2023/03/20 治部坂峠越え妙琴公園でジビエ自炊飯((有)かとう、農免道路西部山麓線)
春分の日を迎えた名古屋地方にも桜の開花が宣言され、最近定番となった春秋飛ばしの夏冬二極化の傾向どおりに、日中の気温は急激に高くなる気配を見せている。 前回レポートした、中濃地方の山間を巡るツーリングで、さらに北へと標高を稼ぐ手ごたえを感じた晴れふら親父は、早速標高千メートルを超える峠へと走り出すことにした。
そしてたどったのは、三河地方の豊田市足助町から南信州の飯田市にむけて、三州街道こと国道153を北上するルートである。 江戸時代から明治にかけ、三河湾の塩を馬の背で信州へ運ぶ中馬街道として栄え、現在も三河と南信州を結ぶ幹線国道として利用されている。
西三河と南信州を結ぶ王道のツーリングルートとも言えるのだが、その道中にある、治部坂峠(1,187m)、寒原峠(10,73m)が凍り付く冬場には、二輪で走り出すことが叶わぬエリアとなる。 流石に街中の桜が咲きだす時期に路面凍結の心配は無いだろうが、街中で蒸されず峠越えで凍えぬ身なりを思案せねばならず...そして、大抵は、失敗する(笑)。 春の気配に浮足立ったバイク親父は、煩わしい冬物を脱ぎ捨てて走り出し、山岳ルートの峠越えで凍えてきたのだ。
今回もその例にもれず? 薄手のインナーに皮ジャケットを羽織った春装備の親父は、東海環状道豊田勘八インターから三州街道へと走り出し、飯田方面へと北上しながら徐々に標高を稼いでいった。 果たしてその結末は...。
そして、三州街道峠越えの旅を折り返した飯田では、農免道路西部山麓線でたどりついた無料キャンプ場で白飯を炊き、南信州のジビエ肉を焼いて食らうことにした。 思い返せば20~30年前のことになるが、なぜに今回、かつて林道わきで野宿していた頃の道具を引っ張り出して飯を炊くことになったのか、そのなりゆきも合わせてお伝えしてみたい。
農免道路西部山麓線伊那谷ごしに南アルプスの稜線を望む
ルート概要
東海環状道豊田勘八IC-国153→中金町日影-県344→豊田市立大蔵小-県33→豊岡-国153→月瀬の大杉-国153→治部坂峠(1,187m)、寒原峠(10,73m)-国153→阿智川大橋-国256→昼神温泉((有)かとう)-国256→阿智川大橋-国153→コメリ飯田山本店-農免道路西部山麓線→切り石樋の沢-鼎さわやかロード→妙琴公園キャンプ場-鼎さわやかロード→切り石樋の沢-農免道路勢ぐ山麓線→コメリ飯田山本店-国153→尾々下-県366→加茂広域農道-県33-加茂広域農道-県364-加茂広域農道-国420-加茂広域農道-県363→下山支所北-県77→根崎-国301→東海環状道豊田松平IC
ツーリングレポート
最近クローゼットの中を整理していると、かつて林道ツーリングの道中で野宿していたころのキャンプ道具に目が留まった。 その後、家族と出かけたオートキャンプの道具に隠れて、20~30年眠っていたことになる。 急に懐かしくなった親父は、MSRのウイスパーライトを取り出し、ハイオクが残っていたボトルをポンピング...っと、ボキッ!! 樹脂製のポンプが潔く破損してしまった。
さようならウイスパーライト!! ガソリンをばらまき放火する輩が徘徊し、コンプライアンスまみれになった物騒な世の中、いまさら還暦親父が道端でプレヒートの火柱を上げる時代では無くなった。 しかし、いざマイ飯炊きバーナーを失ってしまうと、なんだか心に穴が空いたような気がしてきた。 そして、無難なカセットボンベバーナーでも探してみようと、久しぶりにキャンプ道具店を訪れた。
何気なく今時のキャンプ道具を眺め歩いていると...店内には格段に進化した小型軽量の道具が溢れ、軽いカルチャーショックを受けることとなった。 そして、目が泳ぐキャンプ初心者らしき親父がよほど不憫に見えたのか、女性店員からやさしく声をかけられ、「これは、ゆ・る・きゃんに出てましたよ」と勧めていただく。 がっ、「ゆ・る・きゃんってなんですか???」と聞く親父をスルーし、その店員は所在無げにどこかへ消えていく...
コロナ禍のせいか、世の中は空前のキャンプブームらしい。 これは仕切り直さねば、と還暦親父は我に返り、尻尾をまいて逃げ帰ることになった。 その後、破損したMSR以外の野宿道具も確認してみると、たき火で焦げたテントは穴が空き、ポールのショックコードは伸び切っているし、エアマットには風穴が...結局は、使い物にならなくなった道具を全て揃え直すことになった次第である。
そして、今時のキャンプ道具をネットで品定めしていたときに、遅まきながら「ゆるきゃん」の意味を知る。 それを知らなかった己以上に、店員に、ゆるきゃんファンに見られていたことが恥ずかしくなる親父であった(笑)。 時代はもう変わっている、道端野宿の雉打ちルールなんぞ論外、不審な親父は通報されるか親父狩りに合う世の中なのである。
さようならウイスパーライト、無難なカセットボンベコンロに買い替え
ってなドタバタがあって、凍った峠が融けるのを待つ間に、総入れ替えすることになったキャンプ道具である。 泊まり旅での使い初めはもう少し先に譲るとして、とりあえずは昼飯をこしらえる道具、テーブルや椅子をデイパックに押し込み、春分ツーリングへと走り出すことにした。 道中で南信州のジビエ肉でも仕入れてゆけば、思い当たる飯田市の無料キャンプ場で、新しい炊飯道具の使い勝手を試してみることが出来るだろう。
さてさて、前置きが随分と長くなってしまったが、東海環状道豊田勘八インターから国道153へと駆け降りると、矢作川が越戸ダムでせきとめられた勘八峡の景色に出迎えられる。 そして、国道153で水面をまたぐ東海環状道勘八橋の足元をくぐり、塩の道中馬街道の中継地となっていた足助方面へと北上を開始した。
勘八峡を越える東海環状道勘八橋、巨大な橋脚の脇を潜り北上を開始する
そして、国道153を飯田方面へと走り出す時の足慣らしとして重宝するのが、中金町日影交差点から分岐して足助を迂回する県道344である。 足助バイパスが開通した現在は、香嵐渓付近の渋滞は随分解消されたが、かつて渋滞を迂回した里山ルートは今も足慣らしとして重宝している。
県道344に分岐すると、いくつかのゴルフ場脇を抜けて里山を縫う峠道が始まる。 中低位速コーナーが連続する峠道、W800 streetのバーチカルツインエンジンとの相性は抜群である。 重たいフライホイールの慣性で、トルクが出るエンジン回転数を維持しながら、ドドドドドッと乾いた排気音と共に立ち上がる。
ゴルフ場を抜ける県道344で足慣らし、足助が渋滞したときの迂回路
県道344は道なりに県道33へと続き、合流した国道153を飯田方面へ向けてさらに北上する。 北へ走るとともに標高が徐々に高くなり、路側の気温も10℃を下回ってきた。 やはり今回も、薄手のインターに皮ジャケットの井出達で走り出した親父は、冬から春への衣替えを早まったことを後悔する。 とほほほほっ。
たまらず、稲武に差しかかったところでコンビニに駆け込み、使い捨てカイロを探すも...同じ境遇の先客がいたのか、品切れ状態(泣)。 そして、飯田に向けて最後となるコンビニで、売れ残った不揃いの使い捨てカイロを搔き集め、腰、肩、そして手袋の甲に使い捨ての暖を仕込み安堵する。 ふ~っ。
その後、稲武から走り出して程なく、愛知県豊田市から長野県根羽村への境界を越えたところで、推定樹齢1500年を越える”月瀬の大杉”に挨拶して行くことにした。 スギの大枝が折れると悪疫の流行や事変が発生すると伝えれており、新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻の痕跡を探してみるのも一興。
毎度のことだが、己の寿命よりも桁違いに長い年月、ここに立ち続けてきた大杉の前では、これからもこの世が続くことを教えてくれているようで、ホッとする。 冷えた身体はコンビニの使い捨てカイロで温め、冷えた心は大杉の生命力で温めてもらう。 ところで、W800 streetとここを訪れるのは初めて、相棒にも大杉様のご利益をおすそ分けできただろうか。
推定樹齢1500年を越える月瀬の大杉、悪疫や事変が発生すると大枝が折れる
道の駅「信州平谷」を過ぎてさらに駆け上がって行くと、緩やかな弧をえがく柳川橋で深い柳川谷を渡り、いよいよ矢作川水系から天竜川水系への分水嶺を越える、標高1,187mの治部坂峠に差しかかった。
緩やかな弧を描く柳川橋、柳川谷を渡り治部坂峠へ駆け上がる
治部坂峠で長野県下伊那郡平谷村から阿智村への境界を越えると、直ぐ右手に治部坂高原スキー場のゲレンデに残る雪が目に入った。 そして路側の気温は4℃! 街中の陽気に花見気分で走り出した親父は、治部坂峠の雪と凍える寒さに焼きを入れられる。 日本刀は焼き入れで硬く強靭になるが、鈍った還暦親父は硬くなるどころか脆くなるばかり、心は一足早く飯田のキャンプ場へと幽体離脱し、炊き立て飯の妄想でで焼き戻される(笑)。
標高1,187mの治部坂峠、スキー場ゲレンデには雪が残り、路側の気温は4℃
凍える治部坂峠から飯田方面へ逃げるように下り始めると、標高1,073mの寒原峠にさしかかった。 寒原峠の標高は治部坂峠よりも低いが、山影となる峠の体感温度はさらに低く感じる。 冷たい風に凍えながらダイナミックなコーナーを下ってゆくと、時折冠雪した南アルプスの稜線が頭を覗かせてくれる。 この景色は、冷たい風に耐える親父を不憫におもった山の神からのご褒美であろう。
標高1,073mの寒原峠を凍えながら下る、伊那谷越しに南アルプスの稜線が覗く
国道153を昼神温泉まで一気に駆け降りると、ジビエ肉を販売する有限会社かとうに立ち寄り、昼飯の食材を仕入れることにした。 購入したのは、遠山郷のジビエ肉店「肉のスズキヤ」の「遠山ジンギス金印」780円也。 冷凍の味付け肉なので、飯場にたどり着くまでに自然解凍され、あとは焼くだけのお手軽メニューだが、スズキヤが遠山郷で仕込むジンギスカンに外れはないだろう。 その他、南信州の馬刺しや鹿刺し等々、生のジビエ肉も揃っているので、自炊地に移動する間の保冷バック等を用意しておいた方が良いかもしれぬ。
昼神温泉の肉や(有)かとう、昼飯に焼く南信州のジビエ肉を仕入れる
昼神温泉の有限会社かとうで遠山ジンギスを仕入れると、国道153を飯田市街方面へと折り返し、中央道飯田山本ICの手前にあるホームセンターコメリ脇から、農免道路西部山麓線に駆け上がった。
中央道の北側丘陵を走る農免道路西部山麓線からは、飯田市街の先に広がる伊那谷越しに南アルプスの稜線を望むことが出来る。 この時期まだリンゴの開花には早いようだが、もうそろそろ農道脇のリンゴ畑には、赤・青りんごの可憐な花が咲き乱れる事だろう。
そんな時期にバイクで訪れると、甘い香りを身にまといながらライディングを楽しむことが出来る。 寒い寒いと文句ばかり垂れてはいるが、五感で刷り込まれた旅の思い出は、消えることが無い体験価値として積み重なる。 還暦親父が己の衰えを感じながらも、艱難辛苦のバイク旅にこだわる理由の一つがそこにある。
農免道路西部山麓線、伊那谷越しに連なる南アルプスの稜線
農免道路西部山麓線から鼎さわやかロードに分岐すると、道沿いの松川に沿って上流へと遡り、ほどなく目的地の妙琴公園キャンプ場にたどりついた。 妙琴公園キャンプ場は、飯田市が管理する予約不要の無料キャンプ場、水場や水洗トイレも備えて掃除も行き届いている。 本格的なアウトドアシーズンには早いのか利用者はまばら、ごみの持ち帰り等々、使い勝手が良い施設が無くならないように利用マナーに気を付けたいところである。
飯田市の妙琴公園キャンプ場、掃除が行き届いた無料キャンプ場
ところで、キャンプ場へ向かう飯田市街の気温は19℃! 治部坂峠での冷え込みがうそのような暖かさに蒸し上がった親父は、皮ジャケットを脱いで使い捨てカイロを仕舞い込む。 やはり、季節の変わり目のツーリングでは、体温調整が可能な装備が必須なのである。
そして、だれもいない芝生に道具を広げて米に水を吸わせる間、グランドチェアで仰け反り何もしない時間を楽しむ。 日頃はせっかちな唯我独尊?親父も、旨い白飯にありつくためには気長になり、失敗すれば未熟な腕を嘆くことになる(笑)。
白飯が炊けて蒸し上がる頃合いを計り、先ずはシェラカップで味噌汁を沸かし、香ばしく焼けた遠山ジンギス金印、炊き立ての白飯、そして香の物 ん~満足の昼飯。 ふらっと訪れて食堂飯をかき込む昼飯に比べると、準備や片付けに時間を取られる自炊飯ではあるが、たまには良いものである。
日頃は食堂飯をかき込むツーリング、たまには自分で炊く飯も良いものである
食事を終えると、遠山ジンギスのパッケージ等のゴミを用意した密閉袋に詰め込み、妙琴公園キャンプ場を後にすることにした。 往路へと折り返す帰路ゆえ、20℃近くの飯田市街から5℃に満たぬ治部坂峠へ一気に駆け上がることになる。 今一度皮ジャケットを羽織り、使い捨てカイロを仕込み直すと、国道153を豊田方面へと走り出した。
午前中から午後へ、上った日が沈みかける時間帯となったが、基本的には往路でレポートした峠の冷え込みは変わらず、歯を食いしばりながら復路を急ぐことになってしまった。 それでも、豊田方面へ走るにつれて徐々に暖かくなり、W800 streetの足慣らしに立ち寄った加茂広域農道の入り口の気温は15℃♪ ライディングにもってこいのコンディションでツーリングをしめくくることになった。
国道153から加茂広域農道に分岐しW800 streetの足慣らし
バリエーションに富んだ中低速コーナーが続く加茂広域農道に、新しく相棒となったW800 streetを持ち込むのは初めてのことである。 流石にこれまで乗り継いできたSSに比べると、走る・曲がる・止まるの全てのパフォーマンスが低いことは否めず、加茂広域農道はその基本性能の差が出やすいタフなコースでもある。
しかし、空冷バーチカルツイン360°クランクエンジンの中低速トルク、細身のバイアスタイヤとスポークホイルのしなやかな接地感、それをバランスよくまとめたフレームとサスペンション、そしてアップライトなライディングポジションの操作感...それらの乗り味を楽しみながら旋回速度を上げてゆく満足感はもう手放せそうにない。
できれば、タイヤを使い切る前に接地するステップだけは、もう少し設計を詰めていただきたかったところ。 特に、落差のあるタイトな上り下りコーナーでは、かなりの頻度でバンクセンサーが削れてしまう。 バックステップってのは似合いそうに無いし...もう少し旅を重ねて、走り込んでみて、己のライディングと相棒に手を入れる方向性を考えて行きたいと思う。 ターマックからダート、トラックからツアラーまで、何にでも変身できそうな相棒である。
加茂広域農道でW800 streetとのライディングを満喫して国道301へ走り継ぐと、東海環状道豊田松平ICから名古屋方面へと帰路に着くこととなった。
さて、標高1,187mの治部坂峠を越えるツーリングは、結果的に防寒対策が足りず凍える結果となってしまった。 何度同じ失敗を繰り返しても、勇み足で操作性に欠ける冬物を脱ぎ捨てる性分は変わりそうにない。 せめて、季節の変わり目の旅では、峠で着込めるインナーや使い捨てカイロを持参する位の学習能力は備えておきたいものである。
一方、妙琴公園キャンプ場の自炊飯は思った以上に満足できる結果となった。 そして、今時の小型軽量の道具はやはり優れもの、今回の様に、ちょっとした昼飯道具程度なら小さなデイパックに納まってしまうし使い勝手も良い。 その他にも、ハイテク素材の軽量テント、LEDランタン、そしてチタン製焚き火台等々、あれこれ目移りしながら買い込んでしまった親父である。 機会があればキャンプツーリングのレポートと合わせて紹介してみたい。
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