2023/02/25 奥浜名オレンジロードで天竜浜名湖鉄道美味い駅巡り(やまよし、グラニーズ、八雲、貴長、清水屋、かじや菓子店)
年明けに納車されたW800 streetの走行距離がようやく250kmを越え、今回の旅の途中でエンジン回転数を4000rpm以下に抑えた、350kmの慣らし運転を終えることが出来そうだ。
そして浮かんだのは浜名湖で折り返す往復約200kmのルート、往路で天竜浜名湖鉄道の個性的なグルメ駅をまったりと巡り、復路では奥浜名オレンジロードに折り返して峠道を思い切り楽しむ算段である。 思惑通り行けば、往路のまったり旅で慣らし運転を終え、復路の峠道でW800 street本来の乗り味をレポートすることが出来るだろう。
ご存知の通り、往路で巡る天竜浜名湖鉄道の駅には、美味いものを供する個性的な店が併設されている。 流石に、食い意地の張った親父でも全品一括制覇は無理ゆえに、過去に訪れたときの料理写真を紹介させていただくことにした。 気になる美味いもの駅があればぜひ立ち寄って、アップデートされた料理を味わっていただきたい。
一方今回の昼食には、旅を折り返した細江町気賀駅近くの老舗うなぎ屋「清水屋」に立ち寄り、久しぶりに関東風のフワッフワッ食感の蒲焼をいただくことにした。 そして家族への土産には、細江名物のみそ饅頭を仕入れて帰りたいところである。 40年近く前に九州福岡を離れ愛知に就職して以来、奥浜名湖ツーリングの度に訪れた「福月堂」が昨年閉店し途方に暮れていた。 はたして昭和親父の琴線に触れる、どこか懐かしい饅頭店を再び探し出すことはできるだろうか。
以上の通り、詰め込みすぎの長丁場になりそうなので、前後半に分けてレポートさせていただきたい。 前半では、天浜線美味い駅巡りを中心にお伝えして、天浜線沿線の旅企画の一助になれば嬉しい限り。 また後半では、奥浜名オレンジロードで感じたW800 streetの乗り味をまとめてみたい。 排ガスに騒音規制がどんどん厳しくなり、いまや絶滅危惧種となってしまった空冷バーチカルツインエンジン、昭和感が残る趣きに期待したいところである。
W800 streetの慣らしを終えた奥浜名オレンジロード、眼下に浜名湖の眺望
ルート概要
名古屋方面-国23(蒲郡バイパス)→蒲郡西IC-市道→貴船-国247→豊岡平田門-県368(国坂峠)→東三河ふるさと公園-県373→為当町新道-県31→豊川為当IC-国23(豊橋バイパス)→豊橋東IC-国1→一里山-県402→中原踏切-県3→天竜浜名湖鉄道新所原駅(駅のうなぎ屋やまよし)-県3→県330,県332→ミニストップ湖西岡崎店-オレンジロード→22番コーナー→伊呂波-国301→天浜線三ケ日駅(グラニーズ バーガー&カフェ)-国362→天浜線西気賀駅(グリル八雲)-国362→かじや菓子店-国362→天浜線気賀駅(貴長)、清水家-国362→細江神社-市道→国民宿舎奥浜名湖-オレンジロード→浜名惣社神明宮鳥居-三日池-国301→高橋-国362(本坂トンネル)→馬場町-県5(豊川稲荷)→追分-県368→行力-県374(御油の松並木、Pino Cafe)→関谷-国1→名古屋方面
ツーリングレポート(前半)
日もまだ昇り切らぬ早朝に走り出すと、国道23名四国道を知立バイパス、岡崎バイパス、蒲郡バイパスへと走り継いだ。 そして、大型車両で混雑する蒲郡バイパス終点の蒲郡ICを避けて、手前の蒲郡西ICを降りて蒲郡市街を貫ける国道247へと下って行く。 高台を走るバイパスからみかん畑へ駆け降りると、蒲郡市街の先に光り輝く三河湾の眺望が広がっていた。
何度も走っているルート、見慣れた景色のはずだが、天候や時間帯などの条件に乗り手の気持ちがシンクロすると、ハッとする景色に出会えることがある。 まだ相棒になって間もないW800 streetだが、アップライトなポジションや中低速型エンジンのおかげか、周りを見渡す余裕とともにそんなㇵッとする機会も増えたような気がする。
これまでそんな時には、直ぐに路側に停めたバイクのイグニションを切っていたのだが...空冷バーチカルツイン、360°クランクエンジンのアイドリングをBGMに眺める景色も良いなと悦に入る。 昭和親父のノスタルジーを刺激するネオクラッシック、急性W中毒が収まるのにはもう少し時間がかかりそうである(笑)。
その後、みかん畑を抜けて下った国道247で蒲郡市街を貫けると、国坂峠を越えて浜名湖へと続く国道23豊橋バイパスに駆け上がり、4000rpm以下のエンジン回転数で慣らし運転の距離をかせぐ。
バーチカルツインのエンジン音をBGMに光り輝く三河湾を見下ろす
国道23豊橋バイパスを終点の豊橋東インターまで走りきると、まずは県道402を経由して天竜浜名湖鉄道の西の終点新所原駅に立ち寄ることにした。 今回のツーリングでは、この新所原駅を起点に細江町気賀駅までの区間で記憶に残る駅舎を巡り、慣らしを終えた相棒と共に奥浜名オレンジロードのワインディングで三ケ日方面へと折り返す算段である。
今更ながらではあるが、天浜線こと天竜浜名湖鉄道は、戦時中の敵攻撃に備えた東海道本線の迂回ルートとして建設された旧国鉄二俣線がルーツである。 1940年(昭和14年)に東海道本線新所原駅と掛川駅の間を繋ぐ浜名湖北岸ルートが全線開通した。
その後、1987年(昭和62年)に旧国鉄二俣線は廃止になったが、現在も第三セクターの天竜浜名湖鉄道として非電化旅客営業を続けている。 建設当時から稼働している建造物や施設の多くが、さらには天浜線全線が国の登録有形文化財に登録されており、その昭和レトロな駅舎では食事ができる個性的な店々が営業しているのである。
実際に新所原駅を訪れてみると、数年前に改築されたばかりのJR新所原駅が目に留まる。 そして、その真新しさと対極にある天浜線新所原駅のレトロ感がたまらない。 天竜浜名湖鉄道の厳しい採算状況をうかがい知ることも出来るが、JRの駅舎に吸収されずオリジナルの風情を残してくれたことに感謝したくなる。
真新しいJR新所原駅と対照的、昭和レトロな天浜線新所原駅
そして、天浜線美味い駅巡りの始まりとなる新所原駅では、三代続くうなぎ生産者が浜名湖特産のうなぎを供する、駅のうなぎ屋「やまよし」が営業している。 新所原駅は関東風と関西風の調理法が混在する静岡と愛知の県境に位置しており、やまよしでは蒸を入れない関西風のうなぎを提供している。 生産者の目利きによる柔らかく口当たりの良いうなぎを、関西風のサクッとした焼きで仕上げた蒲焼は、一度味わってみる価値がある。
以前は、店内で飲食可能であったが、コロナ禍の影響で弁当の持ち帰りのみの営業になっていた。 駅にベンチに腰掛けて、すこし贅沢な駅弁を広げるのも良さげである。
駅のうなぎ屋やまよし、関西風のサクッとした焼き(2020年3月撮影)
新所原駅を後にして、県道332、県道330を湖西市方面へ走り継ぐと、浜名湖西岸を北上する奥浜名オレンジロードへと走り出した。 湖西市街の混雑を避けてみかん畑を抜けるオレンジロードをたどると、次の目的地である天浜線三ケ日駅近くに抜けることが出来るのだが、残念ながら天浜線知波田駅~尾奈駅と併走する区間が二輪通行止めになっている。
地域の観光資源として活用も可能な広域農道が、二輪通行止めになった経緯は推して知るべしだが、安全にツーリングを楽しめる環境が整い規制が解除されたことを願い、毎回通行止め標識までの区間をたどることにしている。 しかし残念ながら今回も、オレンジロードの二輪通行止めは解除されておらず、浜名湖岸をトレースする国道301に向けて駆け降りることとなった。
新所原駅から三ケ日駅をめざし梅が香るオレンジロードへ
二輪通行止めのオレンジロードから離脱し、浜名湖岸国道301へ駆け降りる
オレンジロードから浜名湖西岸の国道301まで下ってくると、峠道のライディングから湖岸のクルージングに気持ちを切り換え、そのまま三ケ日方面に向けて北上を続けた。 いずれのルートも信号停止が少なく、趣の違ったツーリングを満喫することが出来るはずである。
そして、浜名湖と猪鼻湖を繋ぐ瀬戸水道を経て走り続けると、国道301は徐々に三ケ日町の賑わいに入って行き、目的の天浜線三ケ日駅にたどり着いた。 ちなみに、瀬戸水道を渡る新瀬戸橋方面へ分岐すると、2007年に無料開放された浜名湖レークサイドウエイを北上し、東名高速三ケ日インター方面へ抜ける快走ルートとなる。
国道301から浜名湖のながめ、行く手には猪鼻湖に繋がる瀬戸水道
さて、天浜線美味い駅巡りの二番目に立ち寄った三ケ日駅には、食べ応えのあるバーガーを味わえるカフェ「グラニーズ」が併設されている。 国の登録有形文化財に登録された昭和の駅舎と、アメリカンなバーガーカフェとのミスマッチが、独特の雰囲気をかもしだしている。
そして久しぶりに三ケ日駅を訪れてみると、記憶に残るオールドアメリカンスタイルのグラニーズは少しばかり様変わりしていた。 どうやら、4年前に初代店主が引退することになり、店が無くなるのを惜しんだ常連客であった現代表が、土日祝日のみの営業で事業継続することになったらしい。 三ケ日に農業移住した現代表は地域振興活動にも携わっており、ご当地メニューの「三ケ日牛バーガー」が現グラニーズの看板商品になっていた。
一方で、お気に入りだったオリジナルメニューの「グラニーズバーガー」も残されており、オージービーフ100%、厚切りベーコン、フライドエッグ、チェダーチーズ、トマト、レタス、玉ねぎ、等々が積み重なった、ボリューミーなアメリカンスタイルのバーガーは健在である。
三ヶ日駅本屋は国の登録有形文化財、「グラニーズ」が土日営業
ボリューミーな初代グラニーズバーガーは今も健在(2012年12月撮影)
三ケ日駅を後にすると、国道362を細江町気賀方面へと走り続ける。 国道沿いの景色は、対岸まで見通せる猪鼻湖から対岸が霞む広大な浜名湖へと移り変わり、天浜線美味い駅巡り第三の目的地西気賀駅にたどりついた。
駅本屋と待合所が登録有形文化財に登録されている西気賀駅、駅舎内では本格的な洋食が味わえるグリル「八雲」が営業している。 名古屋御園座の側で営業していた「八雲」で修業した店主が、1989年に閉店した店を引き継ぎ西気賀駅でオープンしたとのことである。 白く塗られた昭和の駅舎に、八雲の屋号を掲げたトリコロールカラーの看板が映える。
看板メニューは三ケ日牛のビーフシチュー、また浜名湖魚介を用いたフライなど、地元の旬の食材を活かした洋食をいただくことができる。 これまで何度も訪れた八雲だが、”食材を活かす”という表現が適切な雑味の無い料理に、毎度、付け焼刃では無い料理人の腕を感じることになる。
愛知で社会人となってから定年を控える年頃にまでたどりついた晴れふら親父、その記憶が八雲の開店から現在までに流れた長い年月を推し量ってしまう。 厨房の店主と配膳を仕切る奥様が、少しでも永く素敵な洋食屋を続けて行かれることを願うばかりである。
西気賀駅の白い駅舎に、グリル「八雲」のトリコロールカラー看板が映える
地元三ケ日牛と旬の野菜を活かした雑味無いビーフシチュー(2018年10月)
ホーム窓側席に陣取ればディーゼルの発着が鉄風味の調味料になる(2018年10月)
西気賀駅から走り出した国道362を1駅区間だけ走ると、いよいよ旅を折り返す天浜線気賀駅にたどり着いた。 本屋、上屋及びプラットホームが登録有形文化財に登録された気賀駅では、中華屋「貴長」が営業している。 店の看板メニューは、静岡新聞主催キングオブ静岡ラーメンに何度も選出された実績を持つ「貴長塩ラーメン」、あっさりした魚介系スープに稲の青葉を粉末にした米稲パウダーを練り込んだ緑色の麺が特徴の名物ラーメンである。
来店した際に、店内の壁に貼られたメニューに目を向けると...Ninja、MACHAⅢ、V-MAX、Big1、隼等々、オートバイの名を冠した品々が並んでいたことを思い出す。 正統派塩ラーメンを看板メニューに掲げる店主の裏の顔が、かなりのバイク馬鹿であることは明白である。 時折店前で見かける、カリッカリに仕上げられたGT750は、店主の愛車だろうか。
中華屋「貴長」を併設した気賀駅、本屋、上屋とプラットホームが登録有形文化財
バイク名を冠したメニューに面食らうが、名物は本格的な塩ラーメン(2017年2月)
前述の通り、今回は気賀駅を最後に天浜線美味い駅巡りの旅を折り返すことにした。 ツーリング前半の行程で、思惑通り4000rpm縛りの節目である350kmの走行距離も越えることができた。 ツーリング後半では、奥浜名オレンジロードを三ケ日方面へ折り返し、6000rpmまで回して空冷バーチカルツインエンジンの実力を試せることになる。
しかし、その前に乗り手の腹ごしらえをせねば。 まさに馬の鼻先に人参、各駅の美味いものに後ろ髪を引かれながら相棒の慣らしを終えた親父は、腹が減ってもうライディングどころでは無くなってしまった。
そして、天浜線気賀駅から線路沿いに少し進むと、有形文化財に登録された天浜線気賀町高架橋脇にある、三代続く関東風うなぎの老舗「清水家」に立ち寄った。 相棒のW800 streetはレギュラーガソリンで働かせておきながら、最近ノッキング気味の親父はハイオクばりに高級なうなぎを食らう(笑)。
関東風は背開きしたうなぎに短く串を打ってふっくらと蒸しあげて焼くスタイル、対する関西風は腹開きにしたうなぎに長串を打ち表面をカリッと焼き上げるスタイル。 背開きや腹開きについてのこだわりは無いが、ふっくらと仕上げられた関東風うなぎを食べたくなったらこの店を訪れることになる。
丁度昼時、行列必至の人気店ゆえに席待ちを覚悟しての来店だったが、入り口で検温を促されて注文と会計を済ませると、すんなりとカウンター席に案内されることとなった。 コロナ禍の影響なのか価格高騰の影響なのか、かつてのにぎわいが無いのが気になるところである。
最近は、賑わっているはずの場所に人がいない、営業しているはずの店が無くなっている、という状況に遭遇することも多く、当たり前だったことが当たり前でない現実に気付かされる世の中になってしまった。
三代目が営むうなぎの老舗「清水家」、登録有形文化財気賀町高架橋そば
そして、カウンター席に落ち着き焼き上がりを待っていると、注文したうな重3,300円也が運ばれてきた。 正直なところ、かなりの値上げに驚きを隠せないが、うなぎに限らず二割程度の値上げは当たり前になってしまった。 しかし、ふっくら柔らかく焼き上げられたうなぎと、濃い目のタレとの相性は相変わらずの絶品である。 白焼きの後の蒸しの行程で余分な脂が抜けるのだろうか、胃もたれが気になるお年頃の親父も、滋味深いうなぎをさっぱりといただけるのだ。
ふっくら柔らかい清水家のうなぎ、余分な脂が抜け濃い目のタレが合う
清水家で乗り手の腹を満たした後、家族への土産に細江名物のみそ饅頭を仕入れることにした。 細江のみそ饅頭と言えば、九州福岡から愛知に就職して40年近く、浜名湖方面にツーリングで訪れるたびに立ち寄るお気に入りの店があった。 過去形になってしまったのは、その「福月堂」がコロナ禍の中昨年5月に閉店してしまったのである(泣)。
福月堂のみそ饅頭は、ほんのり黒糖が香るしっとりとした皮が絶品、そして呑兵衛親父にもいける甘すぎず軽いこし餡...バックパックへの仕舞いかたに気を付けねばつぶれてしまうほど繊細だった。 晴れふら親父の子供時代、大型ショッピングモールに押され消えてしまった故郷の商店街で、母親に買ってもらった蒸し饅頭を思い出す一品でもあった。
喪失感どっぷりの親父であるが、今回は気を取り直し、他のみそ饅頭屋に立ち寄ってみることにした。 これまで、見栄えが良い商品が並び客で賑わう他店を訪れてみたのだが、正直なところ、饅頭の皮はパサパサ、甘い餡に胸焼けしてしまった。 今回は、その経験を踏まえての店選びからのリベンジとなる。
2022年5月に閉店した福月堂、絶品みそ饅頭はもういただけない(2009年1月撮影)
小さな食堂や菓子店に魅かれるのは、昭和親父のノスタルジーのせいばかりでは無い気がする。 店主のこだわった手作りだからこそ、少量しかつくれないからこそ実現できる味があるのは間違いない。 その反面、店主のこだわりや小規模経営を伝承してゆくのは難しく、客足が絶えない店なのに、惜しまれながら店じまいする様を何度も見てきている。
個人事業主の苦労など想像もできぬリーマン親父ではあるが、己の衰えと向き合いながらこだわってきたものにどうやってケリを付けるのか、そういう葛藤が多少は分かるお年頃になってきた。 日本の文化とも言える店々を支援し国の繁栄に結び付けられぬ、政治や役所に言いたいことが山ほどあるが...話がどんどん逸れそうなのでツーリングに話を戻したい(笑)。
さてさて、今回立ち寄った細江名物みそ饅頭の店は、天浜線気賀駅周辺の賑わいから少し外れた国道362沿いにある「かじや菓子店」である。 これまで何度も走ったことのある国道沿いだが、ここにみそ饅頭を商う店があるとは一度も気づかなかった。
気賀の賑わいから外れた国道362沿い、手作りみそ饅頭を商うかじや菓子店
あらためて立ち寄ると、昭和親父が子供時代を思い出すような歴史を感じる店構え、どこか懐かしい店内に入ると手作りにこだわった気取らぬ和菓子が並んでいる。 この地味な感じで商売が続いている段階で、美味い饅頭をいただけることは確定であろう。
そして実際に、かじや菓子店のみそ饅頭110円也(税込)をいただいて見ると、ふっくらしっとりした皮、甘すぎぬ軽いこし餡が絶品であった。 飾りっ気はないが上品な甘味は何個でもいただける。
これから、奥浜名湖のツーリングに訪れた時には通うことになりそうだ。 また一つ、永く商売を続けてほしい店が増えることになったが、その前に己がどこまでバイク道楽をつづけられるか、そちらの方を心配した方がよさそうだ(笑)。
かじや菓子店のみそ饅頭、ふっくらしっとりした皮、甘すぎず軽いこし餡
かじや菓子店を探しだして家族への土産のみそ饅頭を仕入れている間に、清水家のうなぎで満腹になった腹も峠を走れるくらいにこなれてきた。 いよいよ、国道363沿いの細江神社脇から奥浜名オレンジロードに駆け上がり、三ケ日まで折り返すワインディングで慣らしを終えたW800 streetの実力を試すことにした。
ツーリングレポート(後半)
相棒のW800 street(2023年型)は、前期型のW800(2011-2016年型)が排ガス規制のため製造中止となり、2019年にWシリーズとして派生復活したモデルである。 2022年にはEuro5準拠の新排ガス規制を、排気量773ccの空冷バーチカルツインエンジンでクリアしている。
慣らし運転を終えたエンジンを回して確認したいポイントは色々あるが、特にカワサキがカタログで謳っていた、W800前期型からの改善ポイントは気になるところである。
まずは、新排ガス規制をクリアしたエンジン特性、ABS義務化に伴いディスクブレーキ化されたリヤブレーキ、そして肉厚化されたダブルクレードルフレームと大口径化されたΦ41㎜フロントフォーク、硬めにセットされた前後サスペンション等々。 実際のワインディングで、己の乗り方との相性を含めてそれらのバランスを確認してみたい。
さて、細江町気賀から駆け上がったオレンジロードを三ケ日方面に向けて走り出すと、徐々に使用するエンジン回転数域を上げながら、気になるところを反復しながら相性の良い乗り方を探してゆく。
奥浜名オレンジロード、浜名湖の絶景よりも慣らしを終えたW800 streetが主役
エンジン性能
これまで、メディアに流れるW800 streetのインプレで、新排ガス規制対応後も存在感ある中低速域のパワーフィーリングに変わりないことは耳にしていた。
前期型と現行型のエンジンスペックの違いは、前期型の最高出力48ps@6500rpm、最大トルク6.3kgf・m@2500rpm に対し、現行型は最高出力52ps@6500rpm、最大トルク6.3kgf・m@4800rpmである。
最高出力が現行型の方が多少高くなっているのだが、それよりも最大トルクを発生するエンジン回転数が、2500rpmから4800rpmへと高くなっているところが気になっていた。 W800 streetが回して乗るのではなく、トルクで乗るバイクであることは間違いなく、乗り味に大きく影響する可能性がある。
実際にワインディングで回してみると、低回転からグイグイと持ち上がるトルク感に新排ガス規制のネガは全く感じられなかった。 むしろ、欧州のUN R41規格に準拠した排気音はかなり元気で、カワサキがこだわった乾いた音質と相まって、スペック以上のパワーを感じることが出来る。 これ以上騒がしくなると、早朝の住宅街からの走り出しにも気が引けるレベルである。
年々厳しくなる騒音規制に反して、高年式車がうるさくなる珍事。 欧米に付き従う我が国の政治や行政を象徴しているようだが、丁度よい塩梅にうるさくなった排気音は歓迎である。
また、最高トルクのエンジン回転数が高くなったことに関しては、結果的にはそれもポジ側に働いてくれくれたような気がする。 まずは2000rpm以下から4000rpm付近まで、重たいフライホイールによる独特の粘るンジンは健在、鼓動感を感じながらトルク感のある走りを体感できる。
そして今回、4000rpmを越えて最大トルクを発生する5000rpm付近まで回してやれば、グイッと強力なトルクが立ち上がってくることをかくにんできた。 4000rpm付近の回転数で360°クランク特有の一次振動が強くなるが、(個人的には)その心地よい振動を目安に、タコメータに頼らず鞭を入れるタイミングを計れるのがありがたい。 高速道路でのインプレはこれからだが、巡行するエンジン回転数に4000rpm付近の振動帯域は避けた方がよさそうだ。
さらに、最高出力に向けて6000rpmを越えて回ることは回るが...どうしてもそこにこだわるなら、回る高出力エンジンを積んだバイクに乗り換えた方が楽しめるかもしれぬ(笑)。
ブレーキ性能
正直なところ、納車直後の走り出して効かないフロントブレーキに唖然とした。 人差し指一本で吸い付くようなタッチで止まる、前の相棒ZX-6Rのブレーキとのギャップに心と体がついて行けず、納車早々キャリパー交換を模索する始末。 しかし、慣らし運転でブレーキパッドのあたりが付いたのか、はたまた、乗り手が効かぬなりの力加減を身に着けたのか不明だが、それなりに停まれるブレーキになってきた。
コーナーリングに関しては、フロンとブレーキによる姿勢変化を抑えぎみに、中低回転域からのトラクションを活かし旋回速度を上げて行きたいところである。 そもそも、フロントフォークがボトムしそうな強制動は必要ないが、緊急回避や下りコーナーでの速度制御など、積極的に現行モデルでディスク化されたリヤブレーキを使えるようにしておきたいところである。
フレームとサスペンション
まず前提として、W800 streetで磨いて行きたいコーナリングについて触れてみたい。 高出力エンジン、強力なブレーキ、高剛性フレームを有するスーパースポーツからは、二、三歩引いたネオクラッシックカテゴリーである。 それゆえに、フロンとブレーキによる姿勢変化を抑えぎみに、低中回転域からのトラクションを活かし旋回速度を上げて行きたいところである。
そして、4000rpm以下の慣らし運転でも感じたことだが、W800の19インチフロントタイヤが18インチ化されたW800 streetゆえに、細身のダンロップK300GP(フロント100/90-18,リヤ130/80-18)と相まって、倒しこみは比較的軽快だと感じる。 しかし、直進安定性よりのキャスター角やホイールベースゆえに、メリハリを付けるために倒しこみのきっかけ作りは必要であろう。
個人的にそのきっかけ作りは一択、幅広のハンドルの逆ステアで倒しこむのが実に気持ちよい。 さらに、リーンアウト気味に腰下で曲げてやれば、何かあってもどうにかできる気になってくる。 そして、低速型エンジンだから許される高めのギアで、早め早めにアクセルと開けてゆくと、360°クランクの心地よい排気音とともに、良い塩梅のトラクションで立ち上がってくれるのだ。
そして今回、そんなコーナー進入の姿勢作りと立ち上がりを意識しながら、最大トルクに向けて5000rpm前後までエンジンを回してみた。 結果的に、進入速度と立ち上がり加速負荷を増やしても、あらためてタイヤ/サスペンション/フレームのバランスが破綻することは無かった。
基本的には、タイヤグリップを探っている時にサスペンションに破綻してもらいたくないし、サス挙動による荷重変化を探っている時に、フレームに破綻してもらいたくない。
W800 streetの場合、お世辞にも全体のバランスの限界が高いとは言えないが、柔軟な細身のバイアスタイヤとスポークホイールの組み合わせで接地感を探る時に、フロントフォークとサスペンションの踏ん張り、さらにそれらを支えるフレームの剛性感に不安を感じることは無かったのである。
今後、色々な峠でのロバストは今後のツーリングを通して確認して行きたいところである。 サーキットに持ち込んで旅バイクの限界を覗くかどうかは、相棒の体調、さらに乗り手の体調と相談しながらになるだろう(笑)。
さてさて、奥浜名オレンジロードを走りきって三ケ日の街中に降りてくると、本坂トンネルを貫けて豊川市街へと続く国道362へと舵を切った。 三ケ日町から豊橋市への境界を越える本坂トンネルを貫けると、奥浜名湖らしいみかん畑の景色は終わりとなり、豊川稲荷を横目に豊川市街の賑わいを抜ける県道5へと道なりに走りつづけた。
国道362で本坂トンネルを貫けると奥浜名湖のみかん畑ともお別れ
そして、県道5が豊川市街を抜けた追分交差点で国道1に合流すると、国道1の南側に並行する旧東海道御油の松並木に立ち寄ることにした。 約300本の松林が並んだ御油の松林は国の天然記念物に指定されており、東海道中膝栗毛では弥次喜多が狐に騙された逸話の舞台にもなっている。
ところで2011年だったと思うが、奥浜名湖ツーリングの帰りに、御油松並木で営業していた”弥次喜多茶屋”に立ち寄ったことがある。 酒類の卸業経営から引退した店主が、酒の倉庫を改装して御油松並木の脇で開いた茶店であった。 古民家風の店内にはジャズが流れ、今時のカフェにありそうな絵面だったが...話をした店主のキャラクターが半端では無かった。
商売にしのぎを削って来たであろう剛腕店主、隠居と言っても己の衝動や生き様を変えられるはずも無く、目くじらを立てて仕事に没頭する自分を茶店の店主に投影し、自分の老後を垣間見たような気がしたのである。
あれから10年を越える時が流れて再訪すると、個性的な店主が営む弥次喜多茶屋は閉店し、居ぬきで開業した新しいカフェが営業していた。 ご無沙汰していた間に、かって言葉を交わした店主に何があったのかは分からぬが、未だ真新しさを感じる建屋にかえって諸行無常の現実を感じることとなった。
仕事やバイク等々、どんな幕引きをするのか思案する還暦親父、小手先のやり方は変えねばならぬが、やりたい本質は変わらない。 小手先の辻褄をどのように合わせたのか、弥次喜多茶屋の店主の話が聞けなかったのは何とも残念である。
ちなみに、現在営業している””Pino Cafe””は釜めしを売りにしたカフェのようである。 未就学児の入店禁止、持ち込み禁止などの看板が掲げられ、観光地でこだわりの店を商う難しさを垣間見る。 そして、Pino Cafeのコーヒーで暖を取り身支度を整えると、御油の松原を抜けて道なりに旧東海道を走りつづけ、合流した国道1で名古屋方面への帰路に着くことにした。
旧東海道御油の松林、記憶に残る”弥次喜多茶屋”は閉店していた
奥浜名湖ツーリングを走り終えて見ると、前半の天浜線の美味いもの駅をまったりと巡る行程から、後半の奥浜名オレンジロードでライディング三昧の行程まで、W800 streetらしい旅のバリエーションが凝縮された一日となった。
特に慣らし運転を終えた後半のレポートでは、空冷バーチカルツインエンジンを思い切り回した感想を長々と書いてしまったが、一言にまとめると”楽しい”ってことだろうか(笑)。 その思い通りに操れるたのしさ、速く走れ(たような気にな)る楽しさは、昭和親父がオートバイに乗りだした頃を思い出させてくれるものだった。 そのライディングの余裕をツーリングを楽しむ方に回せるのが、W800 streetを旅バイクだと感じた由縁なのかもしれない。
実際のところ、絶対的な速さを訴求したSSを駆っても、それを操る親父の技量を公道で試すには無理がある。 かなり背伸びをしたペースで挙動を出さねば、操る楽しさを感じることが出来なかった。 格好をつけてはいるが、簡単に言うと日和っただけなのかもしれぬ(笑)。
そして作りてカワサキに共感するところは、技術とこだわりで排ガス規制や安全基準をクリアし、空冷二気筒バーチカルツイン、360°クランクエンジンを存続させたことだろう。 鼓動感あるエンジンの吹け上がりや排気音に加え、チャコールキャニスタをサイズアップしたタンク下に隠し、ABSユニットを目立たなくして空冷エンジンの意匠を殺さぬ徹底ぶりには感心させられるのだ。 当たり前のように空冷エンジンの乗り味など語っているが、造り続けているだけでも凄いことなのである。
ツーリング情報
やまよし(新所原駅) 湖西市新所原3丁目5841-17 (電話)053-577-4181
グラニーズ(三ケ日駅) 浜松市北区三ヶ日町三ヶ日1148-3 (電話)053-525-2202
グリル八雲(西気賀駅) 浜松市北区細江町気賀10185-3 (電話)053-523-2590
貴長(気賀駅) 浜松市北区細江町気賀429-1 (電話)053-523-0806
清水家 静岡県浜松市北区細江町気賀238-2 (電話)053-522-0063
かじや菓子店 静岡県浜松市北区細江町気賀1081 (電話)053-522-0186
Pino Cafe 愛知県豊川市御油町一の橋10-20 (電話)0533-63-0697
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