2020/12/26 広域農道西幡線/幡岡線、西三河半日旅(碧南海浜水族館、平安食堂、キッチンながしま)

 新型コロナウイルスの感染拡大が治まらず、帰省をはじめ県境を跨ぐ移動自粛とともに年を越すことになってしまった。 五感で季節を感じるオートバイで峠を駆け巡り、心に留めておきたい日本の景色や美味いもの探す旅、そんな昭和親父の道楽を続けるのもままならぬご時世である。

 しかし、目先は悲観的に身を守るための感染防止策を講じ、将来は楽観的にお役所のガイドラインに沿って旅を楽しみ、小さな経済を回してゆきたいところである。 三密とは対極にあるオートバイ移動、大声とは無縁の妄想一人旅が多いのだが、食堂等の立ち寄り先での不織布マスク装着、携帯アルコールジェルで手指消毒もルーチン化してきた。 もとより、一気に飯を掻き込んで立ち去る早飯は昭和親父の得意技(笑)

 さて、東海道、中山道、伊勢街道等々、古から東西南北に延びる街道の要だった愛知県、旧街道沿いに県外へのツーリングルートを探すに事欠かない。 一方県内に目を向けても、歴史的な名所旧跡など数多く立ち寄り先に困ることは無いのだが、ライディングを楽しめる地域は限られてしまうのが正直なところ。

 まず思いつく県内ワインディングは、南信州や遠州の山間へ続く東三河山間部(奥三河)の峠道だが、その山深さゆえの凍結リスクから冬場のルートとしては難がある。 よって、さらに冷え込む年越しを控え、三河湾沿いの山間を走る西三河の広域農道を訪れることにした。 幸田町から西尾市にまたがる広域農道は、冬場にも走れる身近な峠道として貴重である。

 そして目指したのは、国道23西尾東インターを起点に、西尾市から東隣りの幸田町へ続く広域農道西幡線、さらに広域農道幡岡線で西尾市へ折り返す広域農道ワインディング。 両広域農道の名前は2011年に西尾市東部に合併吸収された、旧幡豆郡(一色町、吉良町、幡豆町)に由来するらしい。 西幡線は西尾と旧幡豆郡をつなぎ、幡岡線は旧幡豆郡と岡崎をつなぐ広域農道なのである。

 そして、30km程のワインディングを走り終えた帰路では、矢作川を渡った碧南市にある碧南海浜水族館に立ち寄ることにした。 碧南海浜水族館は、愛知県で唯一絶滅の危機に瀕した淡水魚の保護・繁殖活動に取り組んでいる水族館、矢作川の生態系を再現した水槽では身近な(だった)淡水魚を観察することが出来る。

 どう見ても子供ずれの家族向け施設であるが、九州の筑後川流域で生まれ育った昭和親父は、カワムツ、オイカワ、ウグイ等々、川遊びで慣れ親しんだ魚達にノスタルジーを覚える次第である。 いや、湯気の立つ銀シャリにのった旨そうな甘露煮...昭和親父の胃袋が体に染みついた美味いものを懐かしむというのが正しいかもしれぬ(笑)。


ルート概要


国23岡崎バイパス(西尾東インター)-県383→高河原町―県310→善明(キッチンながしま)-広域農道西幡線(グリーンロード)→堂根-県320→桐山西-国23(旧)→須美-県325→梅ノ木-広域農道幡岡線→桐山-広域農道幡岡線(幸田サーキット)→八反田-県317→友国-県41→菱池町外川原-県383→高河原町-県383→寺津大明神-国247(矢作川大橋)→碧南海浜水族館-国247→明石インター-県301→松江町-県50→平安食堂-県50→横浜橋北-県46→衣浦大橋東-国419→国23知立バイパス(西中インター)


ツーリングレポート


 本格的な冬をむかえた週末の朝、久しぶりにZX-6Rのエンジンに火を入れることとなった。 そして、わずかな暖機運転で相棒のふけ上がりを確認すると、住宅街を抜けて西三河のワイディングを目指して走り出すことにした。 保温機能を備えた薄手のインナーに皮ジャケット、操作性を犠牲にせぬウエアで体温を奪われる前にたどり着けるのも、近場のワインディングの有り難いところ。

 ところで、今年初めにGSX-R1000から乗り換えたZX-6R、ミドルサイズの取り回しの軽さと気持ちよく回せるエンジン、オートシフターとの組み合わせで信号待ちからの立ち上がりも楽しくなった♪ 親父ライダーから爺様ライダーへ、走り続けるための分別ある乗り換えのつもりだが、傍目には年寄りの冷や水にしか見えぬのだろう(笑)

 さて、国道23名四国道で名古屋市内を抜けて豊明を過ぎると、知立バイパス、岡崎バイパスへと道なりに走り続け、予定通り西尾東インターから県道383へと駆け降りた。 そして県道310に分岐して程なく、広域農道西幡線の起点となる善明交差点に差しかかった。

 ところで、広域農道西幡線と幡岡線の名前は、2011年に西尾市東部に合併吸収された、旧幡豆郡(一色町、吉良町、幡豆町)に由来すると考えられる。 西幡線は西尾と旧幡豆郡をつなぎ、幡岡線は旧幡豆郡と岡崎をつなぐ農道であった。

 また、土日休日二輪通行止めになっていた広域農道西幡線と幡岡線、2014年に規制解除された現在でも、通行止め看板が立っていないことを確認するのが習慣になってしまった。 バイク乗りのライディングマナーが向上して通行規制の必要性が無くなったというよりも、若者の二輪離れで屯してピストンする輩もいなくなったというのが、低迷する国内二輪市場の現実かもしれぬ。

 久しぶりに西幡広域農道、通称グリーンロードに走り出してみると、荒れていた路面はきれいに舗装され、定期的にメンテナンスされている生活道路であることがうかがえる。 全長5km程の短い区間ではあるが、久しぶりのワインディングの足慣らしとして申し分ない。 緩やかなアップダウンと適度な弧を描くコーナー、十分な幅員と良好な路面状態で、立ち上がりの視界を確保するライン取りも容易である。

 キンとした冬の空気を切り流れる景色、小気味よく吹け上がるエンジンに呼応して感じるトラクション...旅の途中に通り過ぎるだけのツーリング親父は、思わず折り返したくなる衝動を抑え、一度きりのライディングを心に留めながら一気に駆け抜ける。

 広域農道西幡線を終点まで走りきると、突き当たった県道320で広域農道幡岡線の北側起点を目指すことにした。 広域農道にかぎらず、西尾市と幸田町にまたがる山間道のライディング指数?はかなり高い。 今回たどったルート沿いにも、美味しそうなワインディングへの分岐が幾つもあり、本腰を入れたルート開拓も良さ気である。

 さて、県道320が旧国道23に突き当り西尾方面へ左折すると、国道23バイパス高架を潜った須美交差点を県道325に右折し、程なく広域農道幡岡線への分岐にたどり着いた。 そのまま勇んで全長20kmの広域農道に駆け出すが、トリッキーなスクリューダウンヒルの出迎えに己の技量の限界を思い知る。

 そして、国道23岡崎バイパス桐山インターを過ぎて旧国道23と交差すると、幸田サーキットにむけた駆け上がりが始まる。 通行規制が解除され二輪の通行量が増えたせいか、タイヤで慣らされた路面状況は比較的良好である。 ただし、路面の亀裂や路側に堆積した落ち葉も放置され、定期的にメンテナンスされる様子も無く、予期せぬ路面変化に気が抜けぬタフなルートであることに変わりない。

 また二輪通行規制が解除された現在でも、所々に敷設されたかまぼこ状の減速帯は健在、直前に発見してフロントブレーキを握りしめながら突っ込むと、シャレにならぬ痛い状況になりかねない。 減速帯はエンジ色に塗り分けられてはいるが、路面の劣化と共に色あせた減速帯を見つけ出すのは難しく、難易度の高い間違い探しの様相を呈している。

 

 

 気の抜けぬ路面状態や限られるライン取りだけでなく、アップダウンやタイトな切り返しが連続する広域農道幡岡線、慣れるまでは余裕を持ったペースで楽しみたいタフなワインディングである。 しかしその分、臨機応変な状況判断を駆使しながら、メリハリをつけた密度の濃いライディングを楽しめるルート。 タフなルートだからこそ、曲がろうとするオートバイの邪魔をせぬよう、イン側ハンドルグリップのバトン握りを心掛けたいところ。

 かつての相棒、強烈なトルクとガチガチの足回りのGSX-R1000で攻め込むにはちと苦労したが、ZX-6Rの回して楽しめるエンジンとしなやかな足は、ヘタレな親父にもタフな広域農道を楽しむ余裕を提供してくれる。 路側に相棒を停めてエンジンを止めると、マフラーから香る乾いたオイルの匂い...取り回しの軽さばかりでなく、回して楽しめるミドルサイズで満たされるものは多い。

 さて、広域農道幡岡線は、県道41、県道320、と交差しながら道なりに続き、県道317に交差する旧幡豆郡側起点で終わりとなる。 久しぶりのワインディングであがき終えると、西尾の田園地帯を走る県道317、県道41を経由し、国道247矢作川大橋で矢作川を渡った。 矢作川を渡ると同時に西尾から碧南への市境を越え、碧南市が運営する碧南海浜水族館にたどり着いた。

 碧南市は三河湾に流れ込む矢作川と衣浦港に挟まれた海浜の町、内陸部にも矢作川支流や天然の小沼が点在し、三河湾や矢作川の生き物を観察できる市営水族館があるのもうなずける。 

 海遊館の巨大水槽を回遊するジンベエザメ、アクアトト岐阜のアマゾン川の巨大魚等々、大規模水族館に比べた見劣り感は否めぬが、その反面、三河湾や伊勢湾沿岸、矢作川の身近な魚の展示も充実している。 入館料大人500円は、JAF会員証の提示で団体価格400円に割引される。

 早速、お目当ての矢作川の生態系を再現した水槽にたどり着くと、子供の頃に慣れ親しんだ魚たちがお出迎え。 繁殖期の春にはオレンジ色に染まるウグイ、虹色にそまるオイカワ、釣りに夢中になっていた子供の頃の記憶が蘇る。 しかし、昭和親父の通学路で寄り道した小川やため池、当たり前のようにみかけたメダカも今や絶滅危惧Ⅱ類。 いやはや何ともかなりの喪失感だが、小川やため池は埋め立てられ、かって通学路だった田んぼ道も今や住宅地に様変わりしたことを思えば当然のことかも。 

 冒頭に紹介した通り碧南海浜水族館は、ウシモツゴ、カワバタモロコなどの、絶滅危惧種に指定された希少淡水魚の繁殖保護に取り組む水族館でもある。 2019年には自然の水辺環境を再現した、屋外ビオトープ施設が完成しリニューアルオープンしている。 淡水魚だけでなく、水すまし、ゲンゴロウ、水カマキリ、タガメ...子供の頃当たり前に目にしていた水辺環境の再現に期待したいところである。

 碧南海浜水族館を後にして国道247に走り出すと、明石インターから分岐して県道50沿いの平安食堂に立ち寄った。 昭和親父の食堂センサー反応する店構え、大衆食堂メニューを想像しながら入店すると、いやいやどうしてトンカツ専門店張りのカツメニューが並ぶ。 そういえば、道路沿いに掲げられた看板には、”とんかつ”の文字が大きく掲げられている。

 店内に入り、入り口近くのテーブル席に落ち着くと、文字通りの看板商品であろうとんかつ定食1,250円也を注文した。 配膳を待つ間、高浜の製陶業の職人らしき方々が次々にご来店、地元の働く胃袋を満たす食堂であることがうかがえる。

 程なく運ばれてきた膳は、イメージ通りの正統派ザ・トンカツ定食。 主役のトンカツはサクッと揚った衣をまとったジューシーなロース肉、甘い脂身に幸せを感じるのは私だけでは無いだろう。 そして、大ぶりな主役に隠れているが、脇役のポテサラの出来栄えに手抜きの無い料理人の仕事を感じる。 止まらぬ箸でボリュームある定食を一気に平らげると、仕事に戻る職人達にまじり食堂を後にした。

 その後、高浜市街をぬけて国道419を道なりに北上すると、国道23知立バイパス西中インターから名古屋方面への帰路に着いた。 西三河のタフな広域農道で密度の濃いライディング、昭和親父のノスタルジーを刺激する水族館に食堂飯...往復100kmを越える程度のショートツーリングだが盛りだくさんの行程となった。 ふらっと訪れた三河湾沿いの西三河山間エリアだが、国道23バイパスで名古屋市内からのアクセスも容易、季節を問わずライディングを楽しめて、美味いものを供する店もまだまだありそうだ。


おまけ(もう一つの昼飯)

 冬場のツーリングでは、明け方の冷え込みを避けるため、ツーリングの走り出しが遅れがち。 今回のツーリングルートで昼時の出発になったときにお薦めなのが、広域農道西幡線に走り出す前の善明交差点近くにある洋食店”キッチンながしま”である。

 訪れてみると、駐車場脇の看板には1977年からの営業が掲げられ、永いこと地元で愛されてきた店であることがうかがえる。 人気店ゆえの混雑をさけるため開店直後の来店がお勧めしたい。

 味噌カツならぬ味噌ハンバーグで有名なこの店、看板メニューの”味噌ハンバーグ定食”1000円也を目当ての来店となった...がっ、何気なくメニューに目を通し、ザ・洋食てんこ盛りのおすすめに反応した昭和親父は、お目当ての”味噌ハンバーグ”に”エビフライ”と”ヒレカツ”が加わった”ながしま定食”1,450円也を注文。

 主役の味噌ハンバーグはフワフワの柔らかさ、アルミホイルの中でタップりの甘味噌に浸かっている。 八丁味噌の本場西三河の洋食店らしい味噌ハンバーグ、甘さ控えめのサラサラの味噌は意外にサッパリしている。

 また、大ぶりで食べごたえのある海老フライは、細かめのパン粉のクリスピーな衣に包まれプリプリの食感が際立つ。 柔らかくジューシーなヒレカツにはトンカツソースが添えられ、味噌ハンバーグの軽い甘味噌と味の変化を楽しむことが出来る。

 洋食のバリエーションを一度に堪能できるメニュー、まるで洋食の玉手箱やぁ(古っ)。 どこかで聞いたことのある時代物のコメントは兎も角、期待通りの日本の洋食は、ご飯と味噌汁との相性も抜群であった。



ツーリング情報


碧南海浜水族館  愛知県碧南市浜町2番地3 (電話)0566-48-3761

http://www.city.hekinan.lg.jp/aquarium/


平安食堂  愛知県高浜市二池町6-2-31 (電話)0566-53-1203


キッチンながしま 愛知県西尾市室町雲地15-3 (電話)0563-52-4326

 


晴れたらふらっと

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