2025/5/12 知多広域農道折り返し常滑やきもの散歩道、呑兵衛親父半日旅(知多満作道、味覚の道、ふるさとロード、すいせんロード、澤田酒造(白老)、競艇ラーメン、めんたいパーク)


 新緑が眩しいツーリングの季節にもかかわらず、週末になると雨模様となる嫌がらせのような天気が続いている。 ならば同じ境遇の友人と二人、土日の雨予報をやり過ごした月曜に休暇を取り、美濃~飛騨~木曽へと国跨ぎの峠を越える旅へと走り出すことにした...っが、そんな親父達の思惑を見透かしたように、週末の雨雲が週明けまで居座ることになり、標高1000mを越える峠越えツーリングを断念する結果となってしまった(泣)。

 そしてツーリングを断念した当日、予報通りに路面を濡らす早朝の雨雲を見上げながら、雨上がりを待って近場のツーリングに走り出す機会を伺う親父であった。

 その目論見通り、雨が上がり路面が乾きだした頃合いを見計らって、佐布里池を起点に知多広域農道を折り返すランチツーリングに走り出すことにした。 冬場の旅先として重宝するルートだが、知多半島を彩る新緑のライディングも良さげである。

 また復路では、常滑の地酒白老の酒蔵澤田酒造に立ち寄り、夏向きの純米酒を土産に仕入れることにした。 そして常滑市街で昼食をとり、常滑焼の窯元や販売店が並ぶ”やきもの散歩道”に立ち寄り、白老を美味しくいただけそうな古常滑を探し旅を終えることにした。

 「晴れたらふらっと」のコンセプト通り、急に走り出した半日旅であったが、新緑のライディングだけでなく美味い地酒とそれをたしなむ器まで、呑兵衛バイク親父にとっては何とも充実したツーリングとなった。


1848年(嘉永元年)創業の澤田酒造、古式伝承にこだわる白老の酒蔵



ルート概要


佐布里緑と花のふれあい公園(佐布里池)→深田脇-知多満作道味覚の道→常滑大谷工業団地-市道に左折-南知多道路美浜PA側道-県273→東平井-県274(ジョイフルファーム鵜の池、過ぎて右折)-ふるさとロード-県276-樫木-すいせんロード(突き当りを右折)→小佐漁港-国247→片名漁港-すいせんロード(往路に折り返し)-ふるさとロード味覚の道→桧原-県269→古場-県252→沢田酒造(白老)-県252→競艇ラーメン(うをとよ)常滑市陶磁器会館(やきもの散歩道)かねふくめんたいパークりんくう緑地展望広場




ツーリングレポート


 幸いにも早朝の雨は直ぐに上がり路面も乾きだした、これならば思惑通りに昼飯を挟んだ半日旅の行程をたどれそうである。 そして、旅の起点とした知多市佐布里池にたどりつくと、新緑の梅林を縫う公園周辺のワインディングを軽く流し、いよいよ知多半島中央の丘陵地を半島先端まで南下する知多広域農道へと走り出した。

 これまで、冬場でも走れるツーリングルートとして紹介することが多かったが、他の旅先同様に梅雨入りを控えた新緑の季節がベスト・シーズンであることに変わりない。 雨による長距離ツーリングの断念で、期せずしてその機会を得ることになった次第である。


、知多広域農道北側の起点、佐布里緑と花のふれあい公園(佐布里池)


 さてさて、佐布里池から走り出すと、知多満作道(知多市)、味覚の道(常滑市)、ふるさとロード(美浜町)、すいせんロード(南知多町)と、市町毎に通称を変えながら知多半島先端まで続く知多広域農道を繋いでいった。

 そして実際に走り出すと、思惑通りに新緑に覆われた農道を満喫する。 もとより、緩やかでどれだけでも速度が乗る農道ゆえ、雨雲にもらった棚ボタライディングをまったりと楽しむことにした。 W800 streetの空冷二気筒360°クランクエンジンの、2000~3000rpmからの味のある立ち上がりが何とも心地よい。

 ちなみに、2023年3月にすいせんロードの分断区間が繋がり、味覚の道とふるさとロードを南知多道路美浜PA側道で繋ぐ区間さえ気を付ければ、ほぼ道なりに農道を走り継ぐことがが出来るだろう。

味覚の道から南知多道路美浜PA裏を貫け、新緑が眩しいふるさとロードへ


 そして最後に、南知多クリーンセンターを過ぎてすいせんロードに駆け上がると、2023年に開通した奥田内福寺南知多線(おくだうつふくじみなみちたせん)区間を繋ぎ、知多半島先端の高台まで一気に駆け抜けた。


2003年に全線開通したすいせんロード、時折眼下に三河湾の眺望が広がる


 すいせんロードは突き当りを左手に舵を切り、片名漁港へと駆け降りて終わりとなる。 今回は右手の小佐漁港方面へと駆け降りて、この日一番の眺めとなる、三河湾に浮かぶ日間賀島と篠島越しに渥美半島の海岸線を望んだ。 知多半島中央の丘陵地を走る知多広域農道だが、伊勢湾と三河湾の海岸線を望める場所は限られるため、農道の終点にたどり着いて臨むこの絶景にはいつも感動させられる。

三河湾越しに渥美半島を望みながら、すいせんロードから小佐漁港へと駆け降りる


 今回は、すいせんロードから小佐漁港側に駆け降りると、知多半島先端の海岸線をトレースする国道247を反時計回りに走り出した。 高台から見下ろした三河湾に浮かぶ日間賀島や篠島、そして対岸の渥美半島の海岸線を堤防越しに望みながら、師崎港への分岐を過ぎて片名漁港にたどりついた。

 その道中、丸誠、魚鶴、朝日屋など、師崎の海鮮定食を供する馴染みの店が並ぶが、今回は半日旅に詰め込んだ後の行程を考えて先を急ぐことにした。 そして、片名漁港脇の国道247からすいせんロードに駆け上がると、そのまま常滑の澤田酒造を目指して往路へと折り返すことにした。  


半島先端の国道247を反時計回りに走り、片名漁港から知多広域農道に折り返す


 その後、すいせんロード、ふるさとロード、そして味覚の道へ往路を逆にたどって行くと、桧原交差点から県道269に分岐し伊勢湾岸沿にむけて下って行った。 そして、漁港を繋ぐ旧街道県道252に突き当たって常滑方面に舵を切ると、程なく常滑の地酒白老を造る酒蔵澤田酒造にたどり着いた。


1848年(嘉永元年)創業の澤田酒造に立ち寄り夏限定の白老を仕入れる


 1848年(嘉永元年)創業の澤田酒造は、知多半島丘陵部(新水谷)の伏流水を使用し、和釜と木甑による蒸し、麹蓋による麹造りなど、昔ながらの道具と手作業にこだわり続ける酒蔵である。

 余談だが、晴れふら親父が大学卒業後、九州福岡から愛知に就職した折、地元愛知を知ろうと地酒を探したどり着いたのが澤田酒造の「白老」だった。 濃醇でありながら雑味の無い味わいは唯一無二、少量生産しかできぬ古式伝承の製法とともに受け継がれる、「料理を引き立てる食に寄り添ったお酒」のコンセプトにも共感を覚えることとなった。

 それ以来、晴れふら親父が還暦を越え定年を間近に控えた現在まで、知多半島で仕入れた地魚を捌いた傍らには、必ず常滑の地酒白老が添えられるようになった。


師崎赤羽商店で仕入れたカワハギを捌く、傍らには食中酒の定番千寿白老(2016年12月撮影)


 そして、2020年の11月に澤田酒造の酒造りの根幹である麹室が全焼し、酒屋に行けば白老が手に入る日常が当たり前でないことに気付かされることとなった。 出火原因は、麹室を暖める電熱線のショートだったらしい。

 驚かされたのは地元愛知や三重の酒蔵、白老の愛好家の支援が広がり、その年の仕込みを絶やさなかったことである。 競い合ってきた同業者が、レシピを交換して麹づくりを引き受けるなど、他の業界では考えられないことかもしれぬ。

 正直なところ、麹づくりを他の酒蔵に託したときの白老は、アルコール感の強い別物の酒になってしまったと落ち込んだ。 裏を返せば、白老の雑味が少なく濃醇な味わいが、手間のかかる麴蓋を使った総破精(そうはぜ)造りや、枯らしの行程の効果なのかもしれない。

 そして、2021年9月には新しい麹室が完成し、10月からは本格的に古式伝承の仕込みが再開されている。


酒蔵事務所脇に設けられた直売所、177年の歴史を感じるたたずまい


 さて、小ぶりの杉玉がつるされた直売所に入り購入したのは、「白老 夏の純米吟醸 うすにごり生酒」(720ml)@1,948円也、この冬に仕込んだ純米吟醸のしぼりたてを、おりを絡めて瓶詰めした季節限定酒である。 燗向きの熟成酒「豊醸」を新酒で楽しめるように造った酒で、同じスペックで濃い旨味の酒が軽快な味わいになるらしい。

 キンキンに冷やしたグラスでお召し上がりください...と勧められるが、ならばと常滑焼の窯元や販売店がならぶ「やきもの散歩道」に立ち寄り、古常滑のぐい飲みを仕入れてグラスとの味わいの違いを確かめようと思い立つ呑兵衛親父である。 器の違いによっての変わる味わいを楽しめるのも、雑味が少なく繊細な白老ゆえの趣向なのである。


「白老 夏の純米吟醸 うすにごり生酒」を購入、試飲できぬバイク旅が恨めしい(泣)


  購入した夏限定の白老を保冷剤とともにバック・パックにしまい込むと、県道252に復帰して常滑市街へ向けて走り出した。 W800 streetの小気味よい排気音を漁港を繋ぐ旧街道に響かせながら、広域農道とはまた違った旅感のあるライディングを満喫する。

 そして道なりに名鉄空港線常滑駅東口に差し掛かると、昼食をとる”競艇ラーメン(うをとよ)”にたどり着いた。 混雑する昼飯時をやりすごした遅い到着、思惑通り席待ちすることなくテーブル席に案内され、看板メニューの競艇らーめん@800円也を注文した。

 常滑ボート場内で営業していた店が場外に出店した人気ラーメン店、店内の大型のモニターにはレース状況が流れ、競艇選手のプロフィール等のポスターが壁に貼られている。 愛称だった競艇ラーメンが、そのまま現在の屋号になった競艇一色の店内なのである。  


名鉄常滑駅東口、愛称がそのまま店名になった競艇ラーメン(うをとよ)


 さて、テーブル席で競艇ラーメンを注文すると「ボート一つ」の声が厨房に届き、程なく競艇ボートを模した細長い器に盛られたラーメンとパイロンを模した梅おにぎりが運ばれてきた。

 そして、肝心の競艇ラーメンのお味は...”常滑ブラック”と称される漆黒のたまり醤油スープは、見かけに反して鶏ガラと鰹だしが効いたまろやかなお味、硬めに茹でられた食感の良い細打ちちぢれ麺、そして香ばしく食べ応えのある焼き豚が添えられた満足の一杯であった。 それが、パイロンに見えるかどうかは微妙だが(笑)、さっぱりとした口直しにもなる梅おにぎりとの相性も抜群である。

常滑ブラックのスープは意外にまろやか、硬めのちぢれ麺と香ばしいチャーシュー


 常滑ブラックのご当地ラーメンで腹ごしらえを済ませると、競艇ラーメンから程近い常滑市陶磁器会館に移動した。 陶磁器会館駐車場には300円/日で二輪車を駐車できるので、ツーリングの道中にやきもの散歩道に立ち寄り、窯元直営店や常滑焼のセレクトショップを巡る拠点として重宝する。 すでにお気に入りの路面店が決まっているなら、二輪車を直接乗り付けることも可能かもしれない。


やきもの散歩道の起点常滑市陶磁器会館、二輪車の駐車料金300円/日也


 ところで、現在は朱泥急須が有名な常滑焼だが、その歴史には土管製造が大きくかかわっていたらしい。

 丈夫で大量生産も可能な常滑焼の土管が、1874年(明治7年)に鉄道の下に埋設される上下水道土管に採用されて以来、鉄道網の拡張と上下水道の整備とともにその生産量が増えていった。 増産のために薪窯は効率の良い石炭窯へと進化し、大正から昭和30年代にかけては3~5割の全国シェアを誇っていたのである。

 その後、昭和40年代になるとコンクリート管が普及し、さらに昭和50年には塩素ガスの排出規制が始まり、ついには最盛期に400本を誇った常滑の煙突は消えていった。 現在のやきもの散歩道から見える朽ちかけた煙突や、散歩道を飾る土管のモニュメントは、その繁栄の痕跡なのである。

 この日はお気に入りのセレクトショップに直行し、澤田酒造で仕入れた「白老 夏の純米吟醸 うすにごり生酒」をいただく古常滑のぐい呑みを仕入れることにした。 常滑焼の販売店以外にも、お洒落な古民家カフェなどが営業しているが、リアル昭和親父の趣向は朽ちた煙突の方に向かうのであった。


今はもう使われなくなった煙突、日本の成長を支えた常滑焼の名残


明治初期の土管と昭和初期の焼酎便が壁を埋める土管坂


明治20年から昭和49年まで使われた陶榮窯(国指定重要有形民俗文化財)


 古常滑のぐい呑みを見つけてやきもの散歩道を後にすると、中部国際空港(セントレア)対岸の中部臨空都市に移動し、屋根に乗った巨大な”たらぴよ”が見下ろす、かねふくめんたいパークとこなめに立ち寄った。 白老、そして古常滑を仕入れたのち、故郷を引きずる九州親父の頭に浮かんだ、辛子明太子をあてに仕入れて帰路に着くことにしたのである。

 工場直売所限定の家庭用辛子明太子がリーズナブルでおすすめ、急速冷凍パックならば出来立ての鮮度を長く楽しめる。 「若い頃からの~偏食が祟り~♪ 尿酸値が~異常に高い~♪」などと、六角精児バンドの「お父さんが嘘をついた」の歌詞を口ずさみながら、自制心との葛藤に折り合いが付いた量だけ解凍し、新鮮な辛子明太子を味わうのである(笑)。


めんたいパークとこなめで、九州親父のソウルウード辛子明太子を仕入れる


 さて、めんたいパークの買出しを済ませ、巨大な”たらぴよ”に見送られながら県道522に駆け出すと、対岸にセントレアを臨むりんくう緑地展望公園まで走り、知多広域農道を折り返す半日旅のレポートをしめくくることにした。

 早朝からの雨で、峠巡りの長旅を断念した近場の行程だったが、新緑の知多広域農道に始まり、常滑の地酒や古常滑の土産などなど、親父の鬱憤を解消するに十分な盛りだくさんの半日旅となった。

りんくう緑地展望広場からセントレアを臨み知多広域農道の半日旅を終える


あとがき


 後日、ツーリングで購入した「白老 夏の純米吟醸 うすにごり生酒」をよく冷やし、蔵元の勧め通りにキンキンに冷やしたグラスでいただくと、なるほど、夏向きの限定酒を謳うにふさわしい軽い発泡感も感じる軽快な味わいであった。

 同じスペックの白老定番の熟成酒「豊醸」の濃い旨味が、熟成を抑えた新酒になるとこんな軽快な味わいになるのかと、呑兵衛むけの蘊蓄ネタが増えてご満悦の親父である(笑)。

 そしてやきもの散歩道で購入した古常滑のぐい呑みでいただいてみると...あら不思議、注いで一分、二分と時間が経つにつれ、さらに雑味が消えてまろやかな口当たりに変わって行く。 白老の繊細な味わいゆえの結果に、これも同じ地元で伝承されてきた酒と器の相性の良さかと、さらに呑兵衛向けの蘊蓄ネタを追加しご満悦の親父であった(笑)。 

お気に入りの古常滑で「白老 夏の純米吟醸 うすにごり生酒」をいただく



ツーリング情報


佐布里花と緑のふれあい公園  愛知県知多市佐布里台3丁目101 (電話) 0562-54-2911


澤田酒造  愛知県常滑市古場町4丁目10番地 (電話)0569-35-4003


競艇ラーメン(うをとよ)  愛知県常滑市鯉江本町6-37 (電話)0569-35-2863


やきもの散歩道(常滑市陶磁器会館)  愛知県常滑市栄町3-8(電話)0569-35-2033


めんたいパークとこなめ  愛知県常滑市りんくう町1-25-4 (電話)0569-35-9900



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