抜けると、視界が開けて由布岳1583.8mが現れる。 緑のじゅうたんの中に点在する火山岩、火山活動と風雨の浸食で形造られたであろう、ぽっこりとして丸みを帯びた山の形に九州らしさを感じる。 由布岳の山頂には雲が湧き上がり、別府湾から山肌を駆け上がる風の流れが良く分かる。 緑の草原の中、由布院の集落に向けて緩やかなルートを下ってゆく。 朝霧に包まれた由布院の集落。 思わず深呼吸して、しっとりとした空気を思いっきり吸い込んだ。
由布岳1583.8m、山頂に雲が湧き上がり、別府湾から山肌を駆け上がる風の流れが良く分かる
由布院の集落へと緩やかな草原道を駆け下りる、湯布院は朝霧に覆われていた
由布院の温泉郷を抜けて水分け峠に差し掛かる。 ここで県道11号は、阿蘇までつづくやまなみハイウエイとなる。 まずは水分け峠から九重高原に向けて九十九折のコーナーを下っていく。 九重高原に入るとコーナーは緩やかになり、朝の高原の爽やかな空気を満喫しながら走る高速コースとなる。
走りながら昨日のフェリーの船旅のことを思い出した。 乗船後直ぐに風呂に入る マイ入浴セットを手にした職業ドライバーが多い。 一人で運転席に座る仕事なので小難しい人間関係なんて無縁かと思っていた。 しかし、聞こえてくる会話からは色々人間関係も大変そうだ。 どこも一緒。 隣の芝生が青く見えるだけなのかも知れない。 レストランの食事は想像以上に美味しくて、一気にフェリー旅の虜になってしまった次第である。
入浴後、甲板に出てベンチに寝転がった。 瀬戸内海とはいえ周りは真っ暗な海。 ものすごく沢山の星が見えた。 直ぐに知ってる星座を探し出すあたりに余裕の無さを感じ、ぼーっと星空を眺めることにした。 海に目をやると、遠くに瀬戸内の街の明かりがゆっくりと過ぎていく。 時折、間近を通り過ぎる船のすれ違う速さに、フェリーの速度が意外に速いことを知る。 遠くの明かりはゆっくり流れ、空の星は相変わらずじっと動かず見下ろしている。
何か暗示的で、間近で起こり通り過ぎる日常の出来事に一喜一憂し、ああすればよかったこうすればよかったと後悔する自分を思い出す。 通り過ぎる船、目先のことにとらわれ過ぎて、くよくよしている自分に気づかされた夜だった。 まあ、説教臭い話はこれくらいにしておこう。
さて、水分け峠を駆け下りた後、九重連山を左手に見ながらやまなみハイウエイを快走する。 緩やかなコースで速度域は自然にあがってくる。
九重連山の主峰久住山1791mは、九州で第三の標高を誇る山。 久住山の麓を走り抜けるやまなみハイウエイ沿いには、湯気が立ちのぼる温泉宿がたち並ぶ。 日頃のツーリングでは温泉探しに余念が無いのだが、これだけ豊富な温泉群を目の当たりにすると面食らってしまう。 今回のツーリングは九州の火山を巡る旅。 当然道沿いには、次から次に魅力的な温泉郷が現れるが、入浴は見送って湯気の立ち上る風情と気持ちの良い走りを楽しむことにした。 硫黄の香りがものすごい。 入浴しなくとも温泉成分による十分な効果が得られるような気さえしてくる。
九重山の麓を走るタイトなワインディングを越え、瀬の本高原に向けて駆け下りてゆく。 朝練帰りか? タイトコーナーが続く区間では、かなり気合が入った数台のスーパースポーツとすれ違う。
久住山1791mを左手に目指しながら、やまなみハイウエイを南下する
タイトなコーナーで汗を流せる林間コース、緩やかな高原を駆け抜ける高原コース、様々な顔を見せるやまなみハイウエイ。 阿蘇の集落に向けて外輪山を駆け降りてやまなみハイウエイは終わりとなる。
ところで、阿蘇山は世界有数のカルデラとして知られている。 阿蘇外輪山に囲まれたカルデラの直径は南北28kmにも及ぶ。 4万年ほど前に、巨大な火山が爆発して現在のカルデラが形成されたと考えると、そのスケールの大きさに驚かされてしまう。 阿蘇山とは、カルデラ内にある根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳、5つの山の総称である。 阿蘇山の最高地点の標高は高岳の1592m。
現在も噴煙を上げ続けている中岳山頂を目指し県道111を駆け上がっていく。 県道111の登り始めは林間ワインディング、牧草地が広がるとともに眺望が開け、中岳や周囲に広がる外輪山まで見渡せる。 牛馬が放牧される牧草地を眺めながら、適度なRの登りコーナーを満喫する。 だが、かなりの頻度で、ライン上にホカホカの牛糞が落ちているので要注意。 なんせ物が新鮮なので、乗っかったらスリップダウンは必至である。 最後は、荒涼とした溶岩のなかを抜ける阿蘇山公園道路を走り、噴火口が覗き込める中岳山頂まで上りつめることができる。
阿蘇山のギザギザしたシルエット、周囲の丸い山影と対照的で面白い
県道111から見える草千里、”糞千里”と言うのは冗談でなく立ち入り要注意
恐る恐る阿蘇中岳火口を見下ろす、火口池の青白色が美しい
火口周辺には噴火に備えた、避難用のドームが点在する
噴火口を恐る恐る覗き込んだ後、外輪山を眺めながら中岳から下ってくると、世界一のカルデラ草原の中に米塚が見えてきた。 米塚の標高は954m、山頂に火口跡のくぼみがあって愛嬌のある姿を見せてくれる。 登山道のような痕跡もあるが、牧草地ゆえ立ち入り禁止らしい。 米塚の名前の由来として、健磐龍命(たけいわたつのみこと)が収穫した米を積み上げて米塚ができたという伝説も残っている。
さて、大分県からやまなみハイウエイで熊本県阿蘇まで南下したが、帰りは国道212で福岡方面へと北上することにした。 外輪山の景勝地大観望まで急な九十九折を駆け上がり、その後は、日田の市街地を経由して生まれ故郷の朝倉まで筑後川沿いを走ることになる。 道幅、交通量共に飛ばせる道では無いが、小さな頃から見慣れた筑後川沿いを走るだけで安らいでしまう。 ふるさととはそんなもの? バイクに乗りはじめた頃の新鮮な感覚を、すこしだけ取り戻せた気がする。 そしてしばらく振りに祖母を訪ねた。 認知症で殆どの人を忘れても、私の名前だけは思い出してくれるのがうれしい。 忘れるのも、忘れられるのも悲しいものだ。 久しぶりに田舎に泊まってまったりとする。
中岳から下る途中カルデラに”米塚”を見下ろす、遠くに取り囲むような阿蘇外輪山が見渡せる
国道212で外輪山を駆け上がり、景勝地”大観望”935.9mを目指し北上する
(二日目)朝倉~長崎
鹿児島から門司港まで南北に走る九州自動車道、長崎から大分へと東西に走る長崎自動車道と大分自動車道。 今は九州全域に高速道路が開通し、その気になれば半日もあればどこにだってアクセスできてしまう。 今日は混雑した一般国道は避けたかったので、長崎自動車道を使って長崎市内まで一気に移動することにした。 筑紫平野を過ぎ、武雄・嬉野の山間をぬけると、大村湾の見事な眺望が開ける。 走りなれた中部地方の高速道路に比べ、フェンスが低くて見通しがきく。 ツーリングルートとして、高速道路を十分楽しむことができる。 長崎自動車道鳥栖I.C.から長崎I.C.まで、休憩を挟みゆっくり流しても、2時間あれば到着する。
学生時代を長崎と博多で過ごした自分ゆえ、長崎は朝倉につぐ第二のふるさとだと感じる。 平地は殆ど無く、切り立った斜面の上まで段々畑のように民家がひしめいている。 平地が殆どない谷底のような市街地は、路面電車、バス、タクシー、自家用車、トラック、ミニバイクで込み合っている。 坂が多いから自転車は殆ど見当たらない。 ここで運転技術を磨けば、きっとどこでも通用すると思えるほど混雑しまくっている。 自分も飛び出してきたスカイラインの横っ腹にバイクで突き刺さり、ボンネットを跳び越してダイビングした経験がある(汗)。 また市内は有数の観光地、歴史的に大きな意味を持つ場所がいくつもあり、とても紹介しきれない。
久しぶりにハイ・エントロピーな街を、冷や汗を流しながらバイクを流す。 変わってしまった場所も多いが、記憶と変わらぬ場所を繋ぐと、断片的な思い出がつながってくる。 やっぱりたまに帰らないと、忘れてしまうことも多くなる。 忘れることを完全に防げなくとも、忘却係数?は確実に小さくすることができるだろう。 昔良く散歩した爆心地公園脇にバイクを止めた。 環境破壊が進んだとはいえ、1945年8月9日午前11時2分の空の色も、今見上げている空とほとんど変わらなかったのだろう。 しかし、ファット・マンとはふざけた名前である。
修学旅行の小学生達と一緒に爆心地を後にして公園脇のバイクに戻る。 仕度をしていると、外国のお兄さんが興味深そうにバイクを眺めている。 少し言葉を交わすと、バイク好きの米国人だった。 彼女に急かされて立ち去るお兄さん。 いい奴ばっかりなんだよなぁ。 なんであんなもん落とさなければならなかったのか? 義父は投下直後、父親と一緒に長崎で働く兄を探しに来た。 遺骨もみつけられず、彼は長男になった。 しかし、その後知り合った米国人との親交で、当時の怒りは和らいでいったそうだ。 いろんな集団の利害関係がぶつかった時、人と人との人間らしい関係は意味を成さなくなる。 日常生活でも見え隠れすることゆえ、何時そうなっても不思議で無いと感じる。 考えさせられることは多い。
さて、高速道路で一気に移動したものだからまだ日も高い。 混雑した街中を避け、野母崎まで足を伸ばすことにした。 東シナ海を眺めながら国道499号を南下する。 帰りは、橘湾側の県道34を北上する算段である。 切り立った断崖上を走る県道34号からは、天草灘と橘湾越しに天草や雲仙を一望することができる。 野母崎に向かう途中、端島、通称”軍艦島”と久しぶりに出会うことができた。
いつみても端島のシルエットは、軍艦に見えてしまう。 海底炭鉱の採掘で栄えた島で、昭和49年の閉山とともに無人化している。 もともとの島は、現在の1/3程度の岩礁であったが、採掘物で埋め立てられて現在の形になったらしい。 まさしく人工島。 島影が戦艦「土佐」に似ていたため、アメリカの潜水艦に魚雷攻撃を受けたという逸話も残っているほどである。 石炭エネルギー全盛の頃、人工の島まで作って採掘し、ガンガン燃して鉄を溶かしていたのである。 まさにいま石炭エネルギーで成りあがろうとしている国に、CO2排出はけしからんと言っても容易に受け入れてもらえないのはいたしかたない気もする。 長崎に戻り、新鮮な海の幸にまたまた癒され一日を終えた。
2006年9月21日爆心地の空、この地を訪れあの日を想像してほしい
野母崎に向かう国道499、東シナ海に浮かぶ端島、通称"軍艦島"
(三日目)長崎~鹿児島
長崎市内から、国道34号と国道251号を繋いで、雲仙岳への上り口小浜温泉をめざす。 長崎市街の混雑を引きずった国道34から、国道251に入るとジャガイモ畑の景色が広がる。 確か長崎は北海道についで、国内第二のジャガイモ産地だったと思う。 山が海岸沿いまで迫った長崎の地形ゆえ、広大な北海道のジャガイモ畑とまた違った趣がある。 ジャガイモ焼酎「じゃがたらおはる」の看板が目に付く。 ジャガイモ畑が道の両側に広がる内陸部を過ぎると、小浜温泉まで橘湾と天草灘の見事な展望がひろがる。
目指す雲仙岳は、長崎県の島原半島中央部にある活火山。 一般には、普賢岳、国見岳、妙見岳の三峰、野岳、九千部岳、矢岳、高岩山、絹笠山の五岳からなる山全体が雲仙と呼ばれている。 主峰は普賢岳で、標高は1359mである。 現在では、1990年から1995年にかけての火山活動で形成された平成新山の方が高く1482.7mとなっている。 1991年6月3日大火砕流が発生し、報道、消防関係者を中心に死者43名の大惨事になったことは記憶に新しい。
小浜温泉街の脇から、国道57号で雲仙に駆け上がっていく。 一般道でも林間のワインディングを楽しめるが、是非、仁田峠循環道路を走っていただきたい。 一方通行の縦貫道路ゆえ、対向車を気にせずに自由なラインどりを楽しめる。 って言いたいところだが、日頃対向車に怯えながら走る癖がついているためか? どうしても控えめなラインになってしまう。 自分の小市民ぶりが情けない(笑)。 空に突き抜けるような開放感が得られる反面、高所恐怖症の自分はお尻の辺りがムズムズしてしくる。 仁田峠循環道路からの、普賢岳、平成新山が間近に迫る景観は圧巻である。 火砕流の痕跡が今でも当時の大惨事を伝えている。
仁田循環道で雲仙の景色と走りを満喫し、遠くに有明海を眺めながら国道386を島原港へと下っていく。 島原港からは熊本まで約1時間の船旅。 船内でおにぎりをパクつく。 ところで、島原港から三角港への航路を利用しようと思っていたのだが、三角港への航路は廃止になったとのこと。 燃料高騰のあおりか? 最新のツーリングマップルに記載されている航路も、事前の確認が必要である。 幸い熊本港への航路でリカバリーできたが、一般にフェリー乗り場は半島のどん詰まりや、大きく迂回が必要な場合が多く、現場で航路が無くなっていた場合のダメージは大きい。 事前の確認が必要。
空に向けて飛び出すような仁田峠循環道路、一方通行なのでラインドリは自由なのだが...
仁田峠循環道路からみた平成新山、緑が復元していない火砕流後が生々しい
熊本港から九州自動車道を経由して、次の火山霧島をめざす。 今回はえびのI.C.まで九州自動車道を利用し、県道30号えびのバードラインで霧島にアクセスすることにした。
霧島は、最高峰の韓国岳(1700.3m)、高千穂峰(1574m)、新燃岳(1421m)、獅子戸岳(1429m)、御鉢(1408m)、中岳(1332m)、夷守岳(1344m)、白鳥山(1363m)、甑岳(1301m)など多くの山々が連なった複合火山の総称である。
谷から漂う硫黄の香りや神秘的な雰囲気がする霧島には、山頂に天ノ逆鉾が建つ高千穂峰の天孫降臨伝説が残るのもうなづける。
さてえびのI.C.からは、えびの高原への案内板に沿って県道30号を走れば、迷うことなくえびの高原や霧島温泉郷へとたどり着くことができる。 えびの高原への駆け上がりは、タイトだが走りやすい上りコーナーで気持ちよく汗をかくことができる。 ドリフト禁止のためだろうか? センターラインには、はみ出し防止用のプラスチックポールが立てられている。
えびの高原から、韓国岳(1700.3m)とその奥、高千穂峰(1574m)の眺め
しばらく県道30号バードラインの走りやすい上りワインディングを楽しんでいると、たぬき、うさぎ、鹿の絵が描かれた動物注意標識が目に付き出す。 何気なくコーナーを抜けると、出たーっ!! ライン脇で子鹿が草を食んでいる。 一向に逃げる気配が無いので、写真を一枚とらせてもらった。 えびの高原の鹿注意の看板は伊達ではない。 本当に注意しないとバンビちゃんを轢いてしまうので要注意。
えびの高原で韓国岳と高千穂峰を眺め、霧島温泉郷へと下っていく。 時折路側の岩肌から、湯気が噴出している。 毒ガス注意の看板があるが、どう注意したらよいのか分からないまま通り過ぎる。 温泉特有の硫黄臭の中を走る。 霧島温泉郷も素朴な源泉が沢山あるが、阿蘇、雲仙同様雰囲気を楽しみながらゆっくりと走りすぎる。 さあ次はいよいよ最後の火山、桜島だ。 霧島温泉郷のワインディングを駆け下り、九州自動車道横川I.C.から鹿児島市を目指す。 鹿児島の夜。 さつま揚げ、きびなご・さばの刺身、黒豚・・・そして鹿児島ラーメン。 新鮮な食材に舌鼓をうち姶良焼酎に酔っ払う。 九州の飯は本当に旨い!
えびの高原へとタイトな連続コーナーを上りつめると、動物注意の看板。本当に鹿が出現する
霧島温泉郷へと走る国道223号、路側の山肌から湯気が噴出し硫黄臭が漂っている
(四日目)鹿児島~志布志港
鹿児島市街に隣接する桜島はあまりに有名である。 いまでも活発に活動し、鹿児島市民は火山灰や土石流に悩まされているそうだ。 桜島はもともと、本当に島だったが、1914年の噴火により流れ出た溶岩により、大隈半島と陸続きになった。 南岳山頂にある火口から、2km以内は立ち入り禁止になっている。
市街地から桜島の遠景を眺めながら、指宿スカイラインに乗る。 指宿スカイラインで薩摩半島を南下し、開聞岳と池田湖をめざす。 薩摩半島先端の、山川港から大隈半島の根占に渡り、九州本土最南端佐多岬を目指す計画である。
鹿児島市の高台から見る桜島の遠景、今日は火山灰は降っていないようだ
鹿児島市と指宿市を結ぶ指宿スカイラインの正式名称は、指宿鹿児島インター線。 薩摩半島を縦断する全長50.9kmの、超快適ルートである。 時折フルバンクを楽しめる中速コーナー区間もあるが、全体的に道幅があり緩やかな高速コースである。 指宿スカイラインの沿線からは、錦江湾越しに桜島や大隈連山、眼下に世界最大の喜入原油備蓄基地などが一望できる。 しかし、土曜日だというのにツーリングバイクどころか、ドライブする観光客にもめったに出会わない。 絶景ワインディングをまさに独り占めである。
指宿スカイラインを振り返っての撮影、錦江湾(鹿児島湾)越しに桜島が見える
指宿スカイラインは中・高速ルート、週末だというのに素晴らしい道を一人占め
指宿スカイラインで指宿に入ると、薩摩富士の愛称で知られる開聞岳が見えてくる。 綺麗な円錐形をした開聞岳は富士のようなシルエットを見せてくれる。 指宿スカイラインが終わっても相変わらず道路は整備され、通行する車両も殆ど無い。 鹿児島はまさにツーリング天国。 開聞岳の脇には、開聞岳の噴火できた九州最大のカルデラ湖、池田湖がある。 なんと水深は233m! 周囲15kmの湖には、体長2m、胴回り50cmにも成長する大ウナギが生息していて、謎の生物イッシー?の目撃情報も飛び交っているそうだ。 池田湖脇の駐車場にバイクを止めて、しばしまったりとする。 当然、イッシーにお目にかかることはできず、早々に走り出す。
開聞岳を眺めながら山川港に到着しフェリーに乗り込む。 薩摩半島から大隈半島側へ、しばしの船旅である。 大隈半島に渡った後、根占港から佐多岬に向けて国道269を南下する。 今度は、大隈半島側から錦江湾の絶景を眺めながら、相変わらず交通量の少ないワインディングを楽しむ。 しかし道沿いに、バナナが生い茂り、ハイビスカスの花が咲き乱れる。 実にな・ん・ご・く的雰囲気。
指宿スカイラインが終わり県道28号で開聞岳を目指す、綺麗な円錐形、まさに薩摩富士
大隈半島に渡り国道269を佐多岬に南下する、右手に錦江湾の絶景、左手にバナナ?が茂る
金港湾沿いの国道269から、内陸部を走る県道68に入る。 ここでも見事に整備されたワインディング、ほとんど通行車両が無いワインディングを独り占め状態。 これまで九州の道を走り続け、スタミナもあやしくなってきたが、思わず「うおーっ!」 などと叫びながらバンキングを楽しみたくなってしまう。
そんなちょい(いや、かなり)馬鹿おやじぶりを発揮していると、佐多岬ロードパークの入り口に到着した。 民間経営の道路で路面は良くないが、な・ん・ご・く的雰囲気ムンムンである。 やしの木、ハイビスカス、終いにはガジュマル?のすだれのような気根が垂れ下がっている。 時折東シナ海の眺望が開ける観光道路を流し、佐多岬の駐車場に到着した。 どういうわけか観光客は先端が好き? とどのつまりの先端は、何かしらの観光地になっている場合が多い。 自分は特に先端フェチというわけではないが、佐多岬は九州本土の最南端である。 そこらの先端とは重みが違うのである。 駐車場から重たいエンジニアブーツでドタドタと展望台へと山道を歩く。 んー。 九州最南端かっ。 腰に手をやり東シナ海のかなたに日本の未来を思う。ってのはうそ。 「腹減った、昼飯なに食おうか?」って事ぐらいしか頭に浮かんでこない小市民振りである。
ガジュマルの気根がぶら下がる佐多岬ロードパーク、南国のオーラがムンムン漂っている
しばし歩いてたどり着いた佐多岬の眺め、携帯電話カメラで撮影
佐多岬で最南端を体験し、大阪南港へのフェリーが出発する志布志港に向け大隈路を走る。 内陸部の県道68を北上し、志布志湾、日向灘を望む国道448に進む。 最後の最後まで鹿児島の道は、バイク乗りにとって天国である。 路面も良く交通量も少ない。 あまりの走りやすさゆえ、速度が出すぎるかもしれない。 自制心は必要だが、その開放感には、名古屋、三河近郊の林間ワインディングとは違った味わいがある。
あまりの走りやすさゆえ、距離のわりに予想した時間よりも随分早く志布志港にたどり着いてしまった。 志布志港のフェリー乗り場で時間ができたが、旅の余韻に浸るにはそれもいい。 どうあがいてもフェリーが大阪南港に到着するのは明日の朝、ここで時間を気にしてもしょうがない。 この余裕が船旅のいいところ。
日向灘沿いの国道448を走り、内之浦の眺望が開けた
ここまで旅のルートを中心にレポートしてきたが、毎日旨いものを食べ過ぎてとても紹介しきれぬ旅となった。 ルートに沿って、長浜、久留米、熊本、鹿児島ラーメン、その違いを楽しむのもよい。 福岡では、玄界灘の新鮮な魚、筑後川の鯉や鮎料理、筑前煮、地鶏のたたき、馬刺し、秋月黒門茶屋の葛もち。 長崎では、江山楼のチャンポン、皿うどん、吉そうの茶碗蒸し、坂本屋の角煮、ふくさやのカステラ。 鹿児島では、きびなご、さつまあげ、黒豚、新鮮な魚はどれも旨い。 焼酎の種類も豊富である。
今回唯一紹介するとすれば...郊外のショッピングモールにおされてすっかり静かになった故郷朝倉の商店街、シャッターが閉まったアーケードでしぶとく商売を続ける元祖白橋。
店の前を通ると、店から流れてくるニンニクの香ばしい香り♪ 特性ソースたれに自家製の生唐辛子をトッピングした、元祖白橋の馬ホルモンは健在だった。 酒など飲めぬ子供にとっても、白ご飯が何杯でもいけるごちそうだった訳である。
青春を過ごしたアーケードは静かなもの、巨大モールの影響で閉じたシャッター商店街
親父になった訪れると、生ビールとホルモン焼き2皿をご注文。 香ばしく焼かれたニンニクの香ばしさが鼻にぬける。 プリプリした独特の歯ごたえと、中農ソースの後についてくる深い甘み...白ご飯も良いが、やっぱり、ビールだなぁ。 一人前に酒が飲めるようになるまで営業を続けていてくれたことに感謝する昭和親父であった。 同級生でも誘ってまた来よう♪
空き家や空き地が目立つ思い出の商店街で、たくましく営業を続ける元祖白橋
ニンニクたっぷり、ソースだれに自家製生唐辛子をトッピング
一度食べたらけっして忘れられぬ味と食感
九州ツーリングから一週間、日付が変わろうとする名古屋で電車に揺られている。 向かいの無精ひげの親父は仕事の疲れか爆睡中。 隣の微妙な年齢の女性に寄りかかり、おもいっきり睨みつけてられている。 携帯ゲームにふける9:1分けの親父。 ヴィトンのバックのお姉さんのブーツは何でそんなに尖がってるのか? 酔っ払った若いサラリーマン達は健全にもりあがってる。 九州の旅は夢のまた夢。 変わらぬ毎日だけど、またでかけるさっ! おっとその前に家族とお出かけ。 これ重要。
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