2023/02/17 知多半島半日旅、伊勢湾岸沿いに街道を下る(聚楽園大仏、志げ家、櫻米軒、知多広域農道)
セントレア空港へ向かう名鉄常滑線を利用する度に、その車窓から気になっていた眺めがある。 それは、東海市にある聚楽園公園の丘を覆う、木々の上に頭を覗かせる巨大な大仏さまである。
コロナ禍以降、海外への渡航が出来なくなって久しいが、それも解消の兆しがみえてきているのだろうか? ロシアによるウクライナ侵攻や、急激な円安の追い打ちで、まだまだ海外へ旅立つ気にはなれぬ平和ボケ親父だが...そんなことを考えていると、なぜか、名鉄常滑線から見える大仏様のことを思い出した。 そして浮かんだのが、旅の起点とした聚楽園公園で巨大な大仏様を拝顔し、伊勢湾岸沿いに知多半島を南下するツーリングである。
また、これまでの知多半島ツーリングでは、狭くペースが上がらぬ海岸沿いの街道ルートを避け、知多半島中央の丘陵を駆ける知多広域農道を往復することが多かった。 しかし今回は、伊勢湾岸沿いの小さな漁港を繋ぐ、昔ながらの街道を南下してみることにした次第である。 現在はW800 streetの慣らし運転の真っ最中、アップライトなポジションで低速トルクに溢れる旅バイクとならば、また違った旅の景色が見えてくるかもしれない。
国道247で伊勢湾岸を南下、知多半島の先に篠島が見えてきた
ルート概要
名古屋方面-国道247→志げ家→聚楽園公園(南駐車場)-県249→荒尾IC-国247(西知多産業道路)→朝倉IC-市道(サービス道路)-新舞子グリーンライン→新舞子マリンパーク-新舞子ファインブリッジ→新舞子駅前-県468、県252(常滑街道)→丸八(港町5丁目)-市道→本郷南-国247→桜米軒-国247→片名漁港-すいせんロード(花ひろば、佃煮街道)-市道(南知多道路古布IC)→九篠-県279-すいせんロード→堅木-県276-ふるさとロード→ジョイフルファーム鵜の池-県274-県273-南知多道路美浜PA側道→市道→常滑大谷工業団地-味覚の道→東渕馬-知多満作道→深田脇、庄太郎脇東-市道(佐布里池水の生活館)→県254、県252-知多満作道→野崎橋南-市道→横須賀高校北西-国155→横須賀IC-国247(西知多産業道路)→名古屋方面
ツーリングレポート
名古屋方面から名鉄常滑線に沿って国道247を南下すると、天白川を渡ると同時に名古屋市から東海市への市境を越え、程なく東海市聚楽園公園にさしかかった。 未明から飯抜きで仕事を片付けての走り出し、聚楽園公園手前で見つけた「志げ家」のランチ営業に駆け込み、大仏様に参拝する前に遅い昼食をとることにした。
志げ家は以前、”昭和の大衆食堂”として雑誌に紹介されたのを見かけた店である。 小奇麗に改装された店内に入りカウンター席に案内されると、二次元バーコードが印刷された紙切れを渡され、スマホアプリで名物エビ天丼990円也の注文を終えた。
”昭和の大衆食堂”と呼ぶには今時の営業振りに違和感を感じるが...カウンター席から覗く厨房の不愛想に注文を捌く店主の様や、バーコードなど無視して注文を告げる常連親父達を目にし、なぜかホッとする昭和親父(笑)。
聚楽園公園そばの志げ家、昭和57年創業の居酒屋がランチ営業
程なく配膳された名物エビ天丼は、ツヤツヤの米の上に大ぶりの海老天5尾が盛られ、名物を謳うだけの風格がある。 創業以来伝わる甘すぎぬタレは、ボリュームある海老天を軽くしてくれ、脇役のピーマンの天ぷらはアクセントになる。
メニューを見ると、海老天は2尾のみながら、白身魚、イカ、さつまいも等々が盛られた、志げ家天丼880円も用意されている。 食材のバリエーションを楽しみたい方には、こちらのメニューがお勧めかもしれぬ。
名物エビ天丼990円也、ボリュームある大ぶり海老天5尾
5尾のエビ天で胸やけするほどに煩悩を満たした晴れふら親父は、身支度を整えて聚楽園公園の南駐車場へと移動した。 そして、駐車場脇にある駐輪場に相棒を待たせ、園内マップで確認した大仏様に向けて歩き出すことにした。
公園内の丘を越えて進むと、名鉄常滑線から見上げた巨大な大仏が全貌を表し、実際に足元から見上げるとその迫力に圧倒される。 その大きさだけでなく、興味本位で訪れたバイク親父を見下ろす視線に、還暦を過ぎてなお耳順えぬ我が身を、見透かされているような気がしてくる(笑)。
脇に立つ解説板によると、この大仏様は聚楽園大仏と呼ばれ、守口漬けを考案したことでも知られる名古屋の実業家山 田才吉が、昭和天皇の成婚を記念して1927(昭和2)年に建立したとのことである。 高さ18.79mの聚楽園大仏は日本初の鉄筋コンクリート造り、その建造物としての価値が評価され、2021(令和3)年には東海市の文化財に指定されている。
1927(昭和2)年に建立された聚楽園大仏、東海市指定文化財
現在、聚楽園大仏が鎮座する丘からは、製鉄所の先に名港トリトンが架かる臨海工業地帯の景色が広がっているが、大仏の建立当時は伊勢湾を間近に臨む景勝地だったらしい。 才吉が営んでいた聚楽園は、伊勢から移設した聚楽園旅館を中心としたリゾート地で、その名は豊臣秀吉が京都に建てた聚楽第に由来している。 現在の名鉄常滑線の聚楽園駅も、才吉が私有地を供出して設置された、聚楽園最寄り駅とのことである。
製鉄所の先に名港トリトンを望む、かつて伊勢湾を間近に臨んだ景勝地
聚楽園公園南駐車場から県道249を経由して、国道247バイパス(西知多産業道路)へと走り継ぐと、知多半島に向けて南へと進路をとった。 今回の半日ツーリングは、伊勢湾岸沿いの漁港を繋ぐ街道をたどる旅である。 西知多産業道路が朝倉ICに差し掛かると、制限速度70kmの高規格道路から早々に離脱し、新舞子マリンパークへ繋がるサービス道路へと走り出した。
北浜埠頭、南浜埠頭埋め立て地の工場を繋ぐサービス道路、公道ゼロヨンレースを規制するため所々で追い越し車線が遮られているが、行く手も霞むほどの直線道路は爽快である。 ここまで真っすぐだと飛ばそうと思ってもキリがない(笑)、道路沿いに点在する緑に覆われた工場を眺めながら、まったりクルージングしたくなるルートである。
新舞子マリンパークへ繋がる真っすぐなサービス道路
さて、新舞子グリーンラインで新舞子マリンパークに渡ると、さらに新舞子ファインブリッジを渡って新舞子へと上陸する。 振り返ると、新舞子マリンパークの風力発電施設越しに伊勢湾の眺望が広がる。 その後、新舞子駅脇で名鉄常滑線を渡ると、常滑線と並行しながら海岸沿いの集落をつなぐ常滑街道へと南下を始めた。
新舞子から新舞子マリンパーク越しに広がる伊勢湾の眺め
新舞子から大野漁港、鬼崎漁港をつなぐ常滑街道を南下すると、セントレア空港への分岐道路手前で国道247へと走り継ぐことにした。 国道247への分岐にある「丸八」は、蒲池漁港で仕入れた地魚メニューも豊富な食堂である。 走りだしと昼食のタイミングによっては、以前にも紹介した丸八の食堂飯にありつくのも良さげである。
その後国道247が、セントレア空港への分岐を過ぎて常滑市街を抜けると、徐々に漁港の集落をつなぐ昔ながらの街道の風情となってくる。 さらに、常滑市を過ぎて美浜町に入ってからは、海水浴場が点在する海岸沿いの景色となる。 そして南知多町にさしかかると、夏場には内海海水浴場で賑わう街道沿いで、南知多銘菓「波まくら」を土産に仕入れることにした。
立ち寄ったのは江戸時代後期に創業した櫻米軒、浅草で修業した現在の四代目が考案したのが「波まくら」である。 柔らかくしっとりした生せんべいで、程よい甘さの粒あんを巻いた波まくら、呑兵衛おやじもお気に入りの素朴な菓子。 九州福岡から愛知に就職して間もない頃、南知多の民宿で出された波まくらが気に入り、いまでも変わらぬ味を時折買い求め続けている次第である。
店先にW800 streetを停めて購入したのは、真っ白な波まくらに、抹茶風味と梅風味を加えた、15個入り、864円也の詰め合わせ。 保存料も無添加で日持ちもしないが、心配ご無用、クド過ぎぬ甘味は一気に平らげられることになる(笑)。
夏期には内海海水浴場で賑わう国道247沿いにある櫻米軒
南知多銘菓「波まくら」、柔らかい生せんべいで粒あんを巻いた素朴な菓子
櫻米軒の店先で、試食にと渡された波まくらを頬張り、変わらずシットリした触感と軽い甘さを確認する。 程なく箱詰めされた波まくらを、デイパックに詰めて身支度を整えると、再び知多半島先端を目指して国道247へと走り出した。
その後、国道247で伊勢湾を間近に望む海岸沿いを走り続けると、山見海水浴場、豊浜漁港などの賑わいを過ぎて、伊勢湾に浮かぶ篠島が見えてくる。 そのはるか先には、三河湾を挟んで続く渥美半島の海岸線を眺めることが出来る。
そしていよいよ、知多半島先端の師崎にさしかかると、篠島の左手に、日間賀島、さらに佐久島が見えてくる。 今回は旅の起点で昼食を済ませての走り出しだったが、昼時にタイミングを合わせてたどり着けば、新鮮な魚介料理を供する店も多い。
伊勢湾岸を下り篠島が見えてきた、その先に渥美半島を望む
さて、国道247が師崎を過ぎて三河湾側に回り込むと、程なく差しかかった片名漁港から知多広域農道すいせんロードへと駆け上がった。
その後、知多広域農道は、すいせんロード(南知多町)、ふるさとロード(美浜町)、味覚の道(常滑市)、知多満作道(知多市)と、自治体ごとの愛称を変えながら半島中央の丘陵を北上し、旅を走り出した国道247バイパス(西知多産業道路)を経由して名古屋方面へと帰路に着くこととなった。
以前にも紹介した知多広域農道は、農道をつなぐ県道や市道が分かりにくい区間もあり、事前にルート確認しておいた方が無難である。
片名漁港から知多広域農道すいせんロードへと駆け上がり帰還する
正直なところ、今回往路でたどった伊勢湾岸沿いの常滑街道や国道247は、これまで乗り継いできたSSでは辛いばかりのルートゆえに、ペース良く走れる知多広域農道をピストンすることが多かった。 その反動か、アップライトなポジションで空冷二気筒360℃クランクのW800 streetならば、旅バイクの本領を発揮できると期待しての走り出しであった。
実際に走り出してみると、事前の思惑通りに、W800 streetのエンジンのテイストを味わいながら、これまで気付かなかった街道沿いの新鮮な景色が目に留まる旅となった。 また、復路でたどった知多広域農道はやはり文句なし、どんなタイプのオートバイでも、思い思いのペースでクルージングを楽しむことが出来るのではなかろうか。
今回は、ハイシーズン前の平日ツーリングゆえに、伊勢湾沿岸を走る観光車両が少なかった要因もあると思うので、状況に応じて広域農道との使い分けを考えて行きたいところである。
あとがき
前回レポートしたW800 streetとの初ツーリングでは、4000rpm以下の慣らし運転の節目350kmに向けて、150km程度の半日旅を終えていた。 何とも細切れではあるが、今回の半日旅で100km程度の距離を加えた合計約250kmの走行距離となり、次回のツーリングの途中で4000rpm縛りの慣らしを終えることも可能だろう。
カワサキの400cc以上共通の慣らし基準を確認すると、4000rpm以下@~350kmの次の節目として、6000rpm以下@~600kmがある。 しかし、7000rpmがレッドゾーンとなるW800シリーズの場合、6000rpmまで回せればもう慣らしを終えて問題ないだろう。
さてさて、存在感あるエンジンを味わいながら、のんびりと走れる旅バイクとは言っても、峠道や高速道路などのシチュエーションで、それなりにエンジンを回して楽しく走れなければ物足りないだろう。 次回のツーリングでは、回して乗り味を確認できるルートを盛り込んでみたいと思う。
オートバイの性能が乗り手の技量を上回るSSでは感じなかったことだが、どこまで期待に応えてくれるかという楽しみは何とも新鮮である。 速くではなく楽しくっていう枕詞は忘れずにつけておくことにしよう。
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