2025/1/18 [2/2日目]東海道五十三次巡る浮世絵旅 府中宿~由比宿(日本平パークウエイ、日本平夢テラス、薩埵峠、静岡市東海道広重美術館、食事処あおぞら)
歌川広重が浮世絵に描いた東海道五十三次を巡る旅の二日目、初日は駿府城下の府中宿で静岡おでん三昧の夜を過ごし、いよいよ旅を折り返す由比宿に向けて走り出す。
二日目の行程は、東海道五十三次20番目の府中宿から17番目の由比宿までの短い距離になるが、国の名勝地日本平からは足元の三保の松原から駿河湾越しの富士山、さらに由比宿の薩埵峠からは歌川広重が描いた景観と重なる富士山を望む充実した旅になるだろう。
また旅を折り返す由比宿では、由比宿本陣跡に開設された静岡市東海道広重美術館に立ち寄り、これまでたどってきた東海道五十三次の風情を歌川広重が描いた実際の浮世絵で味わうことにする。
そして、東海道五十三次を折り返す復路では、新東名高速道で一気に帰還する予定である。 最新の東海道の制限速度120km/hは、昭和親父が駆るW800streetには十分過ぎるしばりだが、宿場ならぬSAに立ち寄りながら無事に旅をしめくくりたいものである。
旧東海道由比宿本陣(静岡市東海道広重美術館)で浮世絵旅を折り返す
ルート概要
(一日目)
旧東海道池鯉鮒宿の松並木-国1→魚市場食堂 平の屋-国1→旧東海道藤川宿の松並木(西棒鼻跡,東棒鼻跡)-国1→旧東海道赤坂宿(旧旅籠屋 大橋屋)-旧東海道御油宿の松並木-国1→長谷-国42→旧東海道白須賀宿(おんやど白須賀,潮見坂)-国42→大倉戸IC-国1(浜名バイパス)-新居弁天IC→新居弁天ビーチ-国301(西浜名橋,中浜名橋,弁天大橋)→馬郡IC-国1(浜名バイパス)→篠原IC-国1(浜松バイパス,磐田バイパス,袋井バイパス,静清バイパス,掛川バイパス,日坂バイパス)→日坂IC-国1→小夜の夜泣き石-国1(島田金谷バイパス,藤枝バイパス,岡部バイパス)→丸子IC-国1→丸子宿丁子屋-国1→JR静岡駅(駿府城址)
(二日目)
JR静岡駅-国1→長沼-県74(長沼大橋)→池田-県407→聖一色-日本平パークウエイ→日本平夢テラス-清水日本平パークウエイー県198→静岡市立清水病院-市道→見晴橋-国150-清水マリンロード-国1(静清バイパス,富士由比バイパス)→興津雨量観測所-おきつ川通り→興津生コン-東名高速道路側道→薩埵峠-旧東海道→JR由比駅-旧東海道(県370)→静岡市東海道広重美術館(旧由比宿本陣)-旧東海道(県370)→JR由比駅(食事処あおぞら)-県370,県396-国1(静清バイパス)→庵原-県75→新東名高速道路清水いはらIC
ツーリングレポート(二日目)
JR静岡駅北口のホテルで軽い朝食を済ませると、旅を折り返す由比宿に向け国道1へと駆け出した。 このまま駿府城下の府中宿を抜けて駿河湾沿いへ走り続けると、江尻宿、興津宿、そして由比宿へと道なりにたどり着くことが出来るはずである。
しかし折角のバイク旅、静岡側から日本平パークウエイを日本平に駆け上がり、清水日本平パークウエイで清水側へ駆け降りるワインディングを経由することにした。 そして、広重が三保の松原を遠望する景色を描いた江尻宿で、東海道五十三次に再合流する算段である。
さて、二日目は土曜早朝の走り出し、初日のような通勤渋滞もなく順調に静岡市街を抜け、長沼大橋へと分岐して日本平パークウエイ入り口にたどり着いた。
今更ながらではあるが、日本平は標高307mの有度山山頂に位置する国の名勝地で、足元に三保の松原を見下ろし、その先の駿河湾越しに富士山や伊豆半島を望む。 また、全長約10kmの日本平/清水日本平パークウエイは、1964年に有料の観光道路として全線開通し、2004年には無料化されたドライブルートである。
静岡市街を抜け日本平パークウエイを日本平に向けて駆け上がる
実際に日本平パークウエイに駆け上がってみると、早朝のせいか先行車両も無く己のペースでツーリングを満喫することとなった。 変化に富んだコーナーが連続し簡単では無いが、その分ライディングに集中することが出来るだろう。
また、路面はそれなりに荒れておりロバストなライディングを要求されるが、無粋で時には危険にも感じる減速帯が敷設されていないのがありがたい。 ご多分に漏れず、徒党を組んだ暴走行為が社会問題になったらしいが、静岡県警の取り締まり強化を経て現在に至る。 本来の地域振興の目的を見失わず、時として危険な減速帯など敷設せず、取り締まりに汗を掻く静岡県の姿勢に敬意を表したいところである。
そして、日本平山頂駐車場まで駆け上がり駐輪スペースに相棒を停めると、2018年に静岡県が開設した展望施設、日本平夢テラスに登ってみることにした。 現在は指定管理者制度で運営されているらしいが、何よりも無料で利用できるのがありがたい。
日本平夢テラスに歩きながら駐車場を見渡すと、観光バスや家族ずれで賑わう前に早朝ドライブに訪れたであろう四輪がチラホラ、真冬の早朝に訪れるもの好きなバイク乗りは己だけであった(笑)。
日本平山頂にたどり着くと、二輪駐車場に相棒を停めて日本平夢テラスへ歩く
程なく日本平夢テラスにたどり着くと、エレベーターで3Fの展望回廊に上り、いよいよお目当ての富士山を探す...っが、足元の三保の松原から駿河湾へと視線を移しても、日本一の頂を拝むことは叶わなかった(泣)。
実際のところ、これまでツーリングに限らず、仕事で富士の裾野を訪れることも多かったのだが、富士の頂を望める機会は意外に少なかった。 今回もまた、小学生の頃に「頭を雲の上に出し~♪」と歌った歌詞を噛みしめることになった次第である。
富士を覆う雲が流れ去ってくれぬかと待ってみるが、名古屋から訪れたバイク親父の都合で富士が顔を出してくれるはずも無く、こればっかりは足しげく通うしかないと走り出すことにした。 一応、今回のツーリングレポートの体裁を整えるために(笑)、以前に姿を見せてくれた時の富士の写真を掲載させていただくことにする。
日本平山頂から三保の松原、そして駿河湾越し富士山...を望めず(泣)
日本平山頂から駿河湾越しに望む雲をまとった富士山(2014年9月撮影)
その後、日本平山頂から清水日本平パークウエイへと駆け降り、名勝三保の松原が続く三保半島の付け根まで下ってくると、三保半島に囲まれた折戸湾から駿河湾を臨む清水港沿岸へ、国道150を道なりに北上して国道1に再合流した。
ところで、歌川広重が描いた東海道五十三次では、江尻宿、興津宿、そして由比宿まで、駿河湾を望む海沿いの景色が描かれている。 そして、興津宿から由比宿に至る海岸線は薩埵山が海に突きだす地形となっており、気を抜くと波にさらわれる東海道の難所であった。 そのため、1607年の朝鮮通信使が江戸を訪問する際に、山側の迂回ルートとして切り開かれたのが薩埵峠を越える旧東海道とのことである。
現在の国道1や東海道本線が走る海岸沿いは頑丈な護岸工事が成され、また東名高速道は海上を渡る高架道路が敷設されている。 それゆえ、かつての難所を意識することなく通過できてしまうのだが、今回の東海道五十三次旅では広重が描いた薩埵峠を越えて由比宿に入ることにした。
さて、国道1を由比宿方面へ走り出し江尻宿と興津宿付近を過ぎると、興津川を渡った対岸を遡り東名高速道路の側道へと分岐した。 四輪なら尻込みしそうな狭道ルートになるが、オートバイの機動力なら問題ないだろう。 その後鬱蒼とした薩埵山の峠道を駆け上がって行くとみかん畑が広がり、広重が東海道五十三次由比宿の風景として描いた薩埵峠にたどり着いた。
歌川広重が東海道五十三次で描いた薩埵峠を目指し旧東海道を駆け上がる
まずは静岡市が開設した薩埵峠展望台に立ち寄り、広重が描いた浮世絵と同じ構図を探すも...残念ながら、切り立つ山肌に貼りつくような峠道の先に、名峰富士の頂を望むことは叶わず(泣)。
その後しばらく、崖下の海岸を走る、国道1、東海道本線、東名高速道、さらにその先に広がる駿河湾と対岸の伊豆半島の絶景を眺めて過ごすも、富士を遮る雲が流れることは無かった。 そして諦めきれぬバイク親父は、またここを訪れる理由が出来たと負け惜しみを呟き、由比宿でいただく桜えびに頭を切り変えながら旧東海道を下って行くことにした(笑)。
東海道五十三次で広重が描いた薩埵峠、同様の画角ながら主役の富士が見えず...
薩埵峠を後にすると、急峻な山肌に貼りつくような旧街道を下って行き、東海道五十三次16番目の由比宿にさしかかった。 その道中、1998年に国の登録有形文化財に指定された小池家住宅など、当時の雰囲気が残る町家通りを抜け、JR東海道本線の由比駅にたどり着いた。
由比駅から始まる旧東海道は由比桜えび通りの愛称を持ち、由比漁協の直売所など由比名物の桜えびを販売する魚屋や、桜えび料理をいただける料理店が点在している。 桜えびのフィギュアが飾られた桜えび通りの入り口ゲートをくぐると、まずは、それらの美味いものをスルーしながら、由比本陣公園内にある静岡市東海道広重美術館を目指すことにした。
余談だが、薩埵峠で姿を見せなかった富士山が、桜えび通りのゲート越しにチラチラと思わせぶりに顔を出し、スマホカメラを構えるとまた雲に遮られるを繰り返す。 まったくって昭和コントのような展開に、残りの道中、もう富士山に視線を向けぬと心に決めた(笑)。
JR由比駅前から始まる由比桜えび通り、由比名物桜えびの販売所や料理店が並ぶ
さて、由比桜えび通り抜けて由比本陣公園にたどり着くと、裏手にある駐輪スペースに相棒を待たせ、公園内にある静岡市東海道広重美術館を訪れた。 1994年に開館した静岡市東海道広重美術館は、日本で初めて広重の名を冠した美術館とのことで、歌川広重の代表作を中心に約1,400点の浮世絵版画が展示されている。
入館チケット520円也を購入して入館すると、版画刷り体験コーナーやミュージアムショップがあるエントランスをぬけ、順路に沿って展示作品を見学した。
実際に刷られた浮世絵を目の当たりにすると、精密な彫で描かれた江戸の風俗、微妙なぼかしで刷られた臨場感ある表現など、本物のリアリティや風合いに時を忘れることだろう。 作品の劣化防止のため展示室の照明は暗いので、特に視力が衰えた年寄りは老眼鏡持参で訪れた方が良いかも知れぬ。
由比宿本陣公園の静岡市東海道広重美術館、広重の浮世絵版画を中心に1,400点を所蔵
見学を終えるとエントランスの売店に立ち寄り、東海道五十三次の由比薩埵嶺の絵葉書を購入した。 レポートの落ちでは無いが、ここで初めて薩埵峠から望む目論見だった富士山とのご対面と相なった(笑)。
広重の東海道五十三次由比薩埵嶺、今回の旅で叶わなかった富士とのご対面(笑)
静岡市東海道広重美術館の見学を終えると、いよいよ今回の東海道五十三次旅を名古屋方面に向けて折り返すことにした。 駿府城址の府中宿を早朝に走り出した二日目だが、予定通り由比宿で昼飯時となり、由比名物の桜えび料理をいただいて、新東名高速道もよりのインターを目指す段取りとなった。
ちなみに、駿河湾だけで許可されている桜えびの漁期は、春漁3月中旬~6月初旬と秋漁10月下旬~12月下旬の年二回、それ以外の時期は桜えび保護のため休漁となる。 現地だから味わえる生桜えびが目的の人は、春と秋の漁期に訪れる必要がある。
今回は、観光ガイドにも紹介される由比漁協の販売所や老舗の桜えび料理店をスルーして、JR由比駅前にある食事処あおぞらに立ち寄ることにした。 15年程前になるだろうか? かつてツーリングで立ち寄った折、薩埵峠を歩くハイカーに勧められて訪れた食事処である。 一見、軽食を供するありがちな駅前喫茶の風貌だが、店を切り盛りするおかあさんが揚げる桜えびが絶品だった。
JR由比駅前の食事処あおぞら、駅前喫茶の風貌だが桜えびのかき揚げが絶品!
店横の駐車スペースにW800 streetを停めて店内に入ると、昼時には少し早いのか一番乗りの客となった。 ワンオペ飲食店の参考書のようなU字カウンター席に落ち着き注文したのは、お目当ての桜えび定食1,500円也である。
そして、運ばれてきた桜えび定食はバイク親父の記憶にたがわず、極限まで薄い衣をまとった桜えびのかき揚げはひたすら軽く、桜えびの甘さや歯ごたえを堪能することとなった。 それを邪魔せぬ海老塩でいただくスタイルもなかなか計算されている。
休漁期間のせいか釜揚げの桜えびがシラスに変わっていたが、白飯が進む桜えびの佃煮、そして出汁の効いた良い塩梅の味噌汁と、15年前と変わらぬ上品な完全飯をゆっくりと味わうことが出来た。
桜えび定食1,500円也、ひたすら軽~く揚がった桜えびを海老塩でいただく
食事処あおぞらで気取らぬ桜えび料理を満喫すると、いよいよ旧東海道から国道1由比富士/静清バイパスに乗り、新東名清水いはらインターから帰路に着くことにした。 初日にたどった旧東海道沿いの宿場をまったりと走り継ぐ行程と対照的に、二日目は制限速度120kmの最新の東海道で2025年の走り初めを一気に締めくくることとなった。
普段はただ通り過ぎるだけになることが多い東海道だが、土地々々の宿場に残る風景や逸話をたどりながら旅すると、普段は混雑がわずらわしいだけの幹線国道の旅もまた違って観えてくる。 また15年振りに再訪した薩埵峠では、今回も名峰富士を望むことは叶わず残念だったが、そう簡単に心に刻む景色に出会えぬものだと溜飲を下げることとなった。
家にたどり着いて熱い風呂に浸かると早速、2025年走り初めの思い出に浸りながらも、新たな宿場を巡る旅や富士の頂を望む旅を思い巡らしにやける親父である。 還暦を過ぎたバイク親父ゆえ、残された時間はそう長くは無いのだが、今年も焦ることなく新しい思い出を刻み続けたいものである。
ツーリング情報
日本平夢テラス 静岡県静岡市清水区草薙600-1 (電話)054-340-1172
薩埵峠展望台 静岡県静岡市清水区由比西倉澤 (電話)054-221-1071(静岡市観光交流文化局)
静岡市東海道広重美術館 静岡市清⽔区由⽐297-1 (電話)054-375-4454
食事処あおぞら 静岡市清水区由比今宿195-1 (電話)054-375-2411
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