2022/05/06 秋葉街道遠山郷、諸行無常の懐古旅(旧木沢小学校、村の茶屋、食楽工房元家)

 子供の頃、夏冬休みのたびに入り浸っていた親の実家で、祖母が打ってくれた蕎麦の記憶がいまも残っている。 筑紫平野の田園地帯で二毛作に精を出す農家ゆえ、郷土料理のだご汁がそばがきになったようなものだったような気がする。

 今回、南信州山村のお母さんたちが打つ田舎蕎麦を目当てに、秋葉街道遠山郷で営業するそば処「村の茶屋」を目指して走り出すことにした。 村の蕎麦打ち自慢といっても信州は蕎麦の本場である、記憶に残る九州の田舎料理とは比較にならぬほど洗練されている。 しかし、祖父母の家を想いだす古民家でいただく田舎蕎麦は、還暦を越えたバイク親父の郷愁を誘うのである。

 また遠山郷では、平成12年の廃校後も昭和7年の木造校舎が保存されている、旧木沢小学校に立ち寄るつもりである。 私が通った小中学校は卒業後すぐに取り壊されてしまったが、残っていれば木沢小学校舎と同い年くらいだったと思う。 諸行無常の世の中ではあるが、旅も、そして人生も、臨機応変に楽しみたいところ。 思い出ばかりにしがみついて停滞するつもりは無いが、懐かしい景色に触れて抱いていた志を思い出せば、さらに新たな一歩を踏み出す刺激になるだろう。

 南信州へのアクセスは、東海環状道豊田勘八インターを起点に、往路では県道46の売木峠(1150m)、復路では国道418の平谷峠(1160m)を越えて国道153に折り返すルートをたどった。  さらに遠山郷へのアクセスは、道の駅信州新野千石平を起点に、国道151、県道1、国道418、そして秋葉街道こと国道152を折り返した。 売木峠、平谷峠の走りごたえのある峠越え、そして天竜川岸の崖っぷちをトレースする県道1、中央構造線に沿った国道152の快走路など、バリエーションに富んだワインディングが続く。

 さてさて、南信州山間の街道で昭和親父のノスタルジーをたどる旅、そして還暦バイク親父にはちとタフなてんこ盛りワインディング。 懐古趣味の親父は、旅先の懐かしい景色やライディングの疲れと共に、どんな刺激を持ち帰ることができたのだろう。


遠山郷「村の茶屋」、懐かしい古民家でいただく田舎蕎麦(2017年8月撮影)



ルート概要

東海環状道豊田勘八IC-国153→中金町日影-県344-県33→豊岡-国153→月瀬の大杉公園-国153→根羽村集落-県46→南アルプス展望駐車場,売木峠(1150m)-県46→売木村集落-国418→道の駅信州新野千石平-国151→早稲田-県244-県1→平岡ダム-国418→和田-国152→村の茶屋(折り返し)-国152→旧木沢小学校-国152→道の駅遠山郷,食彩工房元家-国418→県1,県244→早稲田-国151→信州新野千石平-国418→平谷峠(1160m)-国418→平谷-国153→東海環状道豊田勘八IC


ツーリングレポート


 東海環状道豊田勘八インターから国道153へと駆け降りると、矢作川勘八狭から飯田方面に向けて北上を始めた。 流石に三河から南信州へと貫ける幹線国道の交通量は多く、さっそく県道344に分岐して観光客で賑わう足助を迂回することにした。 足助バイパスが開通し随分と渋滞は解消されたが、それでも信号待ちが多く流れが滞る足助を回避できるのはありがたい。 そして何より、新緑に覆われた県道344の里山道は、南信州への本格的な峠越えの足慣らしになる。

 その後国道153に再合流して北上しながら矢作川沿いを遡ると、愛知県豊田市から長野県下伊那郡への境界を越えて月瀬の大杉公園に立ち寄った。 還暦親父ご用達のパワースポットではあるが、今回は南信州への旅の序盤に立ち寄ったトイレ休憩。 公園駐車場の清潔に掃除されたトイレ脇から、矢作川に架かるつり橋の先に覗く大杉に新緑越しのご挨拶。

 ところで今回の旅は、還暦過ぎの友人二人とのツーリングである。 コロナ禍以降久しぶり、感染すれば重症化のリスクを背負いこむ同胞達と、まずは少人数で親父間距離(ソーシャル・ディスタンスとも言う)を保ちながらの走り出しである。 そしてまたこの日は、コロナ禍の最中に大型免許を取得した友人の、新車Harley Davidson STREET BOBのお披露目となった。 還暦過ぎて初の大型バイクが1.8リッターのクルーザーとは...日和って軽量なミドルサイズに乗り換えた我が身が霞む(笑)。 


月瀬の大杉公園でトイレ休憩、駐車場から新緑に覗く大杉にご挨拶


 コロナ禍での自粛暮らしを通じ、人間が食べて排泄するだけでは生きて行けぬ生き物であることがわかったはずである。 バイク道楽に興じる親父にとっても、心の糧を得るバイク旅が不要不急ではないことが、あらためて身に染みることとなった。 コロナ禍での近況や愛車のスペック等々、旅先で友人達と他愛もない話ができる幸せを嚙みしめる。

 そして、月瀬の大杉公園から国道153に走り出すと直ぐに、根羽村集落から県道46へと分岐して売木峠(1150m)に向けて駆け上がった。 県道46は標高を稼ぎながら矢作川を遡り、小戸名渓谷を見下ろす水神大橋を渡ると、深い森の峠道で小さな集落を繋ぎながら標高を稼いでゆく。 その後深い森は徐々に明るい広葉樹林となり、ブナ林が点在する茶臼山高原らしい景色が広がってくる。


根羽村集落から分岐した県道46、小戸名渓谷、そして売木峠へと駆け上がる


 今回は友人達にお気に入りのビューポイントを紹介しようと、売木峠の手前の九十九折れをのぼりきったところで、茶臼山方面に分岐して南アルプス展望駐車場に立ち寄ることにした。

 矢作川源流碑に隣接する南アルプス展望場からは、日本第二位の標高北岳(3,193m)をはじめ、3,000m級の峰々の稜線を望むことができる。 あいにくの曇り空にその眺望を半ば諦めていたのだが、曇り空を背景に南アルプスの山々がくっきりと浮かびあがっていた。

 県道46と茶臼山高原道路をつなぐことが少なく見逃しがちな展望所だが、茶臼山高原を訪れたときにはぜひ立ち寄りたい場所である。 南アルプス連山の名称と標高、位置関係がわかる解説板が立っているので、愛知県最高峰から長野、山梨、静岡にまたがる山脈のスケール感を感じることができるだろう。

茶臼山の麓、南アルプス展望駐車場、3,000m級の峰々が連なる稜線


  南アルプス展望駐車場から県道46に折り返して売木峠を越えると、茶臼山高原から売木村集落に向けて林間ワインディングを駆け降りて行く。 売木峠で矢作川水系から天竜川水系への分水嶺を越えて、軒川沿いの小気味よい切り返しで新緑のワインディングを満喫する。

 県道46で売木村集落にたどりつくと国道418に分岐して、東三河と南信州を結ぶ遠州街道国道151の旅のランドマーク、道の駅信州新野千石平に向けて駆け降りた。 その後、信州新野千石平にたどり着いて水分補給とトイレ休憩をすませると、遠山郷へと分岐する阿南町集落に向けて国道151のダイナミックな下りを駆け降りる。

 そして、早稲田交差点から県道244に分岐して阿南町役場前をさらに下って行くと、県道1の天竜川の崖に沿った切り返しへと走り継ぎ、天竜川沿いの国道418にむけて徐々に標高を下げてゆく。 時折対岸に、飯田線の橋梁を見下ろす秘境感満点のルート、高所恐怖症を患うバイク乗りは谷底から目を逸らしながら、腰が引けた山よりのラインを下る(汗)。


天竜川の崖を切り返す県道1、平岡ダムに向けて下って行く


 県道1で天竜川の崖っぷちを平岡ダムまで下ると、突き当たった国道418で天竜川の支流遠山川沿いを遠山郷に向けて遡る。 集落を繋ぎながら国道418を快走し、秋葉街道こと国道152に合流したところで、遠山郷の中心である和田宿にたどりついた。

 かつて和田宿では、大勢の観光客で賑わう日帰り温泉、遠山温泉郷「かぐらの湯」が営業していた。 中央構造線に沿った、遠山川断層と赤石断層が交差する場所から湧き出す塩っぱい温泉は、42.5℃のナトリウム・カルシウム塩化物泉、これまで何度も訪れたことのあるお気に入りの温泉であった。 内湯の色々な浴槽から露天風呂まで入浴施設は充実しており、飲泉用の源泉をテイスティングすることもできた。

 全て過去形で書いているのは、源泉の汲み上げ設備が破損し復旧のめどが立たず、昨年2021年11月から無期限の休業となっているからである。 現在は、道の駅「遠山郷」として観光案内所だけが運営されている状態らしい。 バイク親父の寿命に比べれば大地の恵みの時間軸は永久だと勘違いしがちだが、当たり前だと思っている全ての資源が限りあるもの、恩恵をうけるには金がかかるものだと再認識する。 実際のところ、(旧)晴れたらふらっとサイトで紹介してきた小規模な温泉施設の多くが、廃業してしまっているのが実情なのである。


多くの客で賑わった遠山温泉郷「かぐらの湯」、現在無期限の休業中(2017年8月撮影)


 ところで、東西を南アルプスと伊那山地に挟まれた秋葉街道は、古くは遠江から信濃へ続く塩の道、そして信濃から遠江の秋葉山神社への参拝路として人の往来があった古道である。 また、街道に沿って日本列島を横断する中央構造線が走り、街道の所々でいくつもの露頭を観察することが出来る。

 現代の秋葉街道国道152は、中央構造線の破砕帯に日本のトンネル技術が敗れ、地蔵峠と青崩峠の二か所で分断され酷道への迂回を強いらるルートでもある。 並行する三遠南信自動車道の建設が進められているが、全線開通はまだまだ先のようだ。

 今回は、一般の観光客が折り返すであろう和田宿の道の駅「遠山郷」を通り過ぎ、秘境感満点の上村川沿いを遡る快走区間へと走り続ける。 広狭混在の国道152の快走区間だけを切り取ったいいとこ取りのライディング、地蔵峠で寸断される手前のそば処「村の茶屋」で折り返すルートをたどる。 

上村川沿いを遡る国道152、村の茶屋を目指し秘境感満点の快走路


 新緑で覆われた国道152をペース良く走り、矢筈トンネルを貫けて1kmほど過ぎたところで、いよいよ目的の村の茶屋にたどり着いた...がっ! 開店時間を過ぎても人の気配のない古民家の入り口に、「本日は臨時休業」の貼り紙を見つけて唖然とする還暦親父御一行。 村の茶屋脇の駐車場で見かけた人達は、食事客では無く、トイレ休憩中の南アルプス登山客のようであった。

やっとたどり着いた村の茶屋は臨時休業、唖然とする還暦親父御一行


 明治中期の中馬宿を改装した「村の茶屋」、太く年季が入った梁が懐かしい古民家でいただく香り高い田舎蕎麦、そして旬の盛りだくさんの地元野菜の天ぷら、秋葉街道を走りながら親父の頭を回りだした昼飯の妄想が砕け散る。 土日の書き入れ時だからと、営業を事前確認していなかった我が身を省みるも...思惑通りに行かぬ世の中、気持ちを切り換えて旅を続けることにした。 とほほほほ(泣)。


田の字型の間取りに太い梁、どこか懐かしい座敷でくつろぐ(2017年8月撮影)


村の茶屋の香り高い田舎蕎麦、そして旬の地元野菜の天ぷら(2017年8月撮影)


 お目当ての昼食をとれぬまま村の茶屋から国道152に折り返すと、国道沿いの上村川が遠山川に合流する木沢地区にさしかかり、旧木沢小学校に立ち寄ることにした。 平成11年に廃校になった旧木沢小学校だが、昭和7年に建てられた木造校舎が地元ボランティアにより現在も保存されている。 見学は無料だが、老朽化した校舎の保全のため協力金を残したい。

 以前、ソロツーリングで訪れた旧木沢小学校、今回は同じ時代に子供時代を過ごした還暦親父達とのツーリングである。 通った小学校はもちろん、育った故郷も異なる面々だが、見学する前から、「〇〇あったなぁ、〇〇はあった?」と、時と場所を越えた思い出話で盛り上がる。


昭和7年に建てられた旧木沢小学校、平成11年の廃校後も保存されている


 さて、趣のある木造校舎前にZX-6Rを停めて校舎玄関に向かうと、無防備な姿で見学者用の車いすで昼寝する校長猫がお出迎え。 本名たかね(♀)、推定13才、人間に換算すると68歳とかなりのご高齢、還暦親父のお姉さまなのである。

 TRICK STARの排気音とともに訪れたバイク親父のことなど、我関せずとばかりに安心しきった寝姿を晒すたかね姉さん。 旧木沢小学校の校長猫のように、だれもが安心して昼寝できる世界になることを祈りながら、ブーツから見学用のスリッパに履き替えて、何もかもが懐かしい木造校舎の中に入っていった。

見学者用車椅子で動かぬ昼寝猫、校舎に入り昭和親父の時間も止まる


 曖昧な記憶が蘇ってくるのを感じながら廊下を歩くと、廃校当時のまま全てが保存されている教室に入り時計の針が止まる。 黒板、窓、ストーブ、天板が開く小さな木製机、歯抜けだった記憶のジグソーパズルが埋まり、目の前に存在する現実として親父の喪失感を埋めてくれるのだ。

 初めてここを訪れた時、たくさんの思い出が鮮明に湧き上がってきて、僕はここから学び始めたんだ...と、油断した親父の目から熱いものがこぼれそうになったことを思い出す。 そして、永い時間を経て自分を取り巻く世界は複雑になり、背負い込んだ責任や義務の狭間で身動きが取れぬ我が身。 しがらみばかりを考えて新しい一歩を踏み出せずにいる自分に気づかされたのである。

 ツーリングから帰った週明けには、新しいことを学ぶ楽しみや期待感はまだまだ枯れていない、ややこしいしがらみを解決するすべは長年身に着けてきたはずだと、己を信じて転がり出したことを思い出す。

 それから4年が経ち、還暦でキャリアをリセットしたり、思いもかけぬガン宣告をくらったり、何かと成り行き通りに行かぬ世の中ではあるが、創造したいもの体験したいものに向けて転がりつづけている自分がいる。 この歳になってやっと、現実をうけいれて最善と信じる判断を下してゆけば、自分らしく生きる態度を示せることが分かってきた。

 今更ながらではあるが、損得勘定で言えば理屈が通らないような選択でも、なぜその仕事を生業に選んだのか、なぜそれを学ぼうと思ったのか...そして最後に、小学校の卒業論文に書いた自分の夢にまで遡ってみると、それらの選択にちゃんとした文脈があることに気付いたのである。 後悔とまでは言わないが、モヤモヤとしたものがキレイさっぱり吹き飛んでしまった。

 時々は旧木沢小学校を借りて、時空を超えた思い出を疑似体験させてもらいたいものである。 帰省した時に、自分が通った小学校跡地のショッピングモールに出かけても、名古屋へ持ち帰る帰省土産のこと位しか思い浮かばないのである(笑)。 見学前は楽しく思い出を語っていた還暦親父達も、懐かしい木造校舎に入ると無口になる。 自分だけの大切な記憶に触れて自分が何者だったかを想いだす、遠山郷の旧木沢小学校はそんな場所かもしれない。


時空を超えた思い出に歩く廊下、磯野カツオ並みに立たされた晴れふら親父(笑)

廃校当時のまま保存される教室、昭和親父の断片的な記憶が蘇る


 さて、旧木沢小学校で心を満たしても腹は満たせぬのが悲しいところ(笑)。 腹をすかせた還暦親父達は、思い出話もそこそこに、本命だった村の茶屋に変わる食事処を探して国道152を南下する。 そしてたどり着いたのは、道の駅遠山郷の隣で営業する食楽工房「元家」である。 前述の通り遠山温泉郷「かぐらの湯」が閉鎖され、かつて入浴客であふれていた駐車場は閑散としている。 しかし意外にも昼時を過ぎた元家の店内は、閉店したかぐらの湯の食事処から流れてきたであろう食事客で溢れていた。

 往路の秘境ルートぶりは分かっているので、ここを逃したら昼飯抜きになると駆け込んだ店である。 腹を満たす定食でもあれば御の字とメニューを探すと...んっ、「山の恵みに感謝して、創業大正10年、ジビエ料理専門店」のうたい文句をみつける。 何とこの店は、閉店を惜しんでいた和田宿の山肉料理の老舗「星野屋」の新店舗であった。 期せずしてお気に入りの山肉料理にありつけることとなり、嬉しいやら、己のアンテナの低さが歯がゆいやら。


食楽工房「元家」、創業大正10年の山肉料理専門店「星野屋」の新店舗



 道の駅の利用客に合わせてだろうか、味噌カツやエビフライ等の定食、カレーにラーメンなどの一般的なメニューが充実しているが、遠山郷の狩猟文化を支えてきた山肉料理の老舗らしく、鹿、熊、猪などのメニューも健在である。 この店が本領を発揮するのは、地元の酒宴等に利用される夜の部であろうか。

 思いがけず遠山郷の山肉料理にありつけることになったバイク親父は、遠山郷定番の遠山ジンギスカン定食1,250円也をご注文することにした。 運ばれてきた滋味深いジンギスカンはプリップリの食感で臭みも無く、記憶に残る星野屋の味がしっかりと守られていることがうれしくなった。 ご飯と味噌汁はセルフサービスでお代わり自由、当然、白飯をよそうためにコロナ対策の手袋を何度も使い捨てることになる。 糖質ダイエット中の方々には悪魔の定食である(笑)。

 コロナ禍の挙句に遠山温泉郷の閉鎖、秘境の観光や飲食業にどのような影響があったのか、移動自粛解除後に訪れたツーリング親父が知る由も無いが、老舗のメニューにこだわりながらも、客層を増やしてやり繰りする手腕には感心させられる。 名古屋から宿泊ツーリングにするには近すぎるかもしれぬが、行程を工夫して夜の部にも参加してみたいところである。

食楽工房「元家」の遠山ジンギスカン定食、山肉料理老舗の味は健在


 白飯のお代わりで膨らんだ腹をライディングジャケットに収めると、遠山川沿いの国道418を平岡ダムまで下り、天竜川の崖っぷちをトレースする県道1の短いピッチの切り返しで標高を稼ぐ。 さらに阿南町集落を抜けて、国道151のダイナミックな駆け上がりを道の駅「信州新野千石平」まで折り返した。

 県道46で売木峠を越えた往路に対し復路では、国道418で平谷峠を越えるルートをたどることにした。 売木村を見下ろす九十九折れを平谷峠まで一気に駆け上がり、林間の快走ワインディングを走り継いで、交差する国道153で名古屋方面への帰路に着くことにした。

 山間をぬける緩やかな幹線国道、友人のSTREET BOBがヘビー級クルーザーの本領を発揮するルートである。 旅して何ぼのオートバイ、年寄りだから軽いバイク...っと決めつけるのは早計、そのスタイルに応じて相棒を選ぶのが正しいのであろう。 今回は、峠まみれのルートに付き合わせて申し訳なかったが、意外に軽快に切り返せるものだと感心する。 次回繋がって走るときは、もう少し峠指数をあげてもよさそうだ(笑)。

売木村を見下ろす国道418の九十九折れ、遠山郷の旅を終え平谷峠に駆け上がる


 さてさて、「村の茶屋」の臨時休業でお目当ての田舎蕎麦にはありつけなかったが、閉店したと思っていた山肉料理の老舗「星野屋」の新店舗「元家」で滋味深い遠山ジンギスに舌鼓を打つ旅となった。 冒頭で「臨機応変に旅を楽しむ」などと偉そうなことを書いたが、成り行きで見つけた食堂に駆け込んだというのが正直なところである(笑)。 ただし、走り出したからこそ出会える偶然が存在することは確か、旅の始まりに戻って「臨機応変に走り出して旅を楽しむ」というフレーズに置き換えておくことにしよう。

 そして、旧木沢小学校の懐かしい景色がナビゲートしてくれる思い出に続く道は、子供の頃に描いていた志になりかけの夢へとたどりつく。 そして、それを「昔は良かった」と現状否定に終わらせず、新たな一歩を踏み出す刺激にできる己を幸せに思う。 現状を受け入れて重ねてきた自分が最善だと思う判断は、子供の頃から変わらぬ志にたどり着くことにも気づくことが出来た。 今更ながら旅に出ると、悶々として専門書などを抱え込んでもたどり着けぬ気づきが得られるものだと感心する。 その効果は、道中のライディングで頭を真っ白にできるオートバイ旅、感受性を高めることができるオートバイ旅だからかもしれない。



ツーリング情報


そば処「村の茶屋」  飯田市上村程野149-2 (電話)0260-36-2888

食楽工房「元家」  長野県飯田市南信濃和田456-1 (電話)0260-34-2501



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