ZX-6Rとライディング vol.3(サグ調整)
鈴蘭高原からのスクリューダウンヒルで、前後姿勢コントロールの限界を感じた。 急な下りコーナーではあるが、リアブレーキでニュートラルな前後姿勢を保ちながら、フロントブレーキで重心を沈み込ませてゆくイメージ...が持てず、日頃の前のめりのライディング姿勢も気になりだしたのである。 そういえばこれまで、欧州仕様GSX-R1000から乗り換えたギャップなのか、国内仕様ZX-6Rのしなやかな乗り味にサスペンション調整の必要性を気にかけることは無かった。
そして、ツーリングから帰った週末、とりあえずは、リアサスのサグ出しくらいはすませておくことにした。 基本的な調整方針は、リアサスのプリロードを抜いて、下りコーナーへの冗長性も含めて、前のめりに感じるライディング姿勢を緩和する方向であろうか。
初期設定値とサグ調整方針
まずはZX-6R(ZX636GK)の取扱説明書で、サスペンションの初期設定値を確認してみる。 すると意外にも、リヤサスのプリロード以外は全て1名乗車標準にセッティングされているとのこと、さらにそれらの設定値は最弱からわずかに締め込んだ柔らかめの設定である。 日本の交通環境や日本人の体重に合わせてセッティングされているのであろう。
しかし肝心の、今回調整したいリヤサスのプリロードに関しては、初期設定値について触れられておらず、「スプリングを柔らかく感じたり、硬く感じたときは、カワサキ正規取扱店で調整してください」とだけある(笑)。 余談だが、プリロード調整でバネレートは変わらないので、柔らかい硬いが変わることは無いと思う。
仕方がないので、(株)カワサキモータースジャパンのお客様相談室に、リヤプリロードの初期設定値について電話で問い合わせることにした。 その結果、リヤサスのプリロードも1名乗車の標準値に設定されているとのことであった。 そして乗り手の体重は、70㎏~80㎏を想定してセッティングしているそうである。 ついでだからと、設計上理想的なサグ値について質問したら、「お客様のお好みで」ってことであった(笑)。
珍しく我流の減量が功を奏したバイク親父の体重は75kg、期せずしてカワサキがZX-6Rのサスペンションをセッティングした標準体重のど真ん中(笑)。 今後もタンデムシートに他人様を乗せる予定はないので、乗り方の違いでリサスペンションの初期調整は必要なさそうである。
しかし、まあ、前のめりのライディング姿勢が気になったことも事実なので、カワサキモータースのお客様相談センターの指示通り、サグ値をモニターしながらプリロードを抜いてお好みの乗り味を確認してみることにした。 前のめりの姿勢が緩和されて、他のネガも出てこなければ儲けものだろう。
路面の凹凸が大きくジャンプも想定されるダートバイクでは、サグ値をホイルトラベルの1/3に調整して伸/圧サスストロークのバランスをとっていた。 今時のロードバイクは、アンチスクワット効果を見込んで、スイングアームのタレ角が大きく設定されている。 プリロードを抜いて、立ち上がりのトラクションが低下しないか確認する必要がありそうだ。
ZX636GKのホイールトラベルは151mm、サグ値の目安をその1/3とすると約50㎜になる。 約50㎜のサグ値を上限に、前のめり姿勢の改善とトラクションのかかり方に折り合いをつけて行くことにする。
サグ値の測り方と調整結果
できるだけ後輪ハブの揺動軌跡に沿って、ウエイトを結び付けた糸を垂らし、スイングアームに貼りつけた小ぶりの”配線止めフック”の中を通す。 さらに、フックを通した糸の上下に、短いワイヤーをリボン状に撚り付けた。 ここまでで独りサグ調整の準備完了(笑)
そして、まずサイドスタンドを支点にリアタイヤを浮かせ、下側リボンの下がった間隔が1G(車重による沈み込み)となる。 また、乗車して両足を浮かせ上側リボンが上がった間隔が1G'-1G(乗車による沈み込み)となり、両者をたし合わせた数値がサグ値(1G’)となる。 そして、調整前に測定した1G'の初期値は約29㎜であった。
リアサスのプリロード調整は、リアショックアブソーバーのアジャスティングナットで調整する。 上述の通り、調整はカワサキ正規取扱店に頼めとのことなので初期設定値は不明。 ダンパーに切られた調整用のネジ山を目視すると、最弱から二溝分のネジが締め込まれた初期設定が確認できる。
回り止め防止ナットがかなりきつく締められており、マイナスドライバーをハンマーで叩いて強引に調整する(笑)。 調整後のトルク管理もできないので、アジャスティングナットとアブソーバーの位置関係をマーキングしておくことにした。
そして、とりあえずアジャスティングナットを1回転緩めてプリロードを抜いた結果、サグ値1G'は約29mm→約36㎜に増加した。 ホールトラベルの1/3には十分余裕があるが、試乗してみるとその乗り味は劇的に変わっていた。
わずか約7㎜程度サグ値が増えただけで、気になっていた腰高感が随分と緩和されたのだが...それ以上に、アクセルを開けた時のリアの踏ん張りを感じられなくなってしまった。 できればサーキットに持ち込んでコーナー立ち上がりのトラクションを確認したいところだが、クイックシフターを使って直線でフル加速してみるだけでもその差は歴然だった。 GSX-R1000からミドルサイズのZX-6Rに乗り換えてエンジントルクが減った分、そアンチスクワッド効果の差が分かりやすいのかもしれない。
結果として、リアサスのプリロードを初期設定値にもどすことになったが、今後のサスペンションのセッティングと考えていくうえで良いお勉強になった。 相棒のZX-6Rには「楽に旅をしたいならそういうバイクに乗り換えろ」と言われたような気がする(笑)。 取り回しの軽さや回して楽しめるエンジン出力等々、還暦親父が今の相棒に乗り換えた理由は色々あるが、サスセッティングで乗り味の変化を楽しむ相棒としても良さ気である。
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