2004/04/07 桜咲く奥三河、オートレーサー乗りで峠三昧(県道10設楽根羽線、月瀬の大杉、矢作ダム、加茂広域農道、福嶋麺類食堂)
W800 streetを衝動買いしてから一年が過ぎ、ライディングスキルがだぶって見えたオートレーサーを手本に走り込んでみることにした次第である。 そして、路面からの突き上げやヨーイングが気になるリアサスをOHLINSに換装し、さらに踏ん張りきれない前よりのステップをBEET JAPANのバックステップに換装し、街中のツーリングでW800 streetとの一体感が得られるようになったこと確認してきた。 そして今回は、その相棒を桜咲く奥三河の本格的な峠道に持ち込んでのライディングとなる。
行程としては、東海環状道豊田松平ICから国道301を作手方面へと駆け上がり、国道473から国道420へ続く比較的緩やかな峠道、県道10前半(設楽~津具)の緩やかな折り返し、県道10後半(津具~根羽)と矢作ダム湖畔のタイトな切り返し、そして加茂広域農道のアップ/ダウンを伴う複合ワインディングを順に走り継ぐことにした。
徐々にライディングの負荷を増やして行けるルート構成は、ポイントを絞りながらライディングを試行錯誤できる構成にアレンジできたと思う。 また、県道10を走り終えた根羽集落では、地元客で賑わう福嶋製麺食堂で昼食をとり、桜に彩られた月瀬の大杉にも立ち寄った。
さてさて晴れふら親父は、走り慣れた奥三河のワインディングで、イメージするオートレーサ乗りを体現することができるのだろうか? 手ごたえを掴めるか否やの分水嶺ツーリングになるかもしれない。
月瀬の大杉を飾る淡紅色の枝垂れ桜、樹齢1800年の巨木に劣らぬ存在感
ルート概要
東海環状道豊田松平IC-国301→根崎-県77-県363→神殿町-国473(野原川観光センター)→仏供田-国420(国473)→大輪橋-国257-新段嶺トンネル→田峯-国257→設楽大橋東-県10(設楽根羽線)→津具-県10(設楽根羽線)→根羽(福嶋麺類食堂)-国153→月瀬の大杉-国153→稲武町-国257→押川大滝-県356(矢作ダム南岸)→小渡-県366→万町橋-加茂広域農道→平沢下-国153→千田-加茂広域農道→深山茶屋-国420-加茂広域農道(加茂ゴルフクラブ)→笹ケ田和-県363-県77→根崎-国153→東海環状道豊田松平IC
ツーリングレポート
オートレース場にも足を運んだことのない晴れふら親父がイメージするオートレーサーは...慣性の強い空冷二気筒エンジン(二速)、効かない前後ブレーキ(付いてない)、細身のバイアスタイヤをリーンアウト姿勢でねじ伏せているように見える。
こうして具体的に書き連ねてみると、W800 streetの前後18インチの細身のバイアスタイヤの軽快な切り返し、それをアップライトなポジションの腰下で操る楽しさがだぶってくる。 実際には、左回りのオーバルコースに特化したレーサーと、公道での万人の乗り易さを考慮したネオ・レトロ系バイクとの差は大きいが、コーナーリングの基本的な考え方が重なって見えるのだ。
まずは、効かないフロントブレーキをリアブレーキで補いながら、ニュートラルな前後姿勢を保ちコーナーに進入する。 そして、リーンのきっかけは幅広アップハンドルのカウンターステア一択で、そのままリーンアウト気味に外膝でタンクを押さえ込みながら旋回する。 慣性の強いエンジンの回転数を落とさぬよう、なるだけ滑らかなラインでコーナーをつなぐのだが、リーンアウト気味のライディング姿勢が立ち上がりラインの視界確保の助けになる。
まあ仮に旋回速度を維持できず失速したとしても、無理にシフトダウンしてギクシャクするよりも、空冷二気筒360°クランクエンジンの低速トルクを活かし、カワサキがこだわったという乾いた排気音を楽しみながら、まったりと立ち上がった方が趣きがある。
...てな具合に、これまで乗り継いできたSSのライディング、すなはち、強力なフロン後ブレーキとフレームでコーナー奥で一気に向きを変え、回る高出力エンジンと太いタイヤで直線的に立ち上がる乗り方と、オートレーサー乗りの趣向は全く異なるのである。
さて、東海環状道豊田松平ICを降りてしばらくは、国道301を作手方面へと駆け上がる車列に繋がり、里を彩る桜の花を眺めながら春のクルージングを楽しむ。 ライディングが云々の前に、そんな移動区間も、存在感のある空冷二気筒エンジンの鼓動を楽めるようになったことがありがたい。
その後、国道301根崎交差点から三河湖方面へ分岐して、野原川沿いを溯る国道473へと走り継ぐ頃には先行車も無くなり、いよいよ奥三河のワインディングで独りオートレーサ乗りを試行錯誤する時間帯に差しかかった。
野原川沿いの国道473へと遡り、緩やかな切り返しで足慣らし
ここまでの高速道路移動を含めた行程で改めて、乗り手を突き上げることなくヨーイングを収束させるOHLINSサスのご利益を体感することとなった。 そして、野原川に沿った緩やかなワインディングで徐々に速度域をあげて負荷を増やしても、さらにしなやかに踏ん張るリザーバ内蔵型単筒式の高圧ガスショックの安定感は絶大であった。
さらに、国道473が国道420に突き当り設楽方面へと走り続けると、豊川に注ぐ当具津川の流れに沿って徐々に険しいダウンヒルとなってくる。 そしてそこでも、コーナー切り返しでのリアサスの動きの良さと失われる事ない接地感に、W800の車体とバランスが取れた”ほどほど”のスペックの恩恵を感じる結果となった。
相変わらず離合にも難儀する狭道区間が混在する国道420、さらに山肌から流れ出る雨水に愛車の下回りはドロドロになってしまうルートだが、交通量の少なさと走り応えのある峠道は三河から奥三河へのアクセスルートして外せない。
桜に彩られた快走路国道420は、徐々に走り応えのある峠道にかわる
当具津川沿いを下る国道420が国道257に突き当たると、当具津川が注いだ豊川沿いを稲武方面へと駆け上がって行った。 その後しばらくは、新城から稲武に向かう幹線国道257の車列に繋がり、設楽町の中心田口集落を抜けた設楽大橋東交差点から県道10設楽根羽線へと分岐した。
国道473、国道420に続くお目当てのワインディングが、愛知から長野への県境を越えて根羽村集落まで一気に駆け上がる県道10設楽根羽線である。 設楽町津具集落までの前半ルートは緩やかで落差がある九十九折れを駆け上がり、その後これでもかと続く超タイトな切り返しを駆け上がるメリハリの効いたルートが続いている。
早速前半の緩やかな九十九折れに差し掛かると、80㎜後退させたバックステップの効果を体感することとなった。 体幹に沿って左右のステップの踏みかえができるので、衰え著しい還暦親父の脚力でも軽快にこなすことが出来るのだ。
また、タンクから拳一つ空けた着座位置の収まりが良く、上体を前後傾させるだけでリアの前後荷重をコントロールする感覚を再確認することとなった。 侵入でニュートラルな前後姿勢を保つにも、立ち上がりでリアタイヤにトラクションをかけるにも、微妙な前後荷重を加減する楽しさはなかなか奥深い。
国道257から県道10に分岐、大きく回り込む九十九折れで標高を稼ぐ
その後県道10が津具集落を貫けると、これでもかと続く短ピッチの九十九折れを駆け上がって行く。 ここまで晴れふら親父のオートレーサー乗りと、交換したリアサスとバックステップの相性は良いこと尽くめであったが、ここへ来て終にタフな峠道ゆえの課題も見えてきた。
十分な進入姿勢がとれぬ短い切り返しでは、兎に角右コーナーのキレが悪くなってしまうのだ。 幅広のアップハンドルとリアブレーキを多用することを考えると、アクセルとリアブレーキを操作しにくい右コーナーが課題になるのは当然かもしれぬ。 左回りのオーバルコースに特化したオートレーサのハンドルが左上がり、操作系が全て右側に設置されている理由を身をもって体験したことになる。 解決策は乗り手の”慣れ”に尽きるのかもしれぬ。
また、センターラインを介して曲がりが緩くなる右コーナーでは、倒しこみのメリハリを付けにくくなることも分かった。 リーンアウト気味に車体をねじ伏せる乗り方と、ニュートラルな姿勢でコーナーリング速度を稼ぐ乗り方と、迷いなく使い分ける状況判断を磨くのであろうか。
県道10は根羽に向けて短いピッチの切り返しとなり様々な課題が見えてくる
県道10を根羽村集落まで走りきると丁度昼時、集落にある福嶋麺類食堂に立ち寄り昼食休憩をとることにした。 地元の老若男女が集う自家製麺にこだわる食堂だが、ロケーションが売木峠を越える県道46の起点になるせいか、ツーリング途中のバイク乗りを見かけることも多い。
これから桜の花の季節が終わると、夏日(25℃)、真夏日(30℃)、猛暑日(35℃)へと、温暖化の影響を受ける夏に向けて気温はうなぎ上りであろう。 今回は、冬から春へのわずかな季節の移り変わりを味わおうと、熱々の鍋焼きうどん(味噌玉子)800円也を注文することにした。
根羽集落の福嶋製麺食堂で一息、地元客で賑わう山村の昼時
昼のテレビ番組を当てもなく配膳を待つと、いよいよグツグツと煮えた鍋焼きうどんが運ばれてきた。 味噌煮込みうどんでは無く味噌仕立ての鍋焼きうどん、故郷を彷彿させる柔らかい自家製麺が博多親父の琴線に触れる。 コクのある八丁味噌が染みた歯ごたえが残る煮込み麺が外せなくなった現在も、無防備にすすれる柔らかいうどんは己が何者だったか思い出せてくれる。 時折台所に立つと、香ばしく揚げたごぼう天をかじりながら、透き通った出汁に漂うクタクタのうどんをすする晴れふら親父である。
味噌煮込みでは無く味噌仕立ての鍋焼きうどん、クタクタの麺がうれしい博多親父
地元の人気店らしく、熱々の鍋焼きうどんをすすり終える頃には店内は満席となり、モロモロの余韻に浸るのもソコソコに走り出すことにした。 そして、国道153を豊田方面へと折り返して程なく、国道から矢作川越しに覗く月瀬の大杉に立ち寄ることにした。
樹齢1800年とも言われる月瀬の大杉は、幹回り約14m、樹高約40mを超える巨木で、1944年に国の天然記念物に指定されている。 この季節、見事な淡紅色の枝垂れ桜が月瀬の大杉に彩を添えていた。
旧月瀬神社の御神木を守り続けてきた地元では、大杉様の幹枝が折れると大事変や悪疫が流行するという逸話が語り継がれている。 その真偽は定かでは無いが、実際に見上げると痛々しい傷跡が無数にあり、世の中同様にこの巨木が大きな災いに晒されてきたことが分かる。 近づいてみるほどにその迫力に圧倒され、ジタバタしても仕様がない己の小ささを再認識させてくれる存在なのである。
月瀬の大杉、折れ抉れた幹枝に1,800年の樹齢を実感する
月瀬の大杉を見上げ一息つくと、昼飯前の上手く行かぬライディングも昼飯の鍋焼きうどんと共にこなれたような気がしてきた。 オートレーサー乗りの課題は右コーナー、アクセルとリアブレーキ操作への慣れとリーンウイズ~リーンアウト姿勢の使い分けであった。
しばしの休憩の後、月瀬の大杉を後にして国道153に走り出すと、国道257を経由して矢作ダム湖岸道路の入り口にたどり着いた。 桜咲くこの季節、その花が目当てなら岐阜県側北岸をトレースする県道20がお勧めだが、オートレーサー乗りの課題を確認したい晴れふら親父は、愛知県側南岸の県道356へと舵を切る。 湖岸の桜並木は北岸側に劣るかもしれぬが、その分花見客の車も少なくライディングに集中できるであろう。
矢作ダム湖岸の桜は満開、花見客を避け南岸の県道356へ
満開の桜の出迎えを受けながら県道356に駆け出すと、思惑通り花見客の車に出会うことも無くライディングに集中する...とは言っても、昼飯前に気付いたオートレーサー乗りの課題が直ぐに解消するわけも無く、メリハリを付けきれない右コーナーを坦々とこなしてゆく。
時折視界が開ける場所では、奥矢作湖越しの対岸に続く満開の桜並木を望むことが出来る。 いつになっても気忙しい我が身、未だに”終日のたり”とはいかないが、同期して爆発する空冷二気筒360°クランクエンジンを止め、穏やかな春の日の”一時のたり”を満喫する。
そして、春の陽気に鷹化して鳩になったのか、年甲斐も無くライディングが云々と愛車をこねくり回す我が身を振り返ってみる親父であ。 しかしまあ性根は変わらず、老いても木に登らねば枯れ木に花も咲かせられまいと、W800 streetのエンジンに火を入れ慌ただしく駆け出す親父である。
旭大橋から矢作ダム湖北岸に繋がる満開の桜並木を望む
県道356を小渡まで走りきると、県道366を経由して加茂広域農道へと駆け上がった。 北側起点となる万町橋から加茂広域農道に駆け上がると、国道153、国道420を挟んだ三区間を一気に南下して国道301方面へ抜けることが出来る。
加茂広域農道は、これまで紹介してきた、国道420の標準的な峠、県道10(設楽~津具)の緩やかな九十九折れ、県道10(津具~根羽)と県道356(矢作ダム南岸)のタイトな切り返し、の各要素にアップ/ダウンの要素が加わった総合力が試されるルートである。
結果的には「下り」が難しい...理屈的には、非力なW800 streetで旋回速度を稼ぐには下りの方が有利なのだろうが、乗り手の技量が追い付いて行かないのである。
具体的には、強力なブレーキとハイグリップタイヤ、高剛性のサスとフレームを備えたSSなら、進入途中のブレーキングでオーバースピードを立て直すことも可能だった。 しかし今の相棒でそれをやると、タイヤ、サスペンション、フレームの、どこから破綻するか見当もつかぬヨレ具合を呈してしまうのだ。
W800シリーズは昭和のオートバイをオマージュしたモデルゆえ、乗り手の技量に負うところが大きくなるのは当然なのだが、実際に乗ってそれを体感して見ないとわからないものである。 これまで乗り手の雑な操作を、最新のオートバイの性能が補ってくれていたことを再認識させられる結果となった。
いわゆる高性能なSSに乗せられていた訳なのだが、W800 streetのテイストなら無理をしてその領域に踏み込まずとも、十分に人馬の一体感や操作する満足感を味わうことが出来そうな気がする。 これからの課題と言えば、予想通りに低い限界を再認識し十分な速度マージンを取る、いわゆる大人の分別であろうか(笑)。
総合力が試される加茂広域農道、やはり下りコーナーが難しい
加茂広域農道の三区間を南端まで走り終えると、国道301を経由して、東海環状道豊田松平ICから名古屋方面へと帰路に着いた。 そして、OHLINSのリアサスとBEET JAPANのバックステップを奥三河のワインディングに持ち込み、晴れふら親父が妄想するオートレーサー乗りを試行錯誤するツーリングを無事走り終えることとなった。
結果的に、OHLINSのリアサスとBEET JAPANのバックステップは峠道でも有効で、W800 streetとの一体感を実感する結果となった。 また、晴れふら親父が妄想するオートレーサー乗りのに近づくには、右コーナーでのアクセル操作やリアブレーキ操作への慣れと、リーンウイズ~リーンアウト姿勢のシームレスな繋ぎが課題であることも分かった。
そして何より、進入速度の立て直しに難儀した下り複合コーナーでネオ・クラシックモデルの性能限界を体感し、それを超えずにライディングを楽しむマインドセットの重要性を再認識した次第である。 気が向いたら、しまい込んだレーシング・スーツを引っ張り出して、ミニサーキットに出かけてみるのも良さげである。 ただただ乗せられていた高性能SSとはまたっ違った、身の丈に応じたサーキット遊びができるかもしれない。
最後になったが、今回紹介したツーリングルート同様に、奥三河にはライディングの趣向に応じて組み合わせることが出来るルート・バリエーションが豊富である。 晴れふら親父同様、己のライディングの向かう先にお悩みの方は、テーマにあった奥三河ツーリングに出かけられてはいかがだろうか。 集落や耕作地の移動では速度を抑え、滞ること無く通り過ぎるだけのツーリングを楽しみたいものである。
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