2022/11/17-18 吉野から熊野へ紀伊山地越え、那智勝浦を目指す(焼肉馬酔木、サンライズ勝浦)
還暦を越えて乗り続ける同い年の友人がいる。 コロナ禍の影響もあり会うのは何年振りだろうか? そのDUCATI Diavel Carbonを駆る友人と、奈良から和歌山へ紀伊山地を南下する旅に走り出すことにした。 期せずして今回の旅は、二人が出会った時と同じ会社OBツーリングへの参加、同じ紀伊山地を南に下るルートをたどる旅とになった。
2007年だったかな? 最初の出会いは衝撃的だった。 カリッカリに仕上がったRGV250Γのキレッキレの走りを、重たいZRX1100で必死に追った記憶が蘇る。 その時掻いた冷たい汗は、記憶と言うよりもトラウマの類かもしれぬ(笑)。 それ以来、峠を見ると馬鹿な勢いで飛び立だしてゆく馬鹿な二台は、峠を繋ぐ別ルートでOBツーリングに現地合流するのが恒例となった。
そして、今回現地集合する旅の目的地は熊野灘を望む那智勝浦、先輩幹事がGoToトラベルの割引プランで予約してくれた宿である。 その往路では、名阪国道25号沿いの道の駅「針テラス」を起点に、国道369へと走り出して吉野を経由すると、国道168で熊野灘まで南下する紀伊山地越えのルートをたどることにした。 また復路では、国道42で熊野灘沿いへと折り返し、伊勢志摩経由のルートで帰還する予定である。
さてさて、身体のあちらこちらにガタが出始めるお年頃の馬鹿二人、還暦を過ぎて”本当の大人”へと成長することが出来たのか? お互いに、現場に立てば我が身の齢を省みず、一時の瞬発力に任せて飛び出す性分は変わりそうにないが...とりあえず、走り出してみることにしよう。 ひょっとしたら、今後のバイク道楽とのかかわり方を占う、試金石になるかもしれぬ。
再会した還暦親父二人、道の駅「針テラス」から那智勝浦を目指す
ルート概要
(1日目) 名阪国道(国道25)→道の駅 針テラス-国369→玉立橋東詰-市道(西峠)→篠楽-県198-国370 →内原-国166→道の駅 宇陀路大宇陀-国370→上矢治-(吉野川渡る)→樫尾-国169→焼肉馬酔木-国169(戻る)→美吉野橋(県15)-県39 →千石橋南詰-市道→農産物直売所栃原道しるべ-県20→城戸-国168→道の駅十津川郷-国168→橋本-国42→高森-那智勝浦新宮道路→那智勝浦IC-県46→勝浦港,サンライズ勝浦
(2日目) サンライズ勝浦,勝浦港-県46→那智勝浦IC-那智勝浦新宮道路→高森-国42→(熊野尾鷲道路熊野大泊IC(通過)-国42→尾鷲北IC-紀勢自動車道→紀伊長島IC→国42→道の駅 マンボウ-国42(戻る)→紀勢自動車道紀伊長島IC
ツーリングレポート(一日目)
旅の起点となる道の駅「針テラス」をめざし、伊勢湾岸自動車道、東名阪自動車道を走り継ぎ、名阪国道こと国道25号線を西へと走り続ける。 辛抱強く一般道をたどる筋金入りの先輩達とは別ルートで、高速道路でお気楽移動を目論む若手の還暦親父である。 一般道の混雑を避ける目論見は外しようも無いが、避けようのない冬の風に凍えながら走り続けるのはお気楽移動とは言い難い。
今回も、季節外れの街中の暖かさに油断した親父は、氷点下近くまで冷え込む風に凍えながら走ることとなった。 これまでも、寒暖差が大きな伊賀上野盆地の冷え込みには何度も泣かされているのだが...その経験を活かせないあたり、還暦を過ぎてなお若輩者である証かもしれぬ。 でも、まあ、暑さ、寒さ、そして辛いことを忘れられるがゆえに、走り続ける事ができるのかもしれぬ。
そして、凍えながらもなんとか針テラスにたどり着くと、同じく思いがけぬ冷え込みに凍えるディアベル乗りと再会し、久しぶりに近況を交わすこととなった。 すると、いきなり、「最近は腰が痛くてたまらん、もうそろそろ降りようかと考えている」などと元気なく語る相棒...どうやら、名阪国道を針テラスに向かう道中でも、ギャップを越えるごとに走る腰の痛みに悩まされてたらしい。
気を抜いて走っていると、「日和ったのか」と煽りにかかる友人の弱音に不意をつかれ、少しばかり動揺してしまった。 しかしまだ旅は始まったばかり、寒いばかりの退屈な高速道路移動で心にも無い弱音が口をついたのか、それとも本当に、緩んでいた頭のネジが適正トルクで締め込まれてしまたのか...とりあえず先行して走っていれば、後方から感じる気迫の有無にその真意を感じ取れるだろう(笑)。
さて、針テラスでトイレ休憩を済ませ、温かい缶コーヒーで人心地つくと、いよいよ、熊野灘を望む那智勝浦の宿を目指して国道369へと走り出した。 紀伊山地を南下するルート沿いには、適度なインターバルで道の駅が営業しており、スマホ頼みの道案内にセットするランドマークには事欠かない。
そして、まずは香酔峠で奈良から宇陀への市境を越えると、宇陀市街をバイパスして国道370へと走り継ぎ宇田川沿いを南下し続ける。 市街地近郊の生活道路ゆえに交通量もそれなりにあるが、峠を越える地元車両のペースは速く、紀伊山地に分け入る前の足慣らしとしては申し分ない。 そして徐々に日が高くなって寒さも緩み、ライディングに集中できるようになってきた。
国道369で香酔峠を越える、ペース良い地元車に続き、紀伊山地越えの足慣らし
国道370を南下し続けて関峠を越えると、桜の名所吉野山を有する吉野郡吉野町へと入り、さらに吉野川沿いの国道169へと走り継いだ。 今更ながらではあるが、2004年に吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されている。
大峯連山の吉野山は古から続く修験道の霊場であり、熊野三山とを結ぶ熊野古道「大峯奥駈道」では今の変わらず修行が行われている。 今回の吉野から熊野へと南下するツーリングルート沿いでも、世界遺産の修業道を歩き巡る旅行者を見かけることも多かった。
さて、還暦を越えてなお修業が足りぬバイク親父は、ユネスコが認める霊場にさしかると、湧き上がる煩悩を抑えきれずに昼飯のことを考え出す(笑)。 食事場所も限られる山岳ルートに分け入る前に、吉野山麓の街で昼食を済ませておきたいところである。
そして立ち寄ったのは、街はずれの国道169号沿いで営業する焼肉「馬酔木(あしび)」。 タイミングよく開店と同時の到着となり、地元客で賑わう前の店内に一番乗りで案内されることとなった。 テーブル上に陣取るのは、今時の無煙焼肉とは無縁のガスロースター(笑)、そしてシュウ酸アルマイト仕上げの黄金色の急須や、懐かしい祖父母の家を想いだす湯呑まで、店内は昭和親父のノスタルジーを刺激するもので溢れていた。
吉野で立ち寄った「馬酔木(あしび)」、地元客で賑わうどこか懐かしい焼肉屋
そして注文したのは、ステーキ定食2,000円也。 焼肉定食1,200円也に後ろ髪を引かれながら、気取らぬ雰囲気とは不似合いなメニューを奮発する。 そして、すのこ鉄板から覗く青いガス火を眺めなながら茶をすすっていると、程なく注文したステーキ定食が配膳されてきた。
主役は何と言っても厚めに切り分けられた霜降り牛、そして脇を固める新鮮な焼き野菜盛り合わせ。 さらに炊き立ての白飯、たっぷりの卵スープ、食べる前から美味い反則のビジュアル系だが、その実力は単なる見掛け倒しでは無かった。
強火のロースターで一気に炙った霜降り肉を口に運ぶと、月並みな表現ではあるが、その瞬間に溶けた旨味が口一杯に広がる。 一見無造作に切り分けられたように見えるが、適度な焼き加減でいただける職人技が見え隠れ。 そして、歯ごたえが残る焼き野菜の甘みは良い口直しとなり、ニンニクとコチュジャンを加えたタレも王道、白飯の美味さが引き立つ。
ああっ、平日の朝っぱら、ロースターから立ち昇る煙の背徳感は、余生を楽しむ還暦親父の勝手な道徳観として昇華してゆく。 熊野灘を目指す山越えはまだ始まったばかりだが、幸先よく”ココ”を目的に走り出したくなる店に出会うことが出来た。 再訪することが叶えば、牛肉、ホルモン、合鴨肉などが選べて、比較的リーズナブルな焼肉定食1,200円也を味わってみたいところである。
旅先で出会った美味いもの余韻に浸る二人の還暦親父は、言葉少なめに会計を済ませ吉野川沿いの国道169へと走り出した。 どれだけ満たされたかは、腰が痛いの弱音がなりを潜めた友人の表情を見ればわかる(笑)。
強火のガスロースターで炙る絶品霜降り牛、口一杯に溶け広がる旨味
馬酔木を後にして吉野川沿いの国道169へと走り出すと、吉野山最寄りの近鉄吉野駅周辺の賑わいを抜け、紀伊山地を越える国道168方面へ走り継ぐ県道20に分岐した。 そこで、紀ノ川を経由して和歌山湾に注ぐ吉野川とはお別れとなり、熊野灘にそそぐ熊野川への分水嶺を越えることになる。 さて県道20に分岐すると、集落を繋ぐ県道は徐々に山深くなり、今秋一番の鮮やかな紅葉の出迎えを受けることとなった。
県道20に分岐し熊野灘へ続く国道168を目指す、今秋一番の鮮やかな紅葉
県道20が国道168に突き当り南へ舵を切ると、天辻峠を越えて天野川の流れに沿って走り続けた。 その後、国道168に沿って流れる天の川は十津川と名を変え、さらに奈良から和歌山への県境を越えて熊野川と名を変え熊野灘に注ぐ。
今回たどった国道168は、吉野熊野国立公園の真っ只中を熊野灘まで南下するタフな山岳ルートである。 道中の峠道は広狭変化に富んでおり、天の川/十津川/熊野川の本流に沿って緩やかな弧を描く中高速コーナー、本流を堰き止めた猿谷貯水池、風屋貯水池などでは、山肌に沿ったタイトな切り返しが連続する。
また、吉野材、熊野材は、良質な杉や檜のブランドとして有名である。 道中を囲む山々を見上げると、植林整備された緑の杉檜林と、紅葉した広葉樹林のコントラストを楽しむことが出来るだろう。 さらに、谷瀬のつり橋など渓谷に架かるつり橋が観光名所になっており、揺れるつり橋で肝試しをしたい強者は立ち寄ってみるのも良さげである。
高所恐怖症を患うはれふら親父は、スリリングなつり橋の案内看板には目もくれず、足元の峠道でスリリングなラインを探しながら黙々と走る続ける。
吉野熊野国立公園を南下する国道168、熊野灘まで続くタフな山岳ルート
吉野から熊野川が熊野灘に注ぐ新宮まで続く国道168だが、気力と体力を保って一気に駆け抜けるには無理がある。 幸いなことに、適度なインターバルで道の駅が営業しているので、事前に休憩ポイントを設定して集中力を切らさず走り続けたいところである。
今回は、熊野灘に抜ける行程の中間地点にあたる、道の駅「十津川郷」に立ち寄りトイレ休憩を済ませることにした。 日本一大きな十津川村の真ん中にある道の駅、こじんまりとした施設だが十津川郷温泉から引かれた無料足湯もあり、ライディングの疲れを癒す休憩地点として申し分ない。
前述の通り、奈良から和歌山への県境を越えると、十津川は熊野川へと呼び名を変え、川の流れと共に緩やかになる国道168の交通量は徐々に増えてゆく。 そしていよいよ、熊野灘を望む新宮にたどり着くと、国道42那智勝浦新宮道路を利用し今宵宿をとる那智勝浦まで一気に移動した。
先ずは、勝浦漁港に立ち寄って一息、ヘルメットを脱いで潮の香りを吸い込むと、凍える名阪国道から始まった初日の旅を思い返すこととなった。 スマホナビを頼りに”程々”のペースでディアベル乗りを先導することとなった一日...馬鹿をやっていた15年前を思い返し、”程々”のペースで良しとする己の変化だけでなく、後続の友人の変化にも気づくこととなった。 正直なところ、”程々”のペースに業を煮やした友人が前に出て、その背中を全力で追う様を想像していた(笑)。 いや、期待していたのかもしれぬ。
馬鹿ではあるが無法者では無い親父二人、友人の名誉のためにも付け加えておくと、全力で追いかけるのは暴走では無く、コーナーの先を見通すアウト側のため、そして一気に向き変えする理想的なライン取り。 それを可能にするのは、キレのある向き変えのスキルと、さらに一本内側のラインに危険回避できる余裕度。 出会って以来、TZのレース競技で蓄えた友人のライディングには、刺激をうけ続けてきたのである。
還暦を越えて以来、公私に関わらず、”程々”を良しとする周りが目に留まり、またそれを要求されることも多くなった。 ”程々”ではいられない己の性分は自覚しているが、命に関わるバイク道楽に関しては、ライディングが云々と中途半端にこだわるのは危険だと感じる。 オートバイを旅の相棒として割り切るならば、新しい付き合い方が見つかるかもしれない。
初めて出会ってから約15年の時が流れて共に還暦を越えた二人、友人も若いころからの不摂生がたたり体の無理が効かなくなったのか? はたまた緩んでいた頭のネジが適切なトルクで締め込まれてしまったのか?...ライディングの背中を追いかけてきた友人の答えは、今後のオートバイとのかかわり方を考える試金石となるかもしれぬ。
そんなこと、直接聞けばいいじゃん!と言われそうだが、再会した道の駅で友人から聞いた「腰が痛いからバイクを降りる」の言葉も、冗談だろうと笑い合って終わりになるばかり(笑)。 今宵の宿でゆっくり休養して、明日共に走ってその答えを感じ取りたいと思う。
紀伊山地を越えてたどり着いた那智勝浦港、潮の香りとともに長旅の余韻に浸る
さて、那智勝浦漁港からほど近い今宵の宿「サンライズ勝浦」に移動すると、玄関脇に設けられた二輪車専用駐車スペースに愛車を停め、GoToキャンペーン割引の条件となる、新型コロナワクチン接種証明を提示してチェックインを済ませた。
その後ディアベル乗りと、遠州灘を望む宿泊部屋に落ち着き人心地つくと、別ルートをたどった先輩OB達のツーリング本隊も到着し、無事に再会の挨拶を交わすこととなった。
場合によっては変わり者扱いされるバイク道楽もここでは標準装備、還暦過ぎの親父もここでは若手扱いしてもらえる(笑)。 熊野灘を望む風呂やら海山の幸が並ぶ夕食にも増して、肩の力を抜いて笑い合えるコミュニティの無重力感が、一番の癒しなのである。
名古屋から300kmを越える程度の初日の走行距離だが、紀伊山地越えのタフな山間ルートを走り続けた疲れのせいか、先輩達との楽しい会話もそこそこに早めの就寝となった。 明日は、初日とおなじくディアベル乗りとの二人旅、国道42で熊野灘沿岸をトレースしながら、伊勢経由で名古屋方面へ帰還する予定である。 とりあえずはゆっくりとやすみ、走りながら行程を考えることにしよう。
那智勝浦で宿泊した「サンライズ勝浦」、バイク専用の屋根付き駐車場がありがたい
ツーリングレポート(二日目)
心地よいライディングの疲れのせいもあり、昨夜は久しぶりにぐっすりと眠ることが出来た。 同室のツーリングメンバー達を起こさぬよう静かに起き出すと、窓際のソファーから那智湾越しにひろがる熊野灘の朝焼けを眺め、穏やかに始まった非日常を味わう。
最近は、暗い朝に起き出すとまずPCを立ち上げ、手早くドリップしたコーヒーを片手に、在宅勤務にとりかかる日々が続いている。 還暦を越えてなお、いつまでそんな慌ただしい日常を送っているのかという見方もあるが、そんな”慌ただしい日常”のおかげで旅先の”穏やかな日常”を楽しむことが出来るとも言える。
どうやら、私のような煩悩まみれの親父は、相対的な尺度でしか心地よさを量れぬのかもしれぬ。 せめて、「隣の芝生が青く見える」とばかりに、他人様の境遇を羨むことなく、己の価値観を信じて選んだ日常の中で、メリハリを付けながら生きたいものである。
那智湾越しに望む熊野灘のきれいな朝焼け、快適な帰路が期待できそうだ
さてさて、三々五々に起き出したメンバー達と挨拶を交わすと、皆でワイワイと盛りだくさんの朝食を済ませることとなった。 そして、先輩幹事に宿代の清算をお願いすると...GoToキャンペーン割引の恩恵で、酒代などの追加料金を合わせてもお一人様8,000円也! リーズナブルな宿泊料金に加え、和歌山県の地域振興券3,000円也のサービスは出来すぎである。 先輩幹事のツーリング企画の腕前には、毎度感心させられるばかりである。
その後、恒例となった参加メンバーの集合写真撮影を済ませると、早速早朝の那智勝浦へと走り出した。 そして帰路に着く前に皆で立ち寄ったのは、”勝浦漁港にぎわい市場”である。 早朝から営業する観光市場で、宿でもらった和歌山県の地域振興券をつかって土産を仕入れていく算段なのである。 伊勢方面へ走り出してしまうと、直ぐに和歌山から三重への県境をこえて、折角の振興券が使えなくなってしまうのだ。
さて、駐車場脇にバイクを並べてにぎわい市場に向かうと、生マグロの水揚げ日本一をほこる勝浦漁港らしく、過去最大の水揚げマグロ(450kg)を模した鮪オブジェが目に留まる。 にぎわい市場内では、新鮮なマグロを販売する鮮魚店も営業しているが、背中に生マグロを背負って名古屋までの長丁場を走る気にはなれず。 土産物店でみつけた、熊野材ヒノキで作られたコースター(1,100円也x3個)を購入することにした。 帰宅後、この土産を手に取り熊野への旅を思い出せば、再びこの地を訪れて地域振興に貢献する機会もあるだろう。
生マグロ水揚げ日本一の勝浦漁港、にぎわい市場脇に吊るされた鮪オブジェ
和歌山県の地域振興券で紀州材(熊野材)ヒノキのコースターを購入
勝浦にぎわい市場で皆思い思いの買い物を済ませると、名古屋まで気合の下道ルートをたどる先輩達と別れ、ディアベル乗りと二人別ルートに走り出すことにした。 そして初日と同じく、スマホナビに次の目的地を設定しながら、二人旅を先導することになった。
ところで、南海トラフ巨大地震に備えた広域交通インフラ整備のため、紀伊半島沿岸をトレースする紀勢自動車道の整備も進んできた。 最寄りの那智勝浦ICから紀伊長島ICまでは、まだ途切れ途切れではあるが無料区間なのがありがたい。
とりあえずは、国道42と紀勢自動車道無料区間を織り交ぜながら移動し、紀伊長島IC最寄りの道の駅「紀伊長島マンボウ」で、国道260に分岐してパールロード経由のワインディングに迂回するか、そのまま高速道路で一気に帰還するルートをたどるかを決めることにした。 果たして萎え気味の還暦バイク親父二人組に、さらにワインディングを攻め込む気力と体力は残っているだろうか...。
勝浦漁港から最寄りの那智勝浦ICに向かうと、新宮市街までの紀勢自動車道那智勝浦新宮道路を移動し、道なりに熊野灘沿岸の国道42へと走り継いだ。 その後、海岸沿いの生活道路を走り熊野市街を抜けると、紀勢自動車道熊野大泊ICに差し掛かった。 ここから紀勢自動車道熊野尾鷲道路に乗ると、一気に紀伊長島ICまで移動することも可能なる。
しかし、昨日のライディングでやり残した”宿題”の答えを出すために、熊野大泊ICを素通りして国道42へと走り続けることにした。 熊野尾鷲道路と並行する国道42は、海岸沿いの混雑から離れた山深い峠道となる。 殆どの車両は熊野尾鷲道路を利用するため通行車両も少なく、さらに大型車両をやり過ごすための登坂車線が敷設されている。 緩やかに弧を描くダイナミックな切り返しで、休養十分?のディアベル乗りのやる気を量るに申し分ない。
熊野大泊ICを通り過ぎながら、バックミラー越しに後続のディアベル乗りの様子を確認すると、盛んにルート違いを合図しているが、気付かぬふりをしてそのまま峠へと駆け上がった(笑)。
そして...ディアベル乗りからもらった答えは期待通り! コーナーに沿った成り行きラインを”程々”のペースで駆け上がる晴れふら親父は、240サイズの極太タイヤのエッジに乗って切れ込むディアベルの後塵を拝し、そのラインを必死で追う展開となる。 腰に負担がかかる切り返しはちと辛そうだが、ネジの緩んだ思い切りは15年前と何も変わっていなかった♪
国道42の峠越え、ディアベル乗りのキレッキレの走りを追って一息
ディアベルのキレキレの走りを追いかけて峠を駆け下りると、尾鷲市街を貫けた尾鷲北ICから紀伊長島ICまで紀勢自動車道に乗り、無事に休憩ポイントの道の駅「紀伊長島マンボウ」にたどり着いた。
恒例の展開となり、復活したディアベル乗りに、パールロード経由の行程を持ちかけようとするも...気力・体力を使い果たしてフラフラと正体無く歩く友人の様に、思わずパールロード経由...の言葉を飲み込んだ。 そのあまりの疲れっぷりに、紀伊長島ICから高速道路で一気に帰還するルートを持ち掛ける結果になってしまった。
道の駅「紀伊長島マンボウ」、可愛らしいマンボウを見て串焼きは食らえず(笑)
その後、可愛らしい巨大マンボウと対面した後に、名物のマンボウ串焼きを食らう気にはなれず。 トイレ休憩と簡単な水分補給だけを済ませ、高速道路経由の帰還ルートや休憩地点など確認して帰路に着き、二人とも無事に帰り着くこととなった。
コロナ禍の影響で久しぶりに再会した同い年の友人との二人旅、まずは、還暦越えを経て公私ともに色々なことがあった数年を経て、再び一緒に走り出せたことに感謝するばかり。
初日の再開で、腰痛をかかえバイクを降りるかもしれぬと聞いて心配したが、二日目に見せてくれた相変わらずのキレっぷりに、その心配も徒労に終わったようである。 まあ、還暦過ぎまでこだわってきた性分は変わりようも無く、体調さえ戻ればへたれな私を程々に煽り続けてくれることだろう(笑)
翻って己の話になるが、オフロードからオンロードへ旅のスタイルを変えて以来、ライディングを中心に据えてバイク道楽にハマってきた。 実際のところ、フレーム剛性、軽さ、電子制御等々、峠を気持ちよく走るための装備を基準に、旅の相棒も乗り継いできた。
しかし、正直なところ、それも潮時かと感じ始めたことも事実である。 コンプライアンスまみれの時代のせい、歳をとったせいだとは言いたくは無いが、”程々”のライディングが日常になってきた。 そして時折、変わりようのない性分とともに、かっての非日常に飛び込んで痛い目を見る様が脳裏に浮かぶのである。
バイク道楽は奥深い、ライディング以外にも没頭できる世界観は無数にある。 乗り続けるために、新しく創造できる価値、体験できる価値を探して、己の態度を決める時期に差し掛かったのかもしれない。 歳を重ねて、いつかは乗れなくなることは分かっているが、少なくとも今では無いことは確かである。
おまけ(もう一つの世界遺産ルート)
今回紹介した吉野山から熊野へと国道168を南下するルートは、世界遺産熊野古道の「大峯奥馳道」に沿ったツーリングルートである。 本編で紹介した通り、中高速コーナーからタイトな切り返しまで、変化に富んだワインディングを楽しめる。
またさらに西側の、高野山から熊野へと南下する高野竜神スカイライン(国道371)、熊野古道「小辺路」に相当する山岳ルートもおすすめである。
高野竜神スカイラインは、高野山と龍神温泉を結ぶ全長42.7kmの山岳道路。 ブナなどの原生林を眺めながら、紀州の屋根とも呼ばれる護摩壇山(1372m)を駆け抜けるルートである。
高野竜神スカイライン42.7km、護摩壇山(1372m)を越える山岳ルート(2007年11月)
しかし、名古屋からアクセスする場合、高野竜神スカイライン経由で熊野灘まで抜けるには距離があるので、竜神スカイラインを下りきった川湯温泉あたりに宿を取るのが良さげである。 川湯温泉では、大塔川の川底から湧く73℃の源泉を堰き止めた、野趣あふれる「仙人風呂」を楽しむことが出来る。
12月中旬から3月頃まで冬季閉鎖される竜神スカイライン、台風シーズンが過ぎた11月下旬から2月頃まで開湯される川湯温泉仙人風呂、その挾間のわずかな時期にしか成立しないツーリング企画となる。
大塔川を堰き止めた川湯温泉「仙人風呂」、川底から73℃の源泉が湧く(2007年11月)
ツーリング情報
道の駅「針テラス」 奈良県奈良市針町345 (電話)0743-82-5533
焼肉「馬酔木(あしび)」 奈良県吉野郡吉野町大字樫尾271 (電話)0746-36-6389
道の駅「十津川」 奈良県吉野郡十津川村小原225-1 (電話)0746-63-0003
サンライズ勝浦 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町天満803-3 (電話)0735-52-3030
勝浦漁港にぎわい市場 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地7丁目12番地 (電話)0735-29-3500
道の駅「紀伊長島マンボウ」 三重県北牟婁郡紀北町東長島2410-73 (電話) 0597-47-5444
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