2024/05/25 オレンジロードたどり青もみじの遠州寺社巡り(遠江国一宮 小國神社、橘谷山 大洞院、笊蕎麦 百々や)



 本格的な夏を控えた新緑の季節、青もみじに覆われた遠州の寺社をめぐる旅に出た。 そして今回訪れたのは、遠江国一宮小國神社と橘谷山大洞院、いずれも秋には多くの参拝客で賑わう紅葉の名所である。

 しかしそんな紅葉の名所も、新緑の季節の賑わいはそれほどでも無く、青もみじに彩られた寺社にもゆっくりと参拝することが出来る。 先日のツーリングでも青もみじに覆われた法多山尊永寺に参拝し、その瑞々しい青もみじの風景に癒されることとなった。

 そんな、遠州ツーリングに味をしめた晴れふら親父は、国道23豊橋東バイパスを経由し、湖西のオレンジロード、浜名湖レークサイドウエイ、奥浜オレンジロード、さらには県道68へワインディングを走り継ぎ、遠州の小京都と呼ばれる森町の寺社を巡ることにした。

 その行程から分かる通り今回は、旅の前半に湖西から奥浜名湖、そして引佐へと続くワインディングを組み入れてみた。 前回の旅では叶わなかった峠道をおりまぜた初夏のツーリングプランが出来上がった次第である。

 そして、ワインディングと寺社巡りの間には天浜線遠江一宮駅に立ち寄り、国登録有形文化財に指定された駅舎で営業する笊蕎麦「百々や」で、丁寧な仕込みゆえに数量も限られる笊蕎麦をいただくつもりである。

 さてさて、浜名湖から引佐へ続く新緑のワインディング、青もみじに彩られた歴史ある寺社参り、そしてこだわりの笊蕎麦と、シンプルに初夏の旅を楽しめる一日になりそうだ。 


遠州国一之宮小國神社、境内を流れる宮川を覆う見事な青もみじ



ルート概要


国23(名四国道,知立バイパス,岡崎バイパス,蒲郡バイパス)→蒲郡西IC-国247→豊岡平田門-県368(国坂峠)-県373-県31→豊川為当IC-国23(豊橋バイパス,豊橋東バイパス)→豊橋東IC-国1→里山東-県173-東笠子通り-県322→岡崎小東-県330→ミニストップ湖西岡崎店-(湖西)オレンジロード→二輪通行止め-市道→知波田小前(バス停)-国301→瀬戸トンネル南-県310(新瀬戸橋)-浜名湖レークサイドウエイ→東名三ケ日IC-県308-奥浜名オレンジロード→国民宿舎奥浜名湖-奥浜名オレンジロード→奥山診療所-県303-県68→新東名浜松いなさIC-国257→JA伊平支店-県68→新東名側道(渡る前に左折)-県296-市道(浜松カントリークラブ北側)→坂之脇橋-県9→鹿島橋-国362→双竜橋-国152→天竜二俣駅-国152→飛龍大橋北-県40→遠江一之宮駅(笊蕎麦百々や)-県40→谷崎-県280→遠江国一之宮小國神社-市道→大洞院(森の石松の墓)-市道-中遠広域農道→新東名遠州森町スマートIC



ツーリングレポート


 尾張名古屋から西三河、そして東三河へと三河湾沿いを走る国道23号線バイパス、信号停止に煩わされることなく無料通行できる高架バイパスは、尾張から三河を経由して遠州浜松方面へ走るツーリングに欠かせぬルートである。

 そして今回は、その国道23号線豊橋東バイパスを終点の豊橋東インターまで走りきり、浜名湖西岸の山間を北上するオレンジロードへと駆け出した。 路側の木々に遮られて浜名湖の眺望は開けぬが、混雑する湖西市街を迂回できる峠ルートはお勧めである。


湖西市街をバイパスするオレンジロード、新緑のワインディングに駆け出す


 三ヶ日市街までワインディングが続く湖西のオレンジロードだが、残念ながら天浜線知波田駅~尾奈駅と並行する区間には、自動二輪通行止めの交通規制が敷かれている。 オレンジロードを紹介するたびに告げねばならぬこの無粋な文面が、還暦親父が乗れているうちに不要になることを祈るばかり。

 足止めを食らった通行止め標識から、気を取り直して浜名湖岸を走る国道301へ駆け降りて、浜名湖レークサイドウェイへと分岐する新瀬戸橋を渡った。 猪鼻湖と浜名湖を隔てる大崎半島を縦断する浜名湖レークサイドウエイ、猪鼻湖岸のビューポイントで記念撮影なんぞに興じながら、かつての有料観光道路を奥浜名湖にむけて快走する。


猪鼻湖岸を走る浜名湖レークサイドウェイで奥浜名湖をめざす


 そしていよいよ、浜名湖レークサイドウエイを走りきって三ケ日インターの脇をぬけると、三ケ日町から細江町方面へと続く奥浜名オレンジロードへと駆け上がっていった。 真冬のツーリングでもライディングを楽しめるワインディングだが、新緑の季節に訪れるとその爽快さはさらに格別である。

 見通しが開ける場所ではペースダウンして浜名湖の眺望を楽しみ、メリハリを付けながら走り応えのある峠道のライディングを満喫する。 これまで、二輪、四輪の事故を目撃したことも少なく無いので、余裕をもったペースでツーリングを楽しみたいところである。 コーナーの進入前に十分なアプローチ区間を確保できるので、ラインどりとコーナリング姿勢、ブレーキ・リリースとリーンのタイミング等々、余裕をもって己のラインディングを見直す機会にもなるだろう。 

奥浜名オレンジロード、下りコーナーの右手に浜名湖を見下ろす


 奥浜名オレンジロードを三ケ日町大谷から細江町気賀の国民宿舎奥浜名湖まで走りきると、浜名湖岸から離れて引佐町の山間へと走り続けた。 その後、奥浜名オレンジロードは引佐町奥山で県道303に突き当たって終りとなり、奥山集落を抜けて県道68 へと走り継いだ。

 オレンジロードから県道68へと湖西~引佐のワインディングを走り継げば、市街地の混雑に煩わされる事なく天竜方面に貫ける極上の迂回ワインディングが出来上がる。 奥山集落を抜けて走り出した県道68の前半行程は、新東名浜松いなさJCTの巨大橋脚くぐって一旦終わり、突き当たった国道257を経由して後半の行程が始まる。


天竜川方面へ引佐町山間を貫ける県道68は、新東名いなさJCTを潜って一旦終わる


 国道257を浜松市街方面へ南下すると程なく、差し掛かった引佐町伊平から分岐して県道68の後半へと駆け上がって行った。 アップダウンを伴う変化に富んだ切り返しは、オレンジロードに負けず劣らずの峠道である。 しばらくの間、新緑の峠道でライディングに集中していると、引佐町~滝沢町山頂で稼働する浜松風力発電所の巨大風車が目に留まった。


国道257から分岐した県道68で、引佐町の山間へとさらに駆け上がって行く


 そして、見通しが良い路側にW800streetを停めてエンジンを切ると、思いがけず巨大風車のものであろう腹に響く波動が気になってしまった。 速度取り締まりのマイクロ波を嗅ぎ分けるバイク親父の第六感が、過剰に反応したのかもしれないが(笑)。

 通りがかりのバイク親父のお節介かもしれないが、巨大なダイナモが発する電磁波など足元で暮している人々への影響は無いのかと心配になるところである。 再生可能エネルギーの活用が必須であることは事実だが、巨大な箱モノを造ることが目的の政治家や役人、それで儲ける企業が信用できぬのも事実である。

 ツーリングでそんな巨大施設を訪れると、良いことばかりのプロパガンダを目にすることも多い。 どんなリスクにしろ、面倒な確率の議論に蓋をして”ゼロ”が公言される場合は、特に注意が必要であろう。


引佐町~滝沢町山頂に設置された浜松風力発電所の巨大風車群


 県道68をそのまま走り続けると浜松市街に出てしまうので、新東名高速道を渡る手前の側道に左折して、浜松カントリークラブの北側の峠道に迂回してさらに天竜川を目指す。 この工程は少しばかり分かりにくいので、事前にルート確認して走り出した方が無難であろう。


浜松カントリークラブ北側の峠道を貫けてさらに天竜川をめざす


 その後、合流した県道9を天竜川下流へと走り継ぎ、その道中で見下ろした国道362鹿島橋で天竜川を渡った。 湖西から奥浜名湖、さらに引佐の山間をつなぎ天竜川に貫けるワインディングはここまで、ここからは天浜線に沿った市街地を走る行程となる。

 ちなみに、県道9を経由して上流へと遡った船明ダムで天竜川を渡れば、秋葉街道こと国道152を天竜川上流の山間へと北上するツーリングルートにつなぐことが出来る。


天竜川沿いの県道9から国362鹿島橋と国登録有形文化財天浜線橋梁を見下ろす


 さて、天竜川を渡り遠江一宮小國神社にむけて走り出すにあたり、ここまで水分補給とトイレ休憩なしに走り続けてきたことに気が付いた。 そして、天竜川を渡った国道362から道なりに国道152へと走り継いだところで、丁度さしかかった天浜線天竜二俣駅で休憩して行くことにした。

 天竜二俣駅は天竜浜名湖鉄道の車両基地を併設し、趣のある駅本屋だけでなく運転区事務室や転車台などの多くの施設が国の登録有形文化財に指定されている。 それらの登録有形文化財の見学ツアーも開催されており、週末は特に沢山の観光客で賑わっている。

 この日も駅本屋内は観光客が溢れており、改札越しの鉄観光もそこそこに、駅舎脇のトイレを借りて早々に走り出すことにした。


観光客で賑わう天浜線天竜二俣駅、国の登録有形文化財でトイレを借りる


 天竜二俣駅から国道152に走り出すと、天浜線沿線を南下する県道40に分岐して掛川方面へと走り続けた。 そして昼時には少し早いが、天浜線遠江一宮駅に立ち寄り小國神社の参拝前に昼食をすませることにした。 国登録有形文化財に指定された遠江一宮駅の駅舎では、笊蕎麦「百々や」が営業している。


遠江国一之宮小國神社の最寄り駅、天浜線遠江一之宮駅で参拝前の昼食


 仕入れにこだわった玄蕎麦を必要な分だけ石臼で挽き、そして丁寧に打たれる蕎麦は数量が限られる。 そのせいか開店直後にもかかわらず、数組の客が席待ちをしていた。 かつての切符窓口に置かれた名簿に名を連ね、かつての駅待合室で蕎麦を待つ(笑)。

 店の配膳の手際が良いのか、粋にそばをすする客の回転が良いのか、程なく店内に通されることとなった。


国登録有形文化財の遠江一之宮駅舎で営業する笊蕎麦「百々や」


 お品書きは潔く、甘皮を除いた喉越しの良い笊蕎麦と、甘皮も打ち込んだ香りの良い田舎蕎麦の二品だけである。 そして初来店となる今回は、まずは笊蕎麦「百々や」の屋号が冠する笊蕎麦を注文することにした。  

 均一に整った細打ちの笊蕎麦は肩書通りの喉越し、噛んでみるとほのかな甘みが感じられる。 主役の蕎麦だけでなく、雑味無く香りと後味の良い出汁、形よく添えられた瑞々しい薬味にも、店主の丁寧な仕事ぶりがうかがえる。 なるほど、売り切れ御免の蕎麦に客の列ができるのもうなずける。

 そして、笊蕎麦をすすり終える程よいタイミングで、これまた蕎麦のうまみが効いたたっぷりの蕎麦湯が供され、大満足の昼飯を〆ることとなった。 今回はツーリングの道中で立ち寄ったが、天浜線の1日フリーパスなど利用して訪れれば、静岡酵母で仕込まれた純米酒の利酒旅も良さげである。


なめらかなのど越しの笊蕎麦900円也、出汁に薬味、全てが丁寧な仕事ぶり


 昼食を終えて相棒の元へ戻り身支度を整えていると、今年後期高齢者になるという紳士から「このバイクはカワサキですか?」と声を掛けられた。 W800streetのキャブトンマフラーが、当時CB350に乗っていた男性の記憶に残るW1を思い出させたらしい。

 中学生の頃W1のセンタースタンドが起こせず、巨大な鉄塊に乗れる気すらしなかった自分より一回り年上の先輩だが、重なる記憶を語り合える嬉しい出会いとなった。 たとえ今は乗っていなくとも、乗っていた頃の大切な思い出があれば、その価値観を共感できるのもバイク道楽のすばらしさであろう。

 ちなみにキャブトンマフラーは、1927年にみずほ自動車製作所が製造し、中川商店が発売したオートバイ「キャブトン第一号」に装着してあったことに由来する。 そのCABTONという商品名は大阪商人の造語で、”Come And Buy To Osaka Nakagawa”を略したものだったらしい。 トライアンフ乗りは、欧米流にPeashooter(豆鉄砲)を使った方が良いのかもしれない(笑)。

 さて、遠江一宮駅から県道40に復帰してすぐに県道280に分岐すると、めざす遠江一宮小國神社はもう直ぐである。

 ところで、小國神社の祀神は大己貴命(おおなむちのみこと)、出雲の国づくりと因幡の白兎伝説、縁結びのご利益で知られる、大国主命(おおくにぬしのみこと)の別名である。 さらにこの神様は、食物や財福を司る大黒様の顔を持ち、五穀豊穣、開運、財運…何ともご利益てんこ盛りの神様である。

 還暦親父がいまさら縁結びの神様に参拝するのも微妙な感じではあるが、現在のリーマン稼業から足を洗い新しい縁に恵まれることを祈り、そしてなによりかみさんと波風が立たぬよう祈るのは、かなり切実なお願いなのである(笑)。

 そしていよいよ小國神社にたどり着くと、一の鳥居まえの参拝者駐車場に相棒を停め、拝殿に向かう参道へと歩き出した。



一の鳥居前の駐車場にW800streetを停め、拝殿へ続く参道へと歩き出した


 参道脇には杉の大木が並んでいるものの、お目当ての青もみじを目にすることはなく、たどり着いた拝殿で参拝を終えることとなった。 境内の案内地図によると、参道の東側を流れる宮川沿いに散策道があり、駐車場へ戻る前に足を運んでみることにした。 

参道脇に並ぶ見事な杉巨木、しかしお目当ての青もみじは見当たらず


 さて、参道から離れて境内を流れる宮川沿いの散策路に足を運ぶと、本宮山麓から流れでた清流を覆う青もみじに目をみはることとなった。 秋の紅葉シーズンにこの景色が色づく様を想像すると、その景色を目当てに沢山の参拝客が訪れるのもうなずける。

 今回は宮川沿いの散策路を下流へ歩き一の鳥居脇の駐車場に戻ったが、宮川上流にはさらに神秘的な景色が続いていた。 できれば紅葉の季節に再訪し、宮川上流の神域を散策してみたいものである。

参拝後に参道脇の散策道へ、境内を流れる宮川を覆う見事な青もみじ


 青もみじで覆われた宮川沿いを散策しながら駐車場に戻ると、遠州寺社巡りの次の目的地である橘谷山大洞院に向けて走り出すことにした。 一の鳥居の西側には、甘味処などがならぶ観光施設「小國ことまち横丁」があり、参拝のついでに立ち寄ってみるのも良さげである。

 ところで橘谷山大洞院は、麻蒔地蔵菩薩が本尊の曹洞宗の古刹で、小國神社と同じく紅葉の名所として知られている。 青もみじ狩りがお目当ての、遠州寺社巡りツーリングの目的地としては申し分ないであろう。 そしてさらに、大洞院には遠州森の石松の墓があることも知られており、先の読めぬ世の中を生き抜くために手を合わせておくのも良いかもしれぬ。

 さて、小國神社駐車場から走り出すと、隣接するゴルフ場の南側を回り込むように峠を越えて、目的地の橘谷山大洞院にたどり着いた。 そしてまず目に留まったのは、駐車場脇の道路沿いにある遠州森の石松の墓である。

 現在の森の石松の墓石の脇には、金属製の柵に覆われたかつての墓石がたっている。 勝負事の守りにするために削り取られた古い墓石はやせ細り、金属製の柵はそれを防ぐためのものなのである。 いやはやなんとも、フィクションにしろ騙し討ちにあって切り殺された侠客に、勝ち残るご利益があるかどうか疑問だが...墓石まで削り取る人の欲深さが怖くなる。


遠州森の石松の墓、左手は博打のゲン担ぎに削られて痩せた旧墓石


 そして森の石松の墓に手を合わせ振り返ると、伏間川を挟んだ大洞院の境内では評判通りの見事な青もみじに覆われていた。 境内では、石松の墓石の欠片を納めた勝運お守りも受けられるようだが、残り少ない己の人生を石松さん頼みにする気になれず、見事な青もみじを背景にW800streetを撮影して遠州寺社巡りの旅をしめくくることにした。

 引退間際のリーマン親父が振り返ってみると、正直なところ、己のビジネスに運不運を感じることも少なくなかった。 それと同時に仕事とギャンブルの違いは、失敗しても後悔しない大義を持てるかどうかだと感じる次第である。 裏返せば、共感できるものに貢献したい何かがなければ、ビジネスもギャンブルと一緒だということになる。

伏間川越しに橘谷山大洞院の境内を彩る青もみじを眺め旅を終える


 大洞院を後にして往路へと折り返すと、中遠広域農道を経由して、遠州森町スマートICから名古屋方面へと帰路に着くことにした。

 浜名湖周辺のワインディングを、冬場のツーリングルートに利用するだけではもったいない。 実際のところ、新緑に覆われた、湖西から奥浜名湖を経由して引佐へと続くオレンジロード、そして引佐の山間を天竜川へ抜ける県道68のライディングは爽快であった。

 これから梅雨に入って走り出す機会も減るかもしれぬが、梅雨の晴れ間を狙ってふらっと走り出したいものである。 たどってみたい峠道や歴史、訪れたい食堂や景観等々、まだ見ぬ景色を繋ぎ合わせてみれば、まだ見ぬ世界が見えてくるかもしれない。




ツーリング情報


天竜浜名湖鉄道  静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵114-2 (電話)053-925-2275


笊蕎麦 百々や  静岡県周智郡森町一宮2431-2(遠江一宮駅舎) (電話)0538-89-7077


遠江国一宮 小國神社  静岡県周智郡森町一宮 3956-1  (電話)0538-89-7302


橘谷山 大洞院  静岡県周智郡森町橘249 (電話)0538-85-2009     


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