2025/6/2 新緑の美濃飛騨周遊ツーリング(せせらぎ街道、飛騨農園街道、鈴蘭高原、二ッ森展望ライン、恵那みかげの道、大安食堂)


 歯止めが効かぬ地球温暖化の影響で、最近は毎年のように観測史上初の猛暑を更新する夏が続いている。 さらに春秋とばしの夏冬二極化が進み、快適にツーリングを楽しめる季節が本当に短くなってしまった...などと、懐古趣味の昭和親父が悔やんでいてもしょうがない。 ここはひとつ前向きに、梅雨入り、梅雨明け、そして本格的な夏が訪れる前に、爽やかな新緑の旅先を探すことにした。

 そして、マンネリ化する己の旅企画に限界を感じる晴れふら親父は、六十にして耳順うとばかりに、最近ツーリング情報誌にはまっているH/D 乗りを誘いお薦めの旅先を聞いてみることにした。 そしてリターン・ライダーの友人から返ってきたのは、せせらぎ街道を走ってみたい!と初々しい答えであった(笑)。

 あまりに王道の旅先に意表をつかれるが、マンネリ志向が一周してマンネリに陥る己を反省する。 そして、定番のツーリング・ルートを新鮮に楽しもうと頭を切り替え、せせらぎ街道を軸にルーティングを試みた。 しかし、その結果...搾り出したルートは以前のツーリングと殆ど同じだったというのが落ちである(笑)。

 さて、その代り映えしないツーリングルートとは...東海北陸道郡上八幡ICを起点に、まずはH/D乗りの要望通りにせせらぎ街道を飛騨高山までクルージング、そして乗鞍岳と御嶽山を望む飛騨農園街道、鈴蘭高原の峠道で多少の汗を掻いてもらい(笑)、国道41を南下した下呂の大安食堂で昼食をとることにした。

 その後国道257で東美濃へと南下し、二ッ森展望ライン、恵那みかげの道等を経由して中央道恵那ICから帰路に着くルートである。 雨天続きの週末を避けた平日のツーリングゆえ、東海北陸道と中央道をつなぎ美濃・飛騨・東濃を周遊できる、二輪車ETC向けの定額プランを利用しての旅である。 

 さてさて、以前のツーリングと代り映えしないとは言ったが、オートバイは人生と同じくバランスを楽しむ乗り物である。 それゆえ時が経てば、ツーリングやライディングさらには人生を楽しむための勘所や、乗り手の気の持ちようは大きく違ってくる。 それを残し伝えたくて、時代遅れのテキスト・リッチのレポートにこだわりつづける昭和親父である。

 はたして今回の旅で見える景色は、どんな新しい発見や気付きがあったのか? 相変わらずくどいレポートで振り返ってみたいと思う(笑)。 


せせらぎ街道(県道73)、エンジンを止めて馬瀬川のせせらぎを聴く



ルート概要


東海北陸道郡上八幡IC-国156→城南町東-国472(せせらぎ街道)道の駅明宝国472(せせらぎ街道)→道の駅 パスカル清見-国257(せせらぎ街道)県73(せせらぎ街道)→三日町-国158→県460(高山陣屋)-国158→坊方-飛騨農園街道美女高原公園-飛騨ぶり街道→甲-国361→秋神貯水池(水洞橋)-県435→鈴蘭高原口-市道→鈴蘭高原展望台、鈴蘭峠-県441-県437→小坂町-県88→小坂温泉郷南口-国41→大安食堂-国41→帯雲橋-国257→道の駅 花街道付知→田瀬-県3→下野口-二ッ森展望ライン→野尻-国257→高山-県408,県72→蛭川運動公園-恵那みかげの道→中田集会所-県72(東雲大橋)→中央道恵那IC



ツーリングレポート



 名古屋エリアから高速道路を乗り継ぎ、早朝の東海北陸道瓢ヶ岳(ふくべがたけ)PAでトイレ休憩を済ませると、東海北陸道で奥美濃・飛騨・東美濃周遊ツーリングの起点となる郡上八幡ICを目指し走り続ける

 冒頭で触れた通り、ETC二輪車向けの定額プラン、中央道・東海北陸道コース二日間(2000円)を利用した高速道路移動である。 片道2000円也を越える区間の利用であれば、単日往復するだけでも平日料金の半額以下になる見込みである。

 そして今回は、H/D STREET BOBを駆る友人との二人旅、まずは北米大陸仕様の元祖クルーザーに高速道路移動の先導をお願いする...っが、いきなり感じる挙動不審(笑)。

 どうやら、排気量1,800ccのマッチョ・クルーザーにはCC(クルーズ・コントロール)が装備されているらしく、直ぐに先行車が詰まる日本の交通環境では、違和感なく使いこなすのが難しいようである。 とは言っても、長丁場の高速道路移動でアクセル保持が煩わしいのは事実、安価で取り外し容易なスロットル・アシストぐらいは試してみようかとおもう。

早朝の東海北陸道瓢ヶ岳PA、旅の起点郡上八幡ICまでもう少し


 そして、東海北陸道瓢ヶ岳PAから走り出すと程なく、旅の起点となる郡上八幡ICにたどり着いた。 その後、長良川沿いの国道156に駆け降りて郡上市街を抜けると、いよいよお目当てのせせらぎ街道(国道472)へと駆け出した。

 今回は、国道472、国道257、県道73からなるせせらぎ街道を、全行程走ってもらいたいと起点となる郡上市街からの走り出しとした。 正直なところ街中を抜ける走り出しは退屈なだけなので、こもれびロード(県道329)や県道86経由で明宝から合流するルートや、国道257経由で道の駅 パスカル清見から合流するルートの方がライディングを楽しめるかもしれない。

 兎にも角にも、せせらぎ街道に走り出して街中を抜けると、長良川に注ぐ吉田川沿いを溯るにつれ里山に点在する集落もまばらになってくる。 そしてたどりついた道の駅 明宝で、これから始まる本格的な林間ワインディングに備えて休憩を取ることにした。

 早朝の走り出し故に、事前のネット検索で見つけた早朝営業のおにぎり屋を当てにしての休憩だったのだが、現場に来てみると昼近くからの営業時間変更に肩を落とすことになった(泣)。 一次情報が二次、三次...と変わりながら独り歩きする時代ゆえ、多面的な検索が必要なのは旅の食堂探しばかりではあるまい。

 さたさて、アナログ親父の調査不足を悔やんでも腹は満たされず、早朝営業していた喫茶店のごく普通のモーニングでライディングに備えることにした。 さらに、名宝レディースのトマトケチャップを奥美濃土産に購入して、いよいよ新緑に彩られたせせらぎ街道へと走り出すことにした。 


道の駅明宝、宇治川の戦で先陣争いを制した梶原景季と愛馬磨墨の銅像


農村女性の起業が話題になった名宝レディース、ヒット商品の名宝トマトケチャップ


 今更ながらではあるが、せせらぎ街道は郡上八幡と飛騨高山を南北に結ぶ、全長約65kmの国道472、国道257、県道73の総称である。

 長良川に注ぐ吉田川、飛騨川を経て木曽川に注ぐ馬瀬川、そして神通川に注ぐ川上川の清流沿って走ることから、せせらぎ街道の愛称で呼ばれるようになったようである。 太平洋や日本海に流れ分かれる分水嶺を意識しながら走ると、単なる峠越えも随分とスケールが大きな旅となる。

 また、西ウレ峠(標高1,113m)を最高地点として約700mの標高差があり、里山のヤマモミジ・ブナ・カエデ・ミズナラなどの広葉樹から、西ウレ峠付近の白樺やカラマツまで、標高に応じた新緑や紅葉のグラデーションを楽しめる。 今回の旅はちょうど5月中旬~6月中旬の新緑の季節の真っ只中、そして10月中旬~11月上旬は街道が最も盛り上がる紅葉の季節となる。

 そして個人的に一番のお気に入りなのは、国道257から県道73へと走り継いだ馬瀬川沿いの林間区間である。 街道の直ぐ脇に馬瀬川の川面があり、文字通りせせらぎを感じながら走れる。 また、ウレ峠に向けて広葉樹に白樺やカラマツが混じりはじめ、複雑な色合いの新緑や紅葉も楽しむことが出来るだろう。

 

雰囲気満点の県道73林間区間、馬瀬川のせせらぎを感じながら走る


 そして、西ウレ峠を越えて馬瀬川から川上川への分水嶺を越えると、カラマツ林に囲まれたダイナミックなダウンヒルが始まる。 さらに、川上川の流れにそって県道73を飛騨高山方面に下って行くと、郡上八幡から上りとは逆に徐々に里山の景色が広がって行き、高山市街へとつづく国道158に突き当たりせせらぎ街道は終わりとなる。


せせらぎ街道最高地点のウレ峠(標高1,113m)、カラマツ林のダイナミックな下り


 せせらぎ街道(県道73)が国道158に突き当たると高山市街へと向かい、ガソリンが比較的安価な街中のGSで給油を済ませた。 その後、高山観光のランドマーク高山陣屋を経由して多少の観光気分を味わい(笑)、外国人観光客で混雑する高山市街をそのまま通り貫けた。

 かつて、陣屋前朝市関係者で賑わっていたばあちゃんの食堂は閉店し、いまでもその店の痕跡を見るとなぜか胸が苦しくなる。 そして、横文字の看板やメニューが並ぶ店に停まる気にもなれず、飛騨高山は相棒のタンクにガソリンを注ぎ通り過ぎるだけの街になった。 

 さて、国道158で高山市街を抜けて乗鞍方面へ走り続けると、坊方バス停の交差点から始まる広域農道飛騨農園街道へと駆け上がった。 飛騨農園街道は、国道158から美女高原公園まで南下して国道361に貫けるワインディング。 さらに2021年には、国道361の道の駅ひだ朝日村脇からさらに南下して、国道41新大坊橋に貫ける南側区間も開通している。

 今回は国道158から国道361に貫ける北側区間を南下し、国道361から鈴蘭高原を越えて国道41に貫ける算段である。

 実際に飛騨農園街道に駆け出すと、その愛称通りに点在する農園を繋ぎながら、アップダウンを伴うトリッキーなワインディングが連続している。 山を切り開いた法面に挟まれることが多く見通しは開けないが、ピンポイントで冠雪した白山連峰や飛騨山脈乗鞍岳の眺望に出会える。

 対向二車線で十分な幅員もあり通行車両も皆無だったが、農作業や山肌から流れ出た泥砂にも注意しながら、ロバストなライディングを心掛けたいところである。


飛騨農園街道のワインディング、行く手に冠雪残る飛騨山脈乗鞍岳を望む


 飛騨農園街道を美女高原まで走りきると、たどり着いた美女高原公園でトイレ休憩を済ませ、国道361で鈴蘭高原を目指して走り出した。 その後しばらくは、緩やかな国道361を飛騨川支流の秋神川沿いへと走り続け、秋神貯水池に差し掛かったところで水洞橋を渡り、鈴蘭高原方面へ向かう県道435へと舵を切った。

 そして程なく、県道435が鈴蘭高原口バス停にさしかかると、鈴蘭高原の案内板に従い鈴蘭峠に向けての駆け上がりに分岐する。 

 さてさて、標高約1,300mの鈴蘭峠に向けて一気に駆け上がる峠道では、タイトで落差のある切り返しがこれでもかと連続する。 W800streetの特徴的なアップハンドルで車体を押さえ込みながら、リーンアウト気味のリア荷重で思いっ切りアクセルを開け続けて、時を忘れるうちに目的の鈴蘭高原展望台にたどり着いた。

 鈴蘭高原展望台にたどり着くと一気に展望が開け、足元から徐々に霞んで行く新緑のグラデーションの先に、冠雪が残る乗鞍岳(3,026m)と御嶽山(3,067m)の稜線が迎えてくれる。 W800streetのエンジンを止めて静寂に包まれると、その絶景に自分も溶け込んでいくような不思議な感覚を覚える。

 程なくH/D STREET BOBを駆る友人も到着し、お互い言葉少なくその眺望を噛みしめることとなった。 左手北側に乗鞍岳、右手南側に御嶽山を一度に見渡すこの絶景には、何度訪れても言葉を失う。 車重300㎏を越えるクルーザーにはちとタフな峠道かもしれぬが、この絶景にたどり着ければ帳消しにしてもらえるだろう。

鈴蘭高原展望台から冠雪が残る飛騨山脈乗鞍岳((3,026m))の眺め


鈴蘭高原足元の新緑が霞む先に望む御嶽山(3,067m)


 鈴蘭高原展望台からの絶景にしばしの時を忘れると、展望台から程近い鈴蘭峠を越えて、飛騨川沿いの国道41にむけて小黒川沿いの県道441を下って行った。 落差のあるコーナーをうねりながら下って行くスクリューダウンヒル、この日一番の絶景の後にはこの日一番のテクニカルワインディングとなった。

 かつてここをSSで訪れた時には、強力な足回りとブレーキによる前後荷重移動や、高出力エンジンのアクセル・コントロールに四苦八苦した覚えがある。 破綻したら間違いなく終わるヒリヒリした感じが、ライディングの醍醐味であり楽しさでもあった。

 翻って、走らない・曲がらない・止まらないネオ・クラッシックだと、十分に楽しめないのかと問われればそうでも無い。 絶対速度は兎も角、破綻しても何とかできそうな余裕と共に、全開・全開・全開で走れる楽しさは別物であろう(笑)。 

 その後さらに小坂川沿いの県道437へと走り継ぐと、ほどなく飛騨小坂で国道41に合流し飛騨川の流れに沿って東美濃に向けて下って行った。

鈴蘭高原から小黒川沿いのスパイラルダウンヒルに駆け降りる(2022年5月撮影)


 飛騨農園街道から鈴蘭高原へとタフな峠越えが続いたせいか、国道41を東美濃に向けて走り出すころにはお腹もすいてきた。 そして、国道41に走り出すと程なく、昼食休憩をとる予定の大衆食堂「大安食堂」にたどり着いた。

 大安食堂は、これまで何度か店前を通りすぎる度に、昭和親父の琴線に触れる大衆食堂の店構えが気になっていた店である。 立ち寄るタイミングを逸しているうちに、色々なメディアに取り上げられる有名店になったようだが、気取らぬ雰囲気やリーズナブルな価格帯もブレない姿勢に好感が持てる。


念願だった大衆食堂「大安食堂」、ツーリングの行程を調整し昼飯に訪れる


 店内に入るとタイミングよく席が空き、ガスコンロがセットされたテーブル席に案内され、早速二人前のとんちゃん定食880円也とうどんトッピング120円也を注文した。

 名古屋人がとんちゃんと聞くと豚ホルモンを思い浮かべるかもしれないが、この店のとんちゃんは初代女将の「大坪安美」さんが考案した、独自のタレに付け込んだ豚バラ肉焼きのことらしい。 名物メニューの由縁は兎も角、「大坪安美」さんが女将だったから「大安食堂」だったのね、っと妙に納得する(笑)。

 さて、テーブルでH/D乗りと帰還ルートなど話し合っていると、鉄盆に盛られた調理済みのとんちゃん焼きがご飯や味噌汁と共に配膳された。 ジュウジュウとガスコンロで焼かれるとんちゃん焼きは味噌ベースの濃厚な味付け、ご飯おかわり自由のサービスが必要なわけもうなづける。

 還暦親父二人がかりでとんちゃん焼きを平らげるも、おかわり自由の白飯にはたどりつけぬまま、大満足の食堂飯を終えることとなった。


大安食堂名物とんちゃん焼き、味噌ベースの濃厚な豚バラ焼肉にご飯がススム


 大安食堂を後にすると、国道41から国道257へと走り継ぎ、旅を締めくくる東美濃方面へと走り続ける...っと、ここからは睡魔との戦い。 とんちゃん焼の消化のため胃袋に血液をうばわれた親父の脳は、単調な移動で意識を失いそうになる。

 たまらず、道の駅 花街道つけちに立ち寄り冷たい缶コーヒーで休憩すると、眠気覚ましに国道257と並行する二ッ森展望ラインに迂回することにした。 実際に二ッ森展望ラインに駆け出すと、遠くに二ッ森山を望みながら早苗田を駆け抜ける農道は、眠気覚ましのために走るにはもったいない快走路であった。

 その後、二ッ森展望ラインから国道257に復帰すると、さらに東美濃のワインディング(県道408、恵那みかげの道、県道72)でクールダウンして、中央道恵那ICから名古屋方面へと帰路に着いた。


二ッ森山を望みながら早苗田を駆け抜ける二ッ森展望ライン


 さて、新緑の季節に走り出そうと友人に声をかけ、そのH/D乗りの「せせらぎ街道を走ってみたい」の一言から始まった今回の旅。 己のマンネリ企画に刺激をもらおうと友人のネタを貰いに行ったわけだが、結果的には以前のツーリングと代り映えしない行程となった(笑)。

 しかし実際に時を経て同様のルートを走ってみると、なるほど新しい発見や気付きに溢れているものである。 特に今回は、前回乗っていたSSからネオ・クラッシックモデルに乗り換えての峠道、ライディングの楽しみかたや課題等てんこ盛りの気づきを貰ったような気がする。

 なんせ物忘れがひどい年寄りである。 どちらが良い悪いと単視眼的な思考に陥らず、老いてなお己のライディングの幅を広げるために、時代遅れの文字だらけのレポートが役立つと信じたい。 手前味噌な振り返りは兎も角、フルサイズのH/Dでタフな峠道に連れ込まれた友人には申し訳ない限りである、せせらぎ街道をゆったりとアメリカン・クルージングしたかっただけだろうに(笑)



ツーリング情報


道の駅 明宝  岐阜県郡上市明宝1015 (電話)0575-87-2395


大安食堂  岐阜県下呂市萩原町上呂876 (電話)0576-54-1456



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