W800 streetとライディング vol.4(W800 streetのプロフィールとオートレーサー乗り)
昭和親父の琴線に触れたW800 street(2023年型)、そのそふらっと立ち寄ったバイクショップの衝動買いから二年が過ぎた。 最新のリッターSSからミドルサイズのSSへ乗り継いでも、旅先の峠で回し切れぬストレスを解消するには至らず、今一度操る楽しみを味わいたいとネオクラッシックへの乗り換えであった。
その衝動買い以降、踏ん張りが効かず直ぐに接地してしまうステップや、中高速コーナーで揺れが収まらぬサスペンションなど、違和感があったパーツを一通り換装し終えたところである。 今更ながらではあるが、あらためてW800 streetのプロフィールを振り返り、晴れふら親父が思い描くライディングについてまとめ直しておくことにした。
W800 streetのプロフィール
W800 street(2023年型)は、排ガス規制のため製造中止となった前期型のW800(2011-2016年型)が、2019年にWシリーズとして派生復活したモデルである。 2022年には、排気量773ccの空冷バーチカルツインエンジンで、Euro5準拠の新排ガス規制をクリアしている。
また、欧州のUN R41規格に準拠した排気音はかなり元気で、カワサキがこだわった乾いた音質と相まって、非日常に浸る手助けになるだろう。
エンジンスペックは、前期型の最高出力48ps@6500rpm、最大トルク6.3kgf・m@2500rpm に対し、現行型は最高出力52ps@6500rpm、最大トルク6.3kgf・m@4800rpmになっている。 最大トルクを発生する回転数が高くなっているが、重たいフライホイールによる慣性の強いエンジン特性は変わりない。
その他、新排ガス規制対応以外にも、ABS義務化に伴うリヤブレーキのディスクブレーキ化、そして肉厚化されたダブルクレードルフレームと大口径化されたΦ41㎜フロントフォーク、硬めにセットされた前後サスペンション等々、前期型に対する性能向上が図られている。
排ガス規制や安全基準に必要なデバイスをタンク裏やフレームの隙間に納め、シンプルな空冷バーチカルツインエンジンのテイストを復活できるのは、カワサキのWブランドへのこだわりと技術力によるところが大きいのではないだろうか。
ちなみに、標準モデルであるW800とW800 streetの主な相違点は、前輪が18inchに小径化され幅広のアップハンドルが装備されている点である。 標準装備のダンロップK300GPは、フロント100/90-18、リヤ130/80-18サイズのバイアスタイヤで、スポークホイールと合わせたチューブ仕様となっている。
W800 street(2023年型)、前後18inchホイールと幅広のアップハンドル
ライディングスタイル(オートレーサー乗り)
実際に、W800 streetを峠道に持ち込んでみると、前後18インチホイールと細身のバイアスタイヤによる軽快な切り返しを、アップライトなポジションの腰下で操る楽しさの虜になってしまった。 慣性の強いエンジン特性を活かしたライディングを、緩やかに弧を描くアウト・イン・アウトのコーナーリング・ラインに乗せてゆくわけである。
慣性の強いエンジン特性を活かすと言えば聞こえはいいが、レスポンスの悪いエンジンの回転数を落としたくないだけとも言える(笑)。 また、効かないフロント・ブレーキや撚れる車体を補うために、リアブレーキでコーナー進入時の制動を補いながらフロント荷重を抑え、メリハリを付けたいターン・インのきっかけは、カウンター・ステアの一択になる。
強力なフロントブレーキと高剛性フレームに命を預け、制御デバイス頼みの速度域に踏み込むSSとは対極のライディングだが、己の裁量で限界を感じながら操る楽しみに夢中になる。
体重をあずけるしかできぬ高速コーナーなど、限界に踏み込んで楽しむには無理がある場面もあるが、体重を落としこむのが難しかった下りヘアピンなど、様々な場面でそれなりに操る楽しみを体感できるようになったと感じる。
そして突然だが、W800 streetと共にはまったそのライディングスタイルが、動画サイトで偶然見かけたオートレースのライディングに重なってしまった次第である。
オーバルコースに特化した段違いのハンドルは兎も角、慣性の強い空冷二気筒エンジン(二速)、効かないフロントブレーキ(付いていない)、アップライトなポジションで細身のバイアス・タイヤを深く倒しこんで行くオートレーサー乗りは、W800 streetを乗りこなした先にある究極のライディングなのである。
秋葉街道の地蔵峠越え、九十九折れのダウンヒルもそれなりに楽しめる♪
現在のWシリーズの前身を振り返ってみると、500メグロK2@1965年、650W1@1966年、W1SA@1970年、そして650RS(W3)@1973年まで、未舗装道路も多くオン/オフの区別も無かった時代のバイクであることが分かる。 それ故、そのブランドを継承する現在のWシリーズも、ロバストな旅バイクとして様々なシーンでライディングを楽しめることもうなずける。
今回初めて乗った空冷二気筒バイク、今さらながらではあるが、スペックだけでは語れぬ奥深さがあることを知った。 これから先、還暦を越えた昭和親父が乗り続けられる時間は限られるが、それゆえにまだ知らぬ領域に踏み込んでみたいと思うようになった。 マルチタスクが苦手なシングル・コア親父である。 モタードでサーキット通い、アルプスローダーで林道巡り等々、目移りばかりする今日この頃なのである(笑)。
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