2023/12/02 雉と牡蠣、冬の浜名湖を巡る(浜名湖レークサイドウエイ、奥浜名オレンジロード、エアパーク、きじ亭、松の家、野沢製菓、宇津山製茶)
路面の凍結リスクが少ない浜名湖周辺は、真冬でも走れるツーリングエリアとして重宝する地域である。 浜名湖岸をトレースするクルージングルートだけでなく、浜名湖を見下ろすみかん畑を縫うオレンジロード、さらに奥浜名湖から引佐を抜ける山間へと、走り応えのあるワインディングにも事欠かない。
そして何より季節を問わず山海の美味いものに事欠かず、名古屋の食いしん坊バイク親父が日帰りの昼飯旅に走り出す機会も増えてくる。 今回もその例にもれず、冬ごもり前の走り納めを思い立ったH-DStreet Bob114乗りと連れ立ち、奥浜名湖の滋味深い雉料理を目当てに走り出すことにした。
たどったルートは、国道23豊橋東バイパスの豊橋東ICを起点に、湖西のオレンジロードから浜名湖レークサイドウエイへと北上し、奥浜名オレンジロードを経由して奥山高原で雉料理を供するきじ亭にたどりつく行程である。
昼食後は、県道68で引佐山間をぬけて浜松市街へとくだり、航空自衛隊浜松広報館エアパークに立ち寄った。 そして最後は、舘山寺を経由して国道362で浜名湖岸を走り、東名三ケ日ICから名古屋方面へと帰路に着くことにした。
ところでルート沿いの舘山寺には、冬場限定のご当地グルメ「牡蠣カバ丼」が旬を迎えており、別日に訪れた場面を合わせて紹介することにした。 流石に雉と牡蠣のハシゴ飯は厳しいかもしれぬが、今回紹介する行程を逆にたどれば冬限定の牡蠣飯ツーリングにアレンジすることも可能であろう。
その他、遠江のご当地甘味や変わり種の紅茶など、道中で見かけた地元の人達で賑わう店もあわせて紹介してみたい。 面白そうなものがあると直ぐに駆け込む先導車、同行したH-D乗りから微かな呆れ感が漂うが...新鮮なネタを吸い込み続けなければ生きられぬマグロ親父の性分はかえられず(笑)。 兎にも角にも、H-D乗りの冬ごもりに必要な栄養が、てんこ盛りの旅で十分補給できたことを祈るばかりである。
浜名湖の枝湖猪鼻湖沿いを浜名湖レークサイドウエイで北上する
ルート概要
国道23(豊橋東バイパス)豊橋東IC-国1→一里山東-県173-東笠子通り-県322→岡崎小東-県330→ミニストップ湖西岡崎店-オレンジロード→二輪通行止め-市道→知波田小前(バス停)-国301→瀬戸トンネル南-県310(新瀬戸橋)-浜名湖レークサイドウエイ→東名三ケ日IC-県308-奥浜名オレンジロード→国民宿舎奥浜名湖-奥浜名オレンジロード→奥山診療所-県303→奥山(きじ亭)-県68→新東名浜松いなさIC-国257→JA伊平支店-県68-浜松SAスマートIC-県68→国362(宮口バイパス)-都田テクノロード-国257→萩丘二丁目-航空自衛隊浜松基地外周路→エアパーク航空自衛隊浜松広報館-浜松基地外周路-県364-和地向-県48→舘山寺温泉(松の家)-県320→伊目-県49→細江大橋→下気賀-国362→東名三ケ日IC
ツーリングレポート
冷え込む冬の朝、名古屋から浜名湖への凍える高速道路移動は辛いばかりとなる。 おのずと、蒲郡を経由して湖西に抜ける国道23バイパスを利用し、信号停止の無い高架国道を程よいペースで巡行したくなる。
その定番ルートは、名四国道から知立バイパス、岡崎バイパス、蒲郡バイパス蒲郡ICへと走り継ぎ、未接続区間の蒲郡市街を貫けて国坂峠を越え、豊橋バイパス豊川為当ICから豊橋東バイパス豊橋東ICまで移動する行程となる。
今回も同行するH-D Street Bob乗りと待ち合わせ名四国道へと走り出したのだが...2024年の未接続区間の全線開通に向けた、蒲郡西IC~蒲郡IC(2023.9.1~12.28)、豊川為当IC~前芝IC(2023.11.13~12.22)の工事通行止めに遭遇することとなった。
結果的に、工事中の高架道路を目で追いながら側道をつなぎ、何とか豊橋東バイパスへと走り継ぐことができたが、あらためて事前のルート確認の必要性を痛感する次第である。
まあ、現場で臨機応変に旅を続けられるのがバイク旅の良さで、生きて帰りさえすれば思い通りに行かぬトラブルも思い出になる。 大雑把な目的を決めて、晴れたらふらっと衝動的に走り出すスタイルは変わりそうにないが...300kg越えの
Street Bobで引きずり回された友人には申し訳ない限り。
工事区間をやり過ごした国道23豊橋東バイパス、道の駅とよはしで小休止
さて、国道23豊橋東バイパスを豊橋東ICまで走りきると、国道1を経由して湖西市街を迂回するオレンジロードへと駆け出し、奥浜名湖を目指して北上を開始した。 この浜名湖西岸の高台を南北に走るオレンジロード、三ケ日の町中まで続く快適なワインディングだが、残念ながら天浜線知波田駅~尾奈駅と並行する区間が二輪通行止めになっている。
二輪通行止めに至った経緯は容易に推測できるが、安全にツーリングに活用し地域振興との正帰還をかけるための戒めになる。 二輪乗りのモラル啓蒙とともに、二輪通行規制区間の適切な解除を働きかける活動も為されているが、変わることが苦手な日本の政治や行政ゆえに、一度布かれた規制を解除するのは難しいかもしれぬ。
オレンジロードを二輪通行止め区間まで走りきると、浜名湖岸の国道301に駆け降りて奥浜名湖にむけて北上を続ける。 湖西市街の混雑を回避できれば、穏やかな湖面を眺めながらのクルージングも悪くない。
二輪通行止めの湖西オレンジロード、湖岸の国道301へと駆け降りる
国道301で浜名湖西岸に走り出すと、程なく浜名湖の支湖猪鼻湖に差し掛かった。 今回は浜名湖と猪鼻湖を繋ぐ瀬戸水道に架かる新瀬戸橋を渡り、浜名湖レークサイドウエイへと分岐して奥浜名湖をめざすことにした。 浜名湖レークサイドウエイは猪鼻湖岸を走り大崎半島を縦断するかつての有料道路で、瀬戸水道から東名三ケ日インター方面へ約5kmの快走路が続いている。
浜名湖レークサイドウエイ、浜名湖の支湖猪鼻湖岸を北上する
その後、浜名湖レークサイドウエイを走りきって国道362と交差すると、東名三ケ日インターの手前で県道308に分岐して、気賀方面へ向かう奥浜名オレンジロードに駆け上がった。 三ヶ日の町中から気賀の国民宿舎奥浜名湖を経由して、奥山まで続く奥浜名オレンジロードについては、以前のツーリングレポートでも詳しく紹介したので、必要に応じて参照いただきたい。
この季節を問わず楽しめる極上のワインディングを訪れるたびに、湖西のオレンジロードのような二輪通行止め規制が布かれぬよう祈るばかり。 ツーリングルートに取り入れ、安全マージンを十分確保した良識あるペースで通り過ぎるだけでも、十分にメリハリを付けたスムーズなライディングを磨くことが可能だろう。 特に、ミカンの収穫時期を迎えたこの季節、収穫作業中の軽トラに遭遇することも多いので注意が必要である。
奥浜名オレンジロードから冬の浜名湖を見下ろす
奥浜名オレンジロードを、国民宿舎奥浜名湖を経由して奥山まで走りきると、大本山方広寺参道脇から小路を登ったきじ亭にたどり着いた。 昭和46年に創業したきじ亭は、地元引佐で育てられた雉料理を供する店である。 店の入り口前にStreet Bob 114とW800 streetを停めると、昭和の雰囲気とジンギスカンの煙漂う店内のテーブル席に案内され、お目当てのきじ肉ジンギスカン(野菜類,ご飯,漬物付)2,700円也を注文した。
テーブルの鉄板が焼けるのを待つ間に、現引佐町奥山で雉肉料理が始まった経緯などググってみると、日本の国鳥日本雉を放鳥するため、国から日本雉の養殖が委託されていたのがルーツらしい。 昭和43年に国の養殖委託事業は終了したが、数十年に渡り培った雉の養殖技術を活かしたいと、引佐地区で食用に適した高麗雉の養殖が始まったらしい。 さらに大本山方広寺を開山した無文元選禅師が、中国で修行して仏教文化と食文化を奥山に伝えたことにちなみ、方広寺近くに中国原産高麗雉料理のレストランを開業したとのことである。
スマホを覗き込んだだけではあるが、ここまでの所以を知ってしまうと、昭和親父が感じた懐かしいB級感も高尚に思えるから不思議なものである(笑)。
ジンギスカン鍋が程よく焼けた頃に雉肉と野菜が配膳され、テーブルに備えられたマニュアルに沿ってきじ肉ジンギスカンを焼きにかかった。 高たんぱく、低カロリーで、アミノ酸やらミネラルが豊富...還暦親父の食生活指導のような雉肉の栄養効果は不明だが、適度な歯ごたえと滋味深い旨味効果は直ぐに判る。 まろやかな醤油ダレにおろしニンニクの薬味をたっぷり加えると、還暦バイク親父たちの目は血走ってくる(笑)。
昭和46年創業のきじ亭、引佐地区で育てられた高麗雉料理がいただける
きじ肉ジンギスカン2,700円也(二人前)、野菜、ご飯、香の物
家族の迷惑顧みずたっぷりのおろしニンニクの薬味で平らげた滋味深い雉肉の効果で、冬の遠江を駆け抜けるための十分な熱源を確保した親父達は、きじ亭を後に引佐方面へと駆け出すことにする。 奥山から県道68を新東名引佐IC方面へ走り、突き当たった国道257を浜松方面へと下って行った。
その後、国道257を浜松方面へ走り出すと程なく伊平の集落に差し掛かり、引佐町の山間をぬけて浜松市街へと下る県道68に分岐した。 県道68のワインディングの見通しが開ける場所からは、滝沢町から引佐町にかけての山頂に繋がる浜松風力発電所の発電施設を見上げることが出来る。 遠州の空っ風が吹く冬場、北西の風で勢いよく回る巨大風車を見上げながらコーナーを切り返してゆくと、新東名浜松ASスマートICの脇を抜けて、浜松市街北端をトレースする国道362宮口バイパスに突きあたった。
県道68で引佐山間を貫け浜松市街へ下る、遠い山頂に繋がる風力発電の巨大風車
突き当たった宮口バイパスを右折して浜松市街中心部へ舵を切ると、道なりに都田テクノロードから国道257へと走り継ぎ、航空自衛隊浜松基地にあるエアパーク航空自衛隊浜松広報館に立ち寄った。
航空自衛隊浜松基地は航空自衛隊発祥の地、現在も航空自衛隊員教育の中心地である。 そして隣接する浜松広報館は、1999年に開設された航空自衛隊の広報施設で、歴代の戦闘機や装備品、そして体験型のシミュレータなどが展示されている。
エアパーク航空自衛隊浜松広報館、歴代の戦闘機や装備品などが展示されている
展示格納庫に入ってまず昭和親父の目に留まったのは、昭和38年にグアム島で発見された零式艦上戦闘機(五十二型甲)。 発見の翌年、グアム島知事から日本に返還された機体は、製造された三菱重工業大江工場で忠実に復元され、昭和42年から浜松基地に保管されている。
カラーテレビ世代の昭和親父ゆえ、実際に零戦が飛ぶ姿を目にしたことは無いのだが、小学校のノートは零戦の落書きで埋められていた。 それゆえ飛行状態で展示された名機は、ただただ美しく格好良いのだが...昭和19年のマリアナ沖海戦で被弾し、操縦していた尾崎伸也大尉が戦死されたことを想うと、様々な己の記憶がよみがえってくる。
撃沈された戦艦から生還し深い傷を負った叔父は、兄を特攻で亡くし長男になった。 原爆が投下された翌日に長崎を訪れた義父は、工場に動員されていた兄を探し出すことができず長男となった。 今では叔父や義父を始め、戦時のことを知る身近な人も亡くなってしまったが、自分が親父を名乗る年になった今だからこそ聞きたいことが溢れてくる。
展示格納庫を飛ぶ復元された零式艦上戦闘機(五十二型甲)
また展示資料館1Fには、平成の零戦と呼ばれるF2戦闘機も展示されている。 1988年に開発着手後、1995年の初飛行から2000年に実戦配備されるまで、F2の開発機として活躍した機体である。
米国のF16をベースに旋回性能を上げるため、世界初カーボン素材の一体成型主翼で大型化と軽量化を両立する等、日本が誇る先端技術が詰まった機体は機能的で美しい。 貿易摩擦に起因する米国の日本たたきを背景に、米国利益優先の共同開発を強要された経緯など、日本のアイデンティティを保つための戦いが現在も続く現実を再認識させられる。
戦後復興と衰退をみてきた昭和親父ゆえ、色々と考えさせられることも多いが...ここを訪れる若い人達には、美しい二機の零戦の姿とともに忘れてはならない歴史や、他人ごとではない国防の現実にも触れてほしいものである。
航空自衛隊浜松広報館の見学を終えると、浜松基地外周する県道364の信号待ちで、離陸するT-4訓練機の爆音とジェット燃料の排気臭に包まれる。 高所恐怖症で絶叫コースターも苦手なバイク親父は、死ぬまでに一度は操縦桿を握ってみたいと分不相応な夢を妄想する。
平成の零戦F2戦闘機の開発機体、F16の主翼を炭素素材で軽量化
浜松基地の外周路県道364から県道48へと走り継ぎ、舘山寺方面へと旅を終えることにした。 今回は、県道49で舘山寺を迂回して細江大橋を渡り、浜名湖ツーリングを終えるにふさわしいであろう国道362の浜湖畔ルートをたどり、東名三ケ日ICから名古屋方面への帰路に着く段取りである...っと、このまま旅を終える訳にはいかず、冒頭で触れた浜名湖の冬限定の牡蠣料理を紹介して旅をしめくくりたい。
浜松基地から県道48を道なりに走り続けると舘山寺にさしかかり、温泉街にある昭和44年創業の和食処「松の家」にたどり着く。 浜名湖名物の鰻の蒲焼を関西風で供する和食処だが、今回紹介するのは舘山寺のご当地グルメ「牡蠣カバ丼」、11月中旬~3月中旬頃に加盟店で供される冬場限定のメニューである。 浜名湖と言えば明治33年に始まった鰻養殖で有名だが、実は明治20年に始まった牡蠣養殖の歴史の方が古いらしい。
昭和44年創業「松の家」、関西風うなぎの名店で牡蠣カバ丼(2023年11月25日撮影)
別日に松の家を訪れ注文したのは、もちろんお目当ての牡蠣カバ丼1,800円也。 程なく配膳された牡蠣カバ丼には、舘山寺ご当地グルメの規定演技として、浜名湖産の海苔が布かれた白飯に、浜名湖産の牡蠣と遠州産の玉ねぎが盛られ、香りづけにみかんの皮がまぶされている。
主役の牡蠣の蒲焼を口に運ぶと、このご当地メニューがうなぎ蒲焼を供する松の家で考案されたこともうなづける。 うなぎの蒲焼のタレと焼きの技術が、浜名湖産の牡蠣の濃厚な旨味とプリプリの食感を引き立てているのだ。 さらに、遠州産の玉ねぎの深い甘さとシャキシャキの食感は、主役を上回るといっても過言ではなかろう。
あらためて振り返ってみると、最初にこの店を訪れたのは2016年のツーリングであった。 その後、2021年にTVドラマ「孤独のグルメ」のロケ地になったらしく、久しぶりの来店で想定外の賑わいに遭遇することになった。 コロナ禍以降、昭和親父好みの懐かしい食堂の閉店に遭遇することも多く、おもわぬ混雑もうれしく感じるご時世になってしまった。
浜名湖の冬限定メニュー牡蠣カバ丼、濃厚な旨味とプリプリの食感(2023年11月25日撮影)
今回のツーリングでは、国道23豊橋東バイパスから湖西オレンジロード、浜名湖レークサイドウエイ、そして奥浜名オレンジロードを経由し、奥山のきじ亭で雉肉の昼飯をいただく往路をたどった。
その往路の奥浜名オレンジロードの途中から気賀の町に駆け降り、舘山寺で牡蠣カバ丼の昼食をとって航空自衛隊浜松広報館から引佐の山間へと北上するルートも良さ気である。もちろんいずれのルートをたどるにしても、雉と牡蠣の両方を平らげることは可能だが(笑)。
ツーリングルートが限られる冬場に、奥浜名のワインディングと山の幸、または浜名湖畔のクルージングと海の幸と、気分に応じてルート企画を楽しめるのも浜名湖エリアだからなのである。 周遊を終えるころにはそれなりに気温もあがり、凍える高速道路移動をサクッと終えて帰還できるだろう。
ツーリングレポート(番外編)
ここでは、ツーリングの道中で目に留まった二軒の店を番外編として紹介してみたい。 旅先で昭和親父の触角が反応する店を見つけると、予定した行程そっちのけで立ち寄る晴れふら親父、同行したH-D Street Bob乗りもいささか閉口気味ではあるが、友人への忖度よりも未だ見ぬ美味いものや地域文化への興味が上回る(笑)。
まず最初に紹介したいのは、引佐町奥山の方広寺参道近くで見つけた昭和28年創業の野沢製菓である。 きじ亭へ向かう道中、”名物大あんまき”の看板とそこに集う地元客を見かけ、昼食をとった帰りに立ち寄り土産を仕入れることにした。
遠州奥山半僧坊 名物大あんまきの看板が目を引く野沢製菓
三河で大あんまきと言えば知立の藤田屋を耳にすることが多いが、遠州では野沢製菓の大あんまきのことを指すらしい。 どちらが元祖論争は他に譲るとして、帰宅後に今回土産に仕入れた野沢製菓の大あんまき600円也の包を解いてみると、のり弁サイズの大きさにその商品名が誇張でなかったことを知る(笑)。
大あんまきに焼き印が押された方広寺の鎮守半僧坊のご利益を信じ、たっぷりのこし餡がしっとりした生地でくるまれた大あんまきを、かみさんの力を借りて二日がかりでいただいた。 自称甘党のH-D乗りも家族と二日がかりの完食とのこと、土産としてのインパクトは絶大なサイズだが、軽い気持ちで複数発注は避けた方が無難であろう(笑)。
方広寺の鎮守半僧坊の焼き印が押された大あんまき600円也
そしてもう一か所、巨大な甘味を友にするお茶を仕入れたるために立ち寄ったのが、浜名湖の茶葉を使ってオリジナルの煎茶や紅茶を製造する宇津山製茶である。 航空自衛隊浜松基地から舘山寺へ向かう県道48沿いで、犇を〇で囲った珍しい屋号が目に留まり立ち寄ることとなった。 この「まるわし」印は、昭和4年に宇津山製茶を創業した宇津山 犇蔵(わしぞう)さんの名を使ったもので、客が犇(ひし)めくに掛けた縁起の良い屋号らしい。 確かに通りすがりのバイク親父が、その珍しい屋号に引っかかり客となった(笑)。
昭和4年創業、浜名湖産の茶葉にこだわる宇津山製茶に立ち寄る
店内に入ると量り売りの茶葉ケースが並び、注文した茶葉を真空パックしてくれる。 品数が多く、一見ツーリング親父の目利きでは歯が立たず、無難に売れ筋と聞いた「浜名紅茶」648円也と「味香多茶 葵」648円也の二品を購入することにした。
浜名紅茶は、浜名湖産茶葉にこだわった渋みの少ない和紅茶、その名の通り緑茶のような味わいの個性的な紅茶で、大あんまきのような和菓子にぴったりであった。 また、三方茶葵は普段使いの煎茶で、平地茶葉特有の旨味と渋みがはっきりしていて、在宅勤務の眠気覚ましに重宝することとなった。
「浜名紅茶」648円也と「味香多茶 葵」648円也を購入
突然だが、故郷の福岡県で学生生活を終え、愛知県でリーマン稼業を始めたバイク親父である。 そのころから愛知県で出会った友人達と、週末の浜名湖ツーリングを楽しんできた。 そしてみつけたどこか懐かしい気賀の味噌饅頭、ふわっふわの生地と軽い餡は、昭和親父お気に入りの甘味となった...しかし残念なことにコロナ禍を経て、お気に入りだった福月堂に加え、新しくみつけた、かじや菓子店も閉店してまうこととなった。 高齢の店主が切り盛りする小さな店が、コロナ禍を越して商売を続けることは叶わなかったのかもしれぬ。
今回のツーリングでも、そんなみそ饅頭に会えなくなったことを想うと、冷静ではいられなかった。 単に饅頭難民になった昭和親父の嘆きではあるが、大所高所から見れば、新型コロナウイルスなどの感染症や地球温暖化による気候変動は身近な暮らしを変え、さらには第三次世界大戦の危機まで叫ばれる世の中になってしまったと嘆かざるを得ない。 諸行無常の世の中であることは分かっているが、自分が生きてるうちにこんな世の中が訪れるとは思ってもみなかった。
己の人生の締めくくりを考えねばならぬ還暦親父ではあるが、変わって行く世の中を嘆いてばかりはいられない。 政治や経済の舵取りを生業とする方々には目線を上げてほしいものだが、一介のバイク親父も、足元から崩れてゆく地方の暮らしや文化に、歯止めをかけるためにできることを探したいものである。
っと、ハードルを上げては見たものの、できることと言えば...バイク旅で訪れた土地々々の美味いものを食らい、歴史や文化に触れて感じたことを、くどい文章にのせて伝え続けることぐらいであろうか。
還暦過ぎまで生きてきて、続ける事に意味があると思えるのは、続けていれば次の一歩を踏み出す起点が生まれるからだと感じている。 さらに、その一歩の大きさよりも、何のために踏み出すのか、その志の大きさの方が大切だと想える。 だから、旅先で出会った零戦やみそ饅頭を紹介する文章が、どんどんくどく、時代錯誤になって行くわけである(笑)。
ツーリング情報
きじ亭 静岡県浜松市北区引佐町奥山1594-22 (電話)053-543-0138
航空自衛隊浜松広報館 静岡県浜松市西区西山町無番地 (電話)053-472-1121
松の家 静岡県浜松市西区舘山寺町2306-4 (電話)053-487-0108
野沢製菓 静岡県浜松市北区引佐町奥山1567-1 (電話)053-543-0066
宇津山製茶 静岡県浜松市西区湖東町996番地 (電話)053-486-0106
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