2023/02/14 新しい旅の相棒、W800 streetと東海道たどり豊川稲荷詣で(かねぶん、岡崎城址、カクキュウ、藤川宿、門前そば山彦)


 昨年末の南紀ツーリング以来、これからのバイクライフについて色々と思うところがあり、ライディングから旅志向へと回帰することが多くなった。 そして、ふらっと立ち寄ったバイクショップで、旅バイクとして昭和親父の琴線に触れた、W800 street(2023年型)を衝動買いすることとなった。

 九州筑紫平野の田舎町で育った晴れふら親父、故郷の野山で冒険に興じる中学生が自転車の遠乗りで旅に目覚めだした頃、友人の兄が乗っていたW1SAを目の当たりにし、巨大な鉄の塊の存在感に圧倒された。 センタースタンドも起こせず、己が操る姿など想像も出来ぬ大型バイクだったが、跨ってみると地の果てまでも旅していけるような気がした。

 毎度の衝動買いの言い訳をするわけでは無いが(笑)、そんな半世紀近く前の思い出のパズルに、ピタリとはまったのがW800 streetのピースであった。

 KAWASAKIのマーケティングの術中にはまってしまった気もするが(笑)、ビンテージバイクの維持管理など叶わぬリーマン親父にとって、懐古趣味の年寄りを見捨てぬブランディング戦略はありがたい。 2016年に一旦製造終了したW800シリーズ、商売の上手さばかりでなく、排ガス規制や安全基準に必要なデバイスをタンク裏やフレームの隙間に納め、シンプルな空冷バーチカルツインエンジンのテイストを復活できるのは、カワサキの先進技術によるところが大きい。

 昨年末の契約後、公私ともに慌ただしい年越しで一月末の納車となり、ドラレコの取り付けや乗り手に合わせた調整を終えて、二月中旬に差し掛かっての走り出しとなった。 大上段に旅バイクを語りながら、午前中の通院検査を終えて空いた午後に、近場の慣らし運転に走り出すのが現実である。

 さてさて新しい旅の相棒との初ツーリングは、名古屋から国道1号線を東にたどって豊川稲荷へ、往復100kmを越える手程の半日旅ではあるが、新しい旅の相棒との道中をお伝えしてみたい。 正直なところ、昭和親父のノスタルジーが先行して購入した感のあるW800 streetである。 しかし実際に走り出してみると、車体のディメンションやエンジン特性等々、旅バイクとして期待以上の乗り味を体感することとなった。


KAWASAKI W800 street(2023年型)半世紀前の記憶が蘇る



ルート概要


名古屋方面-国1→岡崎城跡-国1→藤川宿-国1→藤川宿-国1→追分-県5→中央通三丁目-県31→豊川稲荷(豊川稲荷大駐車場、門前そば山彦)→県31→中央通三丁目-県5→八幡町横道西-県31→豊川為当インター(国23豊橋バイパス)-県31→為当町新道-県373-為当町-県373→東三河ふるさと公園-県368(国坂峠)→豊岡平田門-国247→神ノ郷町上野-市道→蒲郡西インター-国23蒲郡バイパス→名古屋方面


ツーリングレポート


 午前中の通院検査で休みをとった午後、忙しなく乗り手とW800  streetの身支度を整えると、大寒波の名残か一桁の気温を越えぬ寒空に走り出す。 納車後初の走り出し、まずは空っぽのガソリンタンクをレギュラーガソリンで満たしてやる。 二輪、四輪を問わず、長年に渡ってハイオクガソリンの割高感を感じてきた親父には、それだけで新しい旅の相棒がけなげに見えてくる(笑)。

 ところで、カワサキが推奨する慣らし運転の条件は(排気量400cc以上)、走行距離0~350kmは4000rpm以下、350~600kmは6000rpm以下、そして600~1000kmは 控えめな運転とのことである。 レッドゾーン16,000rpmまで回るZX-6Rの慣らしには苦労したが、7,000rpmまでしか回らぬW800の場合、普通に乗れば慣らし条件のエンジン回転数に抑えるのは難しくなさそうだ。

 5速トップギアに入れてしまえば、60km/hで2,000pm、70km/hで2,500rpm、80km/hで3,000rpmってところだろうか。 4000rpmを越えたところでの乗り味確認は、350kmの慣らしを終えた時の楽しみにとっておくことにしよう。


新しい旅の相棒W800 streetとの初ツーリング、レギュラーガソリン給油は久しぶり


 さてさて、エンジン回転数を抑えた慣らし運転ということもあるが、まずは交通量や信号停止も多い一般国道をつなぎながら、衝動買いした旅バイクの乗り味を試してみることにした。 比較するには無理があるかもしれぬが、前傾がきつく回して何ぼのミドルサイズSS、乗り方が身体に染みついたZX-6Rとの比較になってしまうのは致し方ない。

 旧東海道から続く旅のステージ国道1号線に走り出して、W800 streetが有する旅バイクの要件として挙げたくなったのは、まず第一にアップライトなライディングポジションである。  

 長旅で疲れる疲れないの以前に 交機の白バイ乗りにも勝る直立姿勢は、首の可動域が少なくなった還暦親父でも楽に周囲の安全確認することができることに気付く。 これまで、車の流れを置き去りに前へ前へと走り続けていたのは、乗り手の気性やバイク性能にも増して、空間認識力が衰えた親父が安全に走るための知恵だったのかもしれぬ(笑)。 周りのペースに合わせて楽に走れるライディングポジションは、旅バイクの一番の要件に挙げたい所である。

 そして第二に挙げたいのは低回転で粘り鼓動感のあるエンジン特性である。 排気量773cm³、空冷4ストローク並列2気筒/SOHC、360°クランクのロングストロークエンジンは、最高出力と引き替えに手に入れた低速トルクでシフトチェンジの頻度を大幅に低減してくれる。 W800が2016年に製造中止となり、2019年に復活して採用されたアシストスリッパ―クラッチによる、軽いクラッチレバー操作の効果も忘れることはできない。

 また、交互に爆発する並列エンジンをイメージしながら走ると、加減速トルクと同期した、パルス感のある排気音だけでなく振動さえも楽しむことが出来る。 気持ちよく走っていると、法定速度だった...ってのは初めての経験である(笑)。 飛ばさずとも楽しめる鼓動感のあるエンジン特性も、旅バイクの二番目の要因に加えておきたい。

 正直なところ、還暦親父の懐古趣味が先行して衝動買いした相棒ゆえに、その実際の乗り味に多少の不安はあった。 しかし実際に走り出すと、旅バイクとして期待通りの乗り味にその不安も払しょくされ、まだ乗り手のガソリンを給油していなかったことに気付く。 丁度昼時、境川を渡り尾張から三河への国境を越えて走り続け、お気に入りのうなぎ料理の老舗「かねぶん新安城店」に立ち寄ることにした。

 国道1号線今本町西交差点を豊田方面に左折して直ぐ、創業100年の看板を掲げたかねぶんの駐車場に相棒を待たせ店内に入いる。 人気店の昼時ゆえ席待ちも覚悟したが、タイミングよく入店した自分を最後に丁度満席となった。


創業100年を越える老舗「かねぶん新安城店」でお気に入りのうなぎの蒲焼を頬張る


 席に案内され注文したのは、うなぎ丼(竹) 2,090円也と肝吸い 220円也。 還暦親父がライディング前に頬張るには十分なボリュームだが、お腹が空いてるならうなぎ丼(松) 2,980円也が、きも吸い付きでお得かもしれない。 そして、供された温かいお茶をすすりながら焼き上がりを待つと、ほどなく注文したうなぎ丼が運ばれてきた。

 さて、まずは肝吸い、上品な出汁を味わって口を整える。 そして蒲焼をひとかじり、外は香ばしくカリッ、内はふっくらした焼きがお気に入りの由縁である。 つやつやのご飯に甘すぎぬタレのしみ具合も絶妙である。 そして、丼を食べ進めると現れるお楽しみ、飯に埋め込まれ蒸し上がった蒲焼はまた違った食感を味わえる。

 

お気に入りのうなぎ丼(松)と肝吸い、外はカリッ内はふっくら、絶妙な焼き


 お気に入りのうなぎ丼を一気に掻き込むと、会計を済ませて駐車場に戻り、W800のミラーやレバー、そしてドラレコカメラの取り付けを調整することにした。

 メグロK2、W1、そしてW3の雰囲気を継承する幅広なアップハンドル。 実際に走り出してみると見た目ほどの違和感はなく、むしろクルージングでの楽な姿勢や取り回しやすさを感じる次第である。 ただし、幅広アップハンドルから張り出したミラーへの視点移動が煩わしく、ショートミラーを購入してハンドル下にマウントしていた。

 まずは、そのミラー位置の微調整、さらに指二本がけに合わせたレバーの横位置、手首が曲がらぬようレバーの角度調整。 そして、デイトナのドラレコM77Dのフロントカメラ(ミラー共締め)、リヤカメラ(ナンバープレート共締め)の向き調整と増し締め。 乗り手はそれも味だと開き直る360°クランクエンジンの振動も、取り付けられた部品にとってはストレスでしかない(笑)。

 操作に合わせた再調整と増し締めを終えて走り出すと、一気にオートバイとの一体感が増す。 最近は車載工具が省略されることも多いが、調整に必要な自前工具をガレージから持ち出して、走りながら納得行くまで調整することをお薦めする。   

 さて、かねぶんから国道1号に再び走り出して矢作川を渡ると、徳川家康が生まれた岡崎城址にさしかかった。 また岡崎城は、家康が今川方として初陣参戦した桶狭間の戦いで、今川義元が織田信長に討ち取られた後、戦国大名として独立し三河平定に乗り出した城でもある。

 城は遠くから眺めた方が風情がある、ってのは高所恐怖症を患い天守閣から下界を見下ろせぬ親父の言い訳かもしれぬが(笑)...実際のところ、鉄筋コンクリートで再建された天守閣を間近に見て、興ざめすることも少なくない。 今回も、伊賀川の外堀越しに岡崎城天守閣を見上げ、若い家康が戦国大名として名乗りを挙げた時代の妄想に浸る。

岡崎城天守閣を伊賀川の堀越しに見上げ、適度な距離感で戦国時代を妄想する


 ところで岡崎城跡に立ち寄った理由は、旅バイクの第三の要件に挙げておきたい、取り回しやすさを確認したかったからでもある。 岡崎城址から八丁(約870m)の距離にある八丁味噌蔵までの入り組んだ路地での取り回しは、今後旅先で遭遇するであろう小路にあと一歩踏み込んで行けるかどうかの試金石になるだろう。

 そして、岡崎城跡から入り組んだ路地にルートを探し、岡崎城から八丁(約870m)の距離にある八丁味噌の老舗「カクキュー」にたどり着いた。 隣では、もう一軒の八丁味噌の元祖「まるや八丁味噌」も味噌蔵を構えている。

 そして結果的にW800 streetと一緒なら、初めて訪れたタイトな路地にも躊躇せず踏み込んで行けそうである。 決して軽くない車両重量(221㎏)ながら、十分なステアリングアングル(±37°)と操作性の良いアップハンドル、そして足つき性の良いシート高(770㎜)のおかげで、乗っても降りても取り回しの良さを体感できるのだ。

 還暦親父の子供時代の記憶では、オリジナルの650W1がリリースされた1966年頃は、舗装されていない砂利道も多かった。 そこでの操作性を考えると、W800に踏襲された幅広のアップハンドルは必須だったのかもしれぬ。 実際のところ、スタンディング姿勢を取ってみてもしっくりきて、ダートバイクで奥三河や奥浜名の林道を駆け回っていた頃を思い出した。 W800 streetの取り回しの良さは、住宅街にある観光地の路地巡りだけでなく、山中の宿やキャンプ場等にアクセスする未舗装路でも活かせそうな気がする。

 ところで、今回立ち寄った江戸時代に創業したカクキュウ、1927年に建てられ現在も稼働する個性的な本社事務所は、1996年に愛知県初となる国の登録有形文化財に指定されている。 大豆と塩のみの材料を木桶で二年以上熟成させる昔ながらの製法にこだわる八丁味噌、本社事務所に併設された「八丁味噌の郷」では、巨大な木桶に川石が山のように積まれた味噌蔵の見学できるそうだ。 八丁味噌を使ったなごや飯を供する食堂も営業しているので、時間を見つけて再訪し、岡崎城跡と合わせてゆっくり見学してみたいところである。

八丁味噌の老舗カクキュー、現役の本社事務所は国登録有形文化財


 観光バスから降りてきた団体客に囲まれ、手早く身支度を整えてカクキューを後にすると、再び狭い路地を抜けて国道1号線に復帰し、豊川稲荷をめざし東へ進路をとった。

 しばらくは岡崎市街を貫ける区間の混雑が続くが、東名高速岡崎インターを過ぎる頃には、徐々に流れもよくなってきた...っとここで、「旧東海道藤川宿」の案内看板が目に留まり、衝動的に旧東海道へと分岐した。 旧東海道に駆け出すと、古の街道を思わせる約100本の黒松並木が約1kmにわたって続いている。

 そんな旧宿場の景色にも、違和感なく溶け込むw800を眺め悦に入る昭和親父ではあるが、この調子で寄り道ばかりしていては日が暮れそうである(笑)。 幸い雨水を前に日も長くなってきた、気軽に寄り道したくなるのも、W800 が旅バイクである証としておこう。


旧東海道藤川宿、1kmにわたり100本の黒松並木が続く


 藤川宿から国道1に復帰してペース良く走り続けると、東名蒲郡インターを過ぎて程なく、追分交差点から豊川稲荷へ向かう県道5へと分岐した。 名鉄名古屋本線から分岐した豊川線沿いを走る県道5、豊川市中心の街を貫ける生活道路は混雑しているが、右折車両で滞る車線を避けながら走り続け、豊川稲荷の案内看板がかかる中央通三丁目交差点に差し掛かった。 案内に従い豊川稲荷方面に左折すると、道なりに走り豊川稲荷大駐車場にたどり着いた。

 駐車場理者のおじさんに、寒いところ参拝ありがとうと労われ、オートバイの駐車料金300円也を支払い豊川稲荷総門に向けて歩き出した。 たかだか500m、5分ほどの距離ではあるが、総門に向けて己の足で歩いていると、あーだ、こーだ、の雑念が消えていくような気がする。 在宅勤務続きで体力の衰えを感じる今日この頃、それゆえ参道をめざして移動するだけの手間と時間も、大事な参拝プロセスと感じられるようになったのかもしれぬ。

 さて、日本三大稲荷に数えられ商売繁盛のご利益で知られる豊川稲荷、正式名称は曹洞宗「妙厳寺」、つまり稲荷神社では無くお寺なのである。 妙厳寺の本尊は千手観音であるが、鎮守として祀られた稲穂を担ぎ狐に跨る秘仏「吒枳尼真天(だきにしんてん)」が、狐を使いとする稲荷神と重なり「豊川稲荷」と呼ばれ信仰を集めるようになった。 境内には鳥居もあり不思議な感じがするが、そんな景色にも、お宮参りにウエディング、そして寺の墓にはいる日本人のおおらかさが、世界平和のヒントになりそうに思えるのである。

 そしていよいよ、室町時代(1441年)に建立された豊川稲荷の総門をくぐると、参道の正面に今川義元が1536年に寄進した山門が建っている。 この山門が、豊川稲荷境内に現存する最古の建物とのことである。 徳川家康を筆頭に勝ち組の信仰が紹介されることが多いが、豊川稲荷が時代々々の征服者の保護を受けていたことが伺える。 屈折したリーマン親父は、そのしたたかさにも商売繁盛のご利益の説得力を感じるのである。

   

今川義元が1536年に寄進した山門、境内に現存する最古の建物


 参道は山門を前に直角に折れ曲がり、二つの大鳥居をくぐって鎮守「吒枳尼真天」を祀る本殿へと続いている。 明治政府の神仏分離令により、境内の鳥居は撤去され豊川稲荷の通称も禁じられたが、後にいずれも復活し現在に至る。

 世界に目を向けると、政治と宗教が絡んで紛争の種となる様は目に余り、人々の助けになるべき神様仏様が人々を苦しめるのは本末転倒だと感じる。 信仰に対する日本人のおおらかさが世界平和のヒントになるかもしれぬと前述したが、国内では霊感商法や寄付強要被害を耳にすることも多く、寛容さだけでは生きて行けぬのも現実なのである。


神仏分離令で撤去された参道の鳥居、保管されていた鳥居が戦後に蘇る


 二つの大鳥居をくぐり参道を進むと、いよいよ妙厳寺の鎮守「豊川吒枳尼真天」、通称「豊川稲荷」を祀る本殿に参拝する。 鳥居をくぐっての参拝に作法を間違えそうだが、豊川稲荷は神社では無くお寺だと再確認し、柏手を打つことなく静かに手を合わせる。

妙厳寺の鎮守「吒枳尼真天」を祀る本殿、お寺ゆえに柏手無しに手を合わせる


 本殿への参拝を済ませると、その後旧本殿が移設された奥の院に参拝し、その傍らにある霊狐塚に立ち寄った。 霊狐塚には、参拝者が祈願成就のお礼に奉納した千体もの狐が祀られている。 石で掘られた一体一体の狐の表情は違うとのことだが、そもそも狐に表情があるのかどうかも分からぬ不信心親父ではある(笑)。 しかし、数え切れぬ狐が並ぶさまを目の当たりにすると、豊川稲荷に感謝する沢山の人達がいる事だけは伝わってくる。


祈願成就のお礼に奉納された千体の狐、豊川稲荷のご利益の証かも


 豊川稲荷の参拝を済ませると、家族への土産に名物の稲荷寿司を探すことにした。 門前町で名物の稲荷寿司を販売する店が沢山あるが、総門正面で「門前そば山彦」のド派手な看板が目に留まり、この店が元祖を謳う「いなほ稲荷寿し」を仕入れることにした。 五目稲荷とわさび稲荷のミックス800円也を二箱、家族に参拝の様など語りながら美味しくいただいた。

 余談だが、店のお姉さんに観光アプリのインストールをご教授いただき、300円の割引クーポンの恩恵にあずかる。 値上げラッシュの昨今、万人に安く商品を提供する時代は過ぎ去り、割引クーポンで客を囲いながら高く売る商売が定番になってきた。 スマホアプリを使えなければ高くかわされる...懐古趣味のバイクで旅に興じる昭和親父には、何とも生きにくい時代になったものである。


門前そば「 山彦」、商売繁盛祈願にはこれくらい派手な店が良い(笑)


元祖「いなほ稲荷寿し」、五目稲荷とわさび稲荷のミックス800円也


 豊川稲荷の参拝を終え駐車場に戻ると、W800 streetとの初めての旅を折り返すことにした。 往路では国道1で岡崎市街を貫けるルートを走ったが、復路では、蒲郡バイパス、岡崎バイパス、知立バイパスと名を変えて続く国道23バイパスを繋ぐことにした。

 さっそく県道5の往路へと折り返すと、八幡町西交差点を左折した県道31を南下して国道1を越え、県道373、368で東三河ふるさと公園の南側をぬけ国坂峠を越えることにした。 国坂峠を越えた国道247で蒲郡市街を抜けて、国道23蒲郡インターへと駆け上がる算段である。 信号待ちの無い国道23バイパスで一気に帰還するルードだが、国坂峠越えの峠道でW800 streetの乗り味を試したい思惑もある。

 そして、旅バイクの第四の要件として最後に挙げたいのは、峠道で楽しめる事である。 速い遅いは乗り手の技量によるところが大きいが、ワインディングを楽しむことが出来なければ、旅バイクに関わらずオートバイに乗る大切な理由の一つを失ってしまう。 さらに、旅先で初めて遭遇する様々な峠道、そこでライディングを楽しめるコントロール性が得られなければ、バイク旅を楽しむとは言えないのである。

 純正のダンロップK300GPは、フロント100/90-18、リヤ130/80-18サイズのバイアスタイヤ、スポークホイールと合わせたチューブタイヤ仕様である。 国坂峠のような低速ワインディングを走ってみると、細身のバイアスタイヤとスポークホイールは、荒れた路面でも期待通りの安定した路面追従性と軽快でリニアなリーン性を発揮してくれる。

 また、W800の19インチフロントタイヤが18インチ化された効果もあるのか、W800 street の倒しこみは比較的軽快である。 しかし、乗り慣れたZX-6Rのような最新SSに比べると、キャスター角が大きく直進安定性が強いため、倒しこみのきっかけ作りは欠かせない。

 個人的にそのきっかけ作りは一択、幅広のハンドルの逆ステアで倒しこむのが実に気持ちよい。 さらに、リーンアウト気味に腰下で曲げてやれば、何かあってもどうにかできる気になってくる。 そして、低速型エンジンだから許される高めのギアで、早め早めにアクセルと開けてゆくと、360°クランクの心地よい排気音とともに、良い塩梅のトラクションで立ち上がってくれるのだ。

 カワサキが懐古趣味のブランディングのために、昭和バイクの外見だけ復刻したようにも評されることが多い。 しかし実際に乗ってみると、道路環境も十分に整っていなかった時代の峠を、心地よく駆け抜けるための経験知が詰め込まれていることに気付かされる。 現代においても、旅先で出会う色々な峠を心地よく駆け抜けるための、大切な要件ではなかろうか。


豊川稲荷詣でを終え、国坂峠を越えて国道23バイパスの帰路へ着く


  国坂峠から国道247まで駆け降りると、蒲郡市街を抜けた蒲郡西インターから国道23蒲郡バイパスに乗って、名古屋方面への帰路に着くこととなった。

 年明けに納車された新しい相棒との初ツーリングを終えてみると、個性的なW800 streetの乗り味とともに、旅バイクに必要な要件を再認識したしだいである。 まず第一に、周囲の状況を確認し易いアップライトな姿勢、第二に、クラッチ操作を抑える低回転型エンジン、第三に、旅先の路地に踏み込める取り回しの良さ、そして第四に、初めての峠を楽しめる安定した乗り味...言葉にすれば、「ああ、そうか」で終わりそうだが、実際にそんな特性を備えたバイクに乗ってみなければ分からなかったことである。

 公私ともに慌ただしいリーマン親父ではあるが、少しづつでも暇を見つけて早めに慣らし運転を切り上げたいところである。 タイヤのグリップ性能や剛性感、ブレーキ性能、フレーム剛性等々、速度域を上げて試したいことは沢山あるが、4000rpm、さらに6000rpmまでの慣らしを終えるとともに、段階的に試して行きたい。

 そもそも、速く走るためのオートバイでは無いのだが、安全にバイク旅を楽しみながら乗り続けるためにも、相棒の特性や限界は把握しておきたいところである。 今回のW800 streetとの走り初めで、これまで乗り継いできた馬鹿っ速いバイクとは、また違ったオートバイの楽しみ方を垣間見ることが出来た。 身の丈に応じた速度域でバイクの特性を把握しながら、乗り手の技量との折り合いをつけて行きたいものである。



あとがき


 これまで乗り継いできたオートバイを振り返ると、オフロードからオンロードへライディングのフィールドは変わったが、高出力エンジンと高剛性フレームと足回り、軽量で速いレーサー志向のバイクを乗り継いできた気がする。 そう考えると、己の技量でそれなりに回してたのしめるミドルサイズのSS、ZX-6Rは一つのゴールだったのかもしれない。

 それゆえW800 Streetの納車日当日となってもZX-6Rの魅力は色あせることなく、後ろから眺めていると飛び乗って走り出したい衝動に駆られる。 一旦乗ってしまえば、気持ちが先行する還暦親父は大人げなくアクセルを捻り、遅れてやってくる節々の痛みに衰えた我が身を思い知る恒例のパターンとなる(笑)。

 そんなZX-6Rを手元に残すことも考えたが...仕事やプライベートにかかわらずマルチタスクが苦手な晴れふら親父、一つのことにしか没頭できない性分は変わりようがない。 また実際のところ、月に一度の頻度で走り出すのが精一杯の現状、乗って何ぼのバイク道楽にこだわる親父にとってそれは、乗れないフラストレーションと維持管理の煩わしさだけが残ることになる。

 そんな思いを経て唯一の相棒となったW800 sreetだが、今後旅バイクとして乗り味を楽しむだけでなく、サーキットに持ち込んで無いものねだりを始めるかもしれず、またダートバイクに回帰してスクランブラー仕様に衣替えするかもしれない。 結果時を置かず、最新のスーパースポーツやエンデューロレーサを物色しているかもしれない。 いまはただ、己がそんな年甲斐もないバイク馬鹿ぶりを続けていられること、電動バイクしか買えぬ時代になっていないことを願うばかりである。



3年落ち100万円の下取りは高いのか安いのか...尽きぬ思い入れはプライスレス(笑)



ツーリング情報


かねぶん 新安城店  愛知県安城市今本町4-10-18 (電話)0566-98-4649


岡崎城  愛知県岡崎市康生町561-1 (電話)0564-22-212


カクキュー  愛知県岡崎市八丁町69番地 (電話)0564-21-1355


豊川稲荷  愛知県豊川市豊川町1番地 (電話)0533-85-2030


門前そば山彦  愛知県豊川市門前町一番地 (電話)0533-85-6729




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