2023/07/22 奥三河ワインディング三昧(広域農道奥三河線、ささぐれ紅葉街道、茶臼山高原道路、矢作ダム、加茂広域農道、松平郷天下茶屋)
奥三河のワインディングを一筆書きでたどる旅、無性に峠が恋しくなり思いつくまま走り継いだルートである。 結果的に、ダイナミックな山岳快走路からタイトな切り返しの峠道まで、200km程の走行距離に様々なワインディングを詰め込んだ密度の濃い行程となった。
具体的には、広域農道奥三河線、ささぐれもみじ街道、茶臼山高原道路、矢作ダム、加茂広域農道を、走りごたえのある県道でつないだ行程を紹介してみたい。 思った以上に峠のバリエーションが素晴らしく、さらに上り/下りが逆になれば別物の行程になるだろう、機会があれば逆回りルートも試していただきたい。
さてW800 streetに乗り出して約半年が過ぎ、自分なりのライディングスタイルを思い描けてきた気がする。 それ故レポートの内容も、手前味噌なライディングスキルの試行錯誤がメインになってしまうが、どんなオートバイ、どんな乗り手でも、スタイルに応じたライディングを楽しめるルート紹介になることを願っている。
そして、ライディングで腹一杯の一日となったが、それでもチャント腹は減る(笑)。 全てのワインディングを走り終えた帰りの道中、松平郷の天下茶屋で遅い昼食をとり旅を終えることになった。
奥三河ワインディング巡りの中程、茶臼山高原道路のダウンヒルが始まる
ルート概要
東海環状道豊田勘八IC-国153→中金町日影-県344-県33→豊岡-国153→高田木-広域農道奥三河線(駒ヶ原高原)→西納庫屋木下-国257→東納庫大桑-ささぐれもみじ街道→上津具-県10→根羽村上町-県46→茶臼山高原-茶臼山高原道路(県507)→西納庫-国257-(稲武町)→押川大滝-県356(矢作ダム)→小渡-県366→萬町橋-加茂広域農道→平沢下-国153→千田-加茂広域農道→深山茶屋-国420-加茂広域農道(加茂ゴルフクラブ)→笹ヶ田和-県363-県77→根崎-国301→松平郷(天下茶屋)-国301 →東海環状道豊田松平IC
ツーリングレポート
東海環状自動車道豊田勘八ICから国道153に駆け下りると、まだヒンヤリとした早朝の勘八峡を足助方面へと走り出す。 足助バイパスが開通して香嵐渓付近の混雑も随分解消されたが、一刻も早く峠道に駆け込みたいのが人情である。 早速、里山を縫う峠道で集落をつなぐ県道344に分岐して、乗り手とW800street双方のコンディションを確認する。
実際にはダイアグまみれの相棒、細かなサスセッティング機能も無いので、警告灯が点灯しておらず、外観や操作感に違和感がなければ問題なし、あとは乗り手がウオーミングアップするだけの話になる。 まあ、前回の終わり方を思い出すところから事が始まるのは還暦親父の日常ゆえ、ライディングスキルというよりも記憶力のウオーミングアップと言えるかもしれない(笑)。
国道153から里山を縫う県道344に分岐してウオーミングアップ
ところで、約半年前にW800street乗りになった還暦親父がどんな乗り方を思い描いているのか、「走る」「曲がる」「止まる」の各ポイントを紹介しておきたい。 このライディングスタイルを基準に、今回のワインディングも紹介しているので、適宜自分なりの流儀に置き換えてルートを思い描いていただきたい。
走る
トルク重視のエンジン特性と重たいフライホイールの慣性力を活かすため、なるだけ緩やかなライン取りで最大トルク付近のエンジン回転数を維持する。 トラクションをかけるため、立ち上がりのリア荷重を意識し早めにアクセルを開けて行く。
曲がる
一方でツーリングでは、特にブラインドコーナーでは、クリップを奥にとって立ち上がりの視界を確保し、一気に向き変えするラインどりが欠かせない。 それに折り合いを付けるために、アップライトなポジションと細身のバイアスタイヤを活かし、リーンアウト姿勢での腰下でキレの良い倒しこみを意識する。
止まる
あまり効かぬフロントブレーキ、踏ん張れないフレームとサスペンションゆえ、コーナ進入ではリアブレーキを積極的に使って制動力を補い、前のめりにならぬニュートラルな前後姿勢を維持する。
さて、県道344の足慣らしを終えて国道153に合流すると、「広域農道奥三河線」をめざし飯田方面へと走り出した。 2022年5月に開通したばかりの「広域農道奥三河線」は、豊田市小田木町から設楽町西納庫を結んでいる。 さらに国道257を挟んで、既に2007年に開通していた設楽町東納庫と設楽町津具町を結ぶ「ささぐれもみじ街道」と合わせて、全長24.9kmの広域農道になる。
国道153が伊勢神トンネル貫けて谷筋へと下ると、高田木バス停付近で広域農道奥三河線への分岐にさしかかる。 段戸山牧場の大きな看板があるので、その看板を目印にすれば分岐に迷うことはないだろう。
そして、広域農道奥三河線に分岐してしばらくは、点在する集落をつなぐ里の景色が続き、段戸山牧場の南側を駒ヶ原高原に向けて駆け上がってゆく。 そしていよいよ、今回新しく開通した区間に差しかかると、緩やかな弧を描きながらダイナミックに駆け上がる山岳道路の様を呈してくる。
広域農道奥三河線に分岐して駒ヶ原高原へと駆け上がる
鷹ノ巣山(通称段戸山、1,153m) の北麓を抜ける広域農道奥三河線、広域農道の最高地点(995m)を越えると、西納庫にむけて標高差350mを一気に駆け降りて行く。
全区間を通して、速度が乗る緩やかなコーナーが続く広域農道奥三河線、コーナー奥のリーンアウト姿勢でキレ良く向き変えする意識を抑えて、ひたすら緩やかにコーナーを繋いで行く。
正直なところ、フレームや足回りの頼りなさが顔を出す速度域に入ってくるが、幸いにも真新しい凹凸が無い路面ゆえに、時折気になるリヤサスのヨーイングも発生せず。 リアサスのバネを硬くする必要は感じないが、ダンパーの減衰力はもう少し上げてみたいところである。
鷹ノ巣山(1153m)の北麓、広域農道奥三河線の最高地点(995m)
ところで、凍結時期のスリップ防止のためか、最高地点付近の真新しい路面にはグルービング加工が施されている。 グルービング加工がどれくらい二輪タイヤのグリップに影響するのか定かでは無いが、全神経を集中するタイヤの接地感が安定しないのは何とも気持ち悪い。 道路管理者はその対策として、二輪乗りへの注意喚起や溝位置を調整してくれている?らしいが、己の感性を信じて違和感がある場合には踏みとどまるしかない。
広域農道最高地点からのダイナミックな下り、グルービング路面が煩わしい
広域農道奥三河線を駆け下り切ると、西納庫で国道257に突き当たって終りとなる。 その後、設楽方面へ舵を切って走ると程なく、東納庫のささぐれもみじ街道分岐にたどり着いた。
ささぐれもみじ街道は、広域農道奥三河線と同様に緩やかな起伏とコーナーが連続する快走路である。 また、ささぐれもみじ街道の愛称通り地元の紅葉スポットとして知られており、紅葉狩り客で賑わうシーズンに、ライディング目当てのツーリングは避けた方が無難かもしれぬ。
基本的には広域農道奥三河線同様に、緩やかにコーナーを繋ぎながら速度を乗せていきたいところだが、紅葉狩りの観光道路ゆえの人里感もアリ、観光クルージングに頭を切り替える。 高めのギアで右手を大きく捻り、空冷並列二気筒360°クランクエンジンの、低速から粘るトルク感とそれに共鳴する排気音を楽しむことにした。
ささぐれもみじ街道の快走路、路側には秋に色づく紅葉
ささぐれ紅葉街道を津具集落まで走りきると、合流した県道10 を根羽集落に向けて走り続けた。 県道10が津具集落を抜けると折元峠に向けた上りに差し掛かり、短いピッチの切り返しがこれでもかと続くトリッキーな九十九折れが始まる。
長年SSに乗り続けた結果、フロントブレーキによる溜めや切り返しの反動で、テンポよく腰を落とし込む習性が染みついた親父である。 リーンアウトの腰下でキレ良く切り返すイメージで、カウンターステアによる倒しこみを試行錯誤するが...どこまで追い込んでいけるのかまだ先は見えず、ここらが良い加減なのかもしれぬ。
それにしても、タイトな切り返しで頻繁に接地するステップは何とかしたいところ、フロントよりのステップ位置に関してもリア荷重の邪魔になる気がする。 かといって、大袈裟なバックステップにも違和感があり、まったくもって悩ましいところである。
津具集落から県道10を駆け上がる、これでもかと続くタイトな切り返し
これでもかと続く、県道10のタイトな切り返しを一気に駆け上がると、津具高原で愛知県設楽町から長野県根羽村への県境を越える。 そしてたどり着いた根羽村集落から、小戸名渓谷を抜けて茶臼山高原へと駆け上がる県道46へと走り出した。
売木峠を越える県道46、適度な弧を描きながら里を繋ぐ峠道が連続し、緩急つけながらそれぞれのライディングを満喫する。 その後、売木峠手前で分岐して茶臼山高原へ駆け上がると、南アルプスを望む矢作川源流駐車場で小休止した。 残念ながら南アルプスは雲に覆われ、その稜線を望むことは叶わず。
矢作川源流駐車場で小休止、残念ながら南アの稜線は雲に遮られる
その後茶臼山高原道路に駆け出すと、しばらくの間は緩やかで速度が乗る高原区間を走り、西納庫に向けてのダウンヒル区間へと走り続ける。
いずれの区間も、フロントタイヤ頼みの向き変えが難しいW800streetゆえに、コーナーの進入でニュートラルな前後姿勢を維持しながら、緩やかなライン取りと早めの立ち上がりで旋回速度を上げてゆく。 比較的コーナーの見通しが良いので、緩やかなライン取りに集中できるのがありがたい。
そして突然だが、ダウンヒル区間に差しかかると同時にぶ厚い雲が広がり、バイク親父もろとも高原道路の路面は水浸しになってしまった(泣)。
濡れた路面のタイヤグリップを見切れず、兎に角嫌いなウエットコンディション。 しかし、フロント荷重を抑える乗り方を試行錯誤していたせいか、ドライ・コンディションとのギャップをそれほど感じないことに驚かされた。
ギリギリのところを攻めるばかりでは見えてこないものが、少し引いて余裕をもてば見えてくることもあるってことなのかもしれぬ。
茶臼山高原道路の下り、フロント荷重を抑えニュートラルな旋回を試みる
茶臼山高原道路を西納庫まで駆け降りると雨雲を抜け、晴天の国道257に突き当たった。 レインウエアを羽織るのも面倒なので濡れっぱなしのダウンヒルとなったが、次の目的地矢作ダムにたどり着く頃には濡れた装備も乾きそうである。
そして、国道257で稲武を貫けて矢作ダムに差し掛かると、矢作ダム湖南岸をトレースする県道356へと分岐した。 微妙にRが変化するタイトな切り返しが連続し、山肌でコーナー出口の視界を遮られることも多い。 また、流れ出た山砂を避けながらの臨機応変なライン取りも必要で、ツーリングに必要なライディングスキルの総合力を試されるルートかもしれぬ。
ツーリングの冒頭で紹介した通り、W800street乗りになってたどり着いたライディングをあらためて要約すると...(走る)緩やかなライン取りでエンジン回転数を維持し立ち上がりで早めにアクセルを開ける、(曲がる)視界確保のためクリップを奥にとりリーンアウト姿勢でキレ良く曲げる、(止まる)リヤブレーキを活用しフロント荷重を抑えニュートラルな前後姿勢を維持する...ってことになるが、矢作ダム湖岸ルートは、これらのスキルを試行錯誤するに最適なルートとも言える。
W800streetの乗り易さは、穏やかな挙動によるところが大きいのだろうが、言い換えればレスポンスが悪いってことになる。 その走る・曲がる・止まるの穏やかな挙動を、よどみなく繋げて小気味よく走らせるところに、このバイクを操る醍醐味を感じるのである。
この日は、切れの良いターンインのきっかけ作りとして、カウンターステアを意識してアレコレ試してみる。 W800streetの極端な幅広ハンドルとアップライトなポジションは、思いのほかカウンターからリーンアウトへの移行がやり易くて収まり通い。
その理由は、最新のネオクラッシックバイクがオマージュした昭和のバイクが、砂利道を走ることを想定して設計されていたからではないかと勝手に想像する。 形から入っただけなのかもしれないが、結果的な操作性に本来の設計思想が表れるとは、何とも昭和なロマンを感じるではないか(笑)。
県道356で矢作ダム南岸をトレース、ツーリングライドの総合力が試される
県道356が矢作ダムを越えて小渡集落にたどり着くと、県道366を経由して加茂広域農道へと駆け上がった。 加茂広域農道は大きく分けて三つの区間に分割され、今回のように北側から南下する場合、県道366(萬町橋)~国道153区間、国道153~国道420区間、国道420~県道363区間の順に繋がる。
また、矢作ダム南岸をトレースする県道356を、ツーリングに必要なライディングスキルの総合力を試されるルートと称したが、さらに加茂広域農道の3区間には落差のあるアップ/ダウンの要素が加わる実戦的なワインディングとなる。
点在する集落区間のペースを落としながら、アップ/ダウンを伴う進入と立ち上がりで、前後ニュートラルな姿勢造りを意識しながら、この日気付いた課題をアレコレ確認しながら走り続けた。 そしてここでも、簡単に接地するステップに興ざめすることとなった。
W800streetのフロントタイヤが、W800の19インチから18インチに小径化されているせいか、落差のあるタイトコーナーで寝かせ込むと、ステップが簡単に接地してしまうのだ。 やはり、ステップの換装は必須かもしれぬ。 しかし、アップライトなポジションにバックステップ...方向性を見失ったミスマッチ感が否めぬが、ライディングに必要な装備は機能美を呈すと信じることにしよう(笑)。
加茂広域農道へと駆け上がる、峠巡りの総仕上げに相応しい難攻ルート
ツーリングの最後に気になる課題スキルを再チェックするも良し、難しいことを考えずにライディングを満喫するも良し、そんな加茂広域農道を走り終えると、国道301に合流して豊田市街に向けて駆け降りることにした。
そして、全てのワインディングを走り終えて、空っぽの胃袋に気付いたバイク親父は、看板が目に留まった松平郷に駆け上がり、松平郷園地の「天下茶屋」で昼食をとることにした。
ワインディング巡りを終え、松平郷「天下茶屋」で空の胃袋を満たす
まず注文したのは「麦めしとろろ」850円也、家康も好んだと言われる健康食を掻き込み腹を満たすことにした。 さらによほど腹が減っていたのか、名物「天下もち」330円也を追加注文した。
この甘味は、「織田がつき 羽柴がこねし天下餅 座りしままに 食ふは徳川」という風刺歌を題材にしたもので、一串3個の団子が三人の天下人を表し、小豆餡がのった団子が家康を表していいるそうだ。
歌の意味は、信長と秀吉が苦労して成し遂げた天下統一を、家康が独り占めにしたと皮肉ったものらしく、末尾のツーリング情報で紹介した松平郷の公式サイトでは、「天下もち」を食べてあなたも天下人に!! っと、明るく紹介されている。
しかし天下人の権利と共に、古戦場ツーリングなどを通じて知った家康の苦労が付いてくると思うと、330円払ったからと言って安易に頬張れなくなる(笑)。
「麦めしとろろ」850円也、家康も好んだ健康食を掻き込む
三人の天下人を表す「天下もち」330円也、餡がのった団子が家康だとか
松平郷で腹を満たして国道301に復帰すると、東海環状道豊田松平ICから名古屋方面へと帰路に着いた。 正味200km程のワインディング巡りゆえ、早朝に走り出せば昼食で旅を終える行程が組めるだろう。
さて、繋いだワインディングを振り返ってみると...速度が乗るダイナミックな広域農道奥三河線~ささぐれもみじ街道、タイトな切り返しを駆け上がる県10~県46、フロント荷重と前後姿勢制御が難しい茶臼山高原道路ダウンヒル、路面コンディションやブラインドコーナーの実践力が試される矢作ダム南岸、そして最後に、アップダウンを伴う様々なコーナーで総合力を試される加茂広域農道と、実に充実した奥三河のワインディング巡りとなった。
今更ながらではあるが、己のライディングを再確認、矯正したい時、ただただ走り込みたい時、そんなときにふらっと駆け出せる定番のワインディングルートを手に入れた気がする。 また、逆回りのルートでアップダウンが逆になると、各区間の印象や難しさは全く違ってくるだろう。 今後、逆回りルートやオプションルートを追加しながら、ふらっと出かけられる奥三河のワインディングメニューを増やしていきたいものである。
あとがき
絶対的な速度を求めるならば、高性能なバイクをサーキットに持ち込んでタイムを刻むしかない。 一方公道でも、ライディングの尺度となる速度感は必要だが、しかしそれは乗り手の主観的・相対的なものである。
例えば、R-1000を駆り何気なく速度計を見るとんでもない速度だったり、W800streetでかなり頑張ってみても速度計はそれほどでもなかったり、一般的な乗り手の速度感は乗るバイクやコンディションによって大きく変わる。
それは、高性能バイクで無くとも、リスキーな速度域に踏み込まなくとも、ライディングを楽しむに必要な速度感を得られるということだろう。 さらにW800streetに乗ってみて、おのれの技量で性能限界を見極められるオートバイなら、操る楽しみを得やすいことを再認識しているところである。 感じる相対速度は、操る楽しみを測るための一つの指針なのだと。
...てなことを考えるようになって、SSに乗っていた頃は、見向きもしなかった空冷並列二気筒360°クランクエンジンに、なぜ自分が傾倒しているのかが分かってきた気がする。 今後しばらくは、2000rpm付近から粘りながらトルクが立ち上がる感じ、最大トルク4800rpm付近の慣性を溜めながら走らせる難しさ、それぞれの速度域でそれぞれのライディングを楽しめそうである。
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